ビジネスソフトウェア業界--生き残りをかけた戦いに - (page 3)

Martin LaMonica(CNET News.com)2004年08月30日 10時00分

 業界関係者のなかには、とりわけ中規模企業が、大手各社の事業拡大努力の煽りを受けることになりそうだ、と指摘する者もいる。たとえばSAPは、同社製品と他社のシステムとを連携させるためのインフラソフトウェア「NetWeaver」の開発に多額の投資を行っている。SAPは同ソフトウェアを手にすることで、BEA Systemsなどのインフラソフト・プロバイダと直接的な競合関係に入る。

 「中規模の企業が注意すべき点は、自社技術が最高であることよりも、品揃えや流通経路の奥行きや幅の方が重要ということだ」と、Precursor Groupのアナリスト、Yoav Schreiberは指摘する。

 BEAはこれまで買収にあまり積極的ではなかったが、他の中規模企業は、十分な市場シェアを獲得して大手企業に買収されるのを回避するために、小規模な企業への投資を行ってきた。たとえばNovellは昨年、SuSE Linuxや、オープンソースデスクトップソフトウェア企業のXimianを買収した。両社の買収は、オープンソースソフトウェア向けサービス販売への方向転換が目的だった。

 しかし大規模な買収はいくつかの障害に直面する可能性がある。ソフトウェア企業、とりわけ大きな顧客基盤を抱える企業同士の合併を成功させるのは難しいだろう。事実、オープンソースソフトウェア企業のRed HatはSuSe Linuxの買収を検討していたが、結局思い止まった。その理由の1つは、両社の統合に困難が予想されたことだった。

 Red HatのCEO、Matthew SzulikはCNET News.comが最近行なったインタビューの中で、「Red Hatはこれまでに14社を買収してきたが、恥ずかしながら、それら全てが大成功というわけではなかった」と語った。

 また規制当局も大手企業同士の合併を注意深く監視している。例えば、米司法省は、PeopleSoftを買収しようとしたOracleを提訴した。その買収が企業間の競争を阻害するというのが理由だ。両社が合併すれば、市場への過大な影響力を持つことになる。同裁判の判決は今月か来月に発表される予定だ。

顧客にとっての利点は?

 ビジネスソフトウェア・ベンダの整理統合の進展が顧客の利益になるか否かは、一重にその特定の市場の状況にかかっている、とアナリストらは指摘する。

 競争の参加者が非常に少ないこの市場では、多くの企業が合併・統合に不安を覚える。米司法省はOracleに反論する際、PeopleSoftの顧客を証人席に立たせ、Oracleが(PeopleSoft買収後に)値上げを行なったり、PeopleSoft製ソフトウェアのアップデートを打ち切るのでは、などの不安を述べさせた。同様に、J.D. Edwardsの顧客もPeopleSoftが昨年同社を買収したことについて、買収前に比べて、顧客への対応が悪くなったと不満を述べている。

 しかしForrester Researchのアナリスト、Mike Gilpinによると、インフラソフトウェアの分野ではサプライヤの数があまりに少なくなると製品の選択肢がなくなることについて、企業向けアプリケーション分野ほどの強い懸念はないという。

 たとえば、統合ソフトウェアプロバイダ同士の合併・統合数の伸びは、Forresterが3年前に予想したよりも緩やかだった。その理由として、統合ソフトウェア企業は極めて専門性が高く、社員もサービスを提供するに当たり、業界特有の専門知識が相当に要求されることなどが挙げられる。金融サービスを専門とする企業と、医療市場を専門とする企業とが合併したからといって、必ずしも市場シェアが倍増するわけではない。しかし、IT市場が成熟しつつあることを考えると、最大の関心事は今後市場の整理統合がどれほどの早さで進んでいくのかという点だ。

 「サービスが重要な役割を果たしていない市場では、IT技術の商品化がはるかに容易であり、市場力学が巨大企業に有利に働きやすくなり、小規模企業は生き残るのが難しくなる」(Gilpin)

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