顧客企業の購買動向の変化がこの傾向に拍車をかけている。各企業はここ数年間で取引先業者の数を絞り込み、現在はより少数の業者に、より多くの能力を期待する状況にある。大手ベンダが自社製品群を拡大するために技術の買収に躍起になっている背景には、このような事情がある。たとえば、IBM Software Groupは2001年から現在までに17社を買収した。
企業のIT関連支出は全体的には増加しているものの、ソフトウェアの売上が再び急増する可能性は低いと、アナリストらは見ている。彼らの話では、多くの顧客企業は大規模プロジェクトを立ち上げる代わりに、現在所有するシステムやデータを有効活用しようとしているという。
新規顧客の獲得による事業拡大が望み薄なため、多くの企業は顧客ベースを拡大するため合併を余儀なくされるだろう、とCrisciは語る。
ソフトウェア業界の「更年期障害」
以前から予想されていたソフトウェア業界における整理統合の波は、同業界の成熟度を反映している、とアナリストらは指摘する。企業向けソフトウェア市場は、多くの高成長企業が乱立する市場ではなく、製薬業界のような、ごく少数の大手企業がシェアの大半を占めている、より成熟した業界に近づき始めている。
Oracle最高経営責任者(CEO)のLarry Ellisonは、PeopleSoftに対する敵対的買収の試みについて法定で証言した際、市場の「急激な」変化が同社を小規模なライバル企業の買収に駆り立てたと語った。Oracleは、たとえPeopleSoftの買収が失敗に終わっても、今後も数十億ドル規模の買収を行なう意向を明らかにしている。
Ellisonは今年6月に次のように語った。「市場で生き残り、ライバル企業を合併・統合したかった。合併こそ市場で生き残り、成功するための唯一の道と考えた。」
さらにもう1つ、(ソフトウェア市場)の成熟を示す明確な徴候が見られる。かつて成長企業の原型と見られていたMicrosoftが先月、安定企業に倣い、定期配当の支給を決定したのだ。
今やソフトウェアライセンスの売上も減少傾向にある。BMC Software、Siebel Systems、Veritasなど大手ソフトウェア企業数社が、今年の第2四半期は、企業のIT関連支出が減少している影響で利益/売上共に目標を下回ると発表した。
たとえ企業のソフトウェア関連支出が回復したとしても、有力ソフトウェア企業では今後、新規ライセンスの売上よりも保守・管理サービスやコンサルティングサービスの売上への依存度が次第に高まっていく、と一部の市場関係者は予想している。
Wolfによると、ソフトウェア企業の収益源が、ライセンスの売上から、それよりも利幅の薄い保守・管理など各種サービスの売上にシフトすれば、ソフトウェア企業の価値が低下し、その結果、他社との合併がさらに加速するという。専門的サービスを提供するビジネスは、より低価格な海外のサービスとの競争にさらされるため、今後、合併・統合する企業が特に増えるだろう、とWolfは予測する。
「専門サービスは悪くないが、ソフトウェアラのイセンス販売ほど良くはない。収益源をIT関連ビジネスの中で最も魅力に欠ける分野である専門サービスの売上にシフトするにつれ、別の経済ルールが当てはまることになる」(Wolf)
限られた選択肢
セキュリティなど特定のニッチ市場では、起業や企業数の増加が進む可能性がある、とアナリストらは指摘する。また合併/統合プロセスも数年かかる可能性がある。かつて、ウェブやクライアントサーバモデルといったIT技術の画期的発明は、新興企業に多くのビジネスチャンスをもたらした。しかし、今日のソフトウェア業界ではそれほど大規模な変化がないため、ビジネスインテリジェンス、マネジメントソフトウェア、ビジネスプロセス管理など、ソフトウェア業界のいくつかの分野では今後さらに多くのM&Aが起こりそうだ、と多くのアナリストが指摘している。
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