PCユーザー10億人時代の課題とチャンス - (page 2)

Michael Kanellos(CNET News.com)2004年09月13日 10時00分

10億人到達は意外に早い

 PCユーザーの数は向こう数年以内に間違いなく10億人に達するだろう。IDCの推計によると、2003年の世界のPCユーザー数は6億7000万人だった。さらに、今年は1億5200万台強のPCが出荷される予定で、その数は今後さらに増加すると見られている。総出荷台数のおよそ半数が新規ユーザーの手に渡ることから、IDCは世界のPCユーザー人口が向こう6年間で79%増加し、2009年末までに12億人に達すると見ている。

 一方、調査会社Gartnerでは、世界のPCユーザー総数が2003年末の時点で6億3180万人で、現在は6億6100万人としており、その数は2008年末に9億5300万人に達し、さらに2009年には10億人を超えると見られる。Gartnerのアナリスト、George Schifflerによると、これらの数字は確かに書類上は巨大だが、年間成長率はおよそ8%程度だという。

 しかし、ユーザー人口が増加するなかで、価格がますます大きな問題になる。現在、Windows搭載のローエンドPCの場合、モニターを除く本体のみの価格は350ドル前後だ。ベトナムのカントー大学の統計によると、同国の1人当たりの平均年間所得は340ドルで、PCのこの価格はそれをわずかに上回っている。しかし全ての新規ユーザーが自分自身のシステムを所有するわけではない。その多くは、まず韓国のPC房(バーン)のような場所で使い方を学ぶ。

 過去数年間、アジアにおけるPCの利用実態を調査してきたIntelの人類学者、Genevieve Bellは次のように記している。「多くの新興市場、特にアジアやアフリカでは、サイバーカフェの利用度が極めて高い。そのサイバーカフェも、われわれが想像するような立派なものではない。それは、交通量の多い通りから少し入った路地の歩道上に、使い古しの中古PCが置いてあるだけの場所を指す場合もある。インドをはじめ多くの新興国で出回っているPCの少なくとも7割は、特定のユーザー用に組み立てられた『オーダーメイドのPC』だ」(Bell)

 Microsoftは、製品の価格格差について、すでにいくつかの厄介な問題に直面している。HPは中国で、デスクトップPC「Pavilion」のWindows版とLinux版を販売しているが、同社が店頭で抜き打ち検査を実施したところ、モニター付きの基本的なLinux版Pavilionの価格は5499元(700ドル)なのに対し、Windows XP版は6000元で、Linux版に比べ60ドルほど高かった。

 Dellは自社の企業向けラップトップ/デスクトップにLinux OSの中国版「Red Flag Linux」を搭載しており、後からLinuxを搭載できるDOS版PCも販売している。中国最大手PCメーカーのLenovoも中国政府にのみLinux PCを販売している。この製品の価格は割安だが、同社の広報担当はどの程度割安かについては明らかにしなかった。

 新興国の現地メーカーの存在も価格格差をさらに拡大させている要因の1つだ。マレーシアの首都クアラルンプールでは、PC Zoneという名の現地ディーラーが、15インチモニター付きのIntel Celeron 2.0GHz搭載PCをおよそ272ドルで販売している。Windows XP搭載版は83ドル増しで、31%も高くなる。無論、著作権侵害も依然として大きな問題だ。Microsoftはこれに対抗するため、タイやマレーシア向けに廉価版Windows XPを開発した。

 MicrosoftのWilderotterは、世界の一部地域でLinux人気が上昇している点は認めたものの、オープンソースソフトには目に見えないコストがかかると主張する。さらにMicrosoftは、同社のソフト製品を新興国に普及させるためのプログラムを開発している。Wilderotterによると、このプログラムは67カ国で実施されており、それらの国々の学校では、正規のWindowsソフトを無料で入手して、寄贈されたPCに搭載でき、さらにOfficeもわずか2ドル50セントで購入できるという。さらに同社は、数百万ドル規模の教育的助成金を拠出している。

 一方、世界的な大手ハードウェアメーカーは、割安な製品を販売する現地メーカーとの競争を余儀なくされている。メキシコや中国では、大手PCメーカーがシェアを拡大しつつある。Gartnerのアナリスト、Charles Smuldersは、現在最も急速に成長しているラテンアメリカ市場で、DellがまもなくナンバーワンPCメーカーとなる可能性が高いと見ている。しかし東欧やロシアなどでは、OptimusやKraftwayなどの地元メーカーが依然として高いシェアを維持している。

 同様に、コンポーネントメーカーも、元々は自分たちが製造したパーツが大量にリサイクルされて出回っているため、それらの中古パーツとの競争を余儀なくされている。中国西部の一部の学校では、木片にマザーボードやその他のパーツを取り付けて学校用コンピュータを作っている。

 「その気になれば100ドルでPCを手に入れることも可能だ」(Kay)

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