米国時間26日からイスラエルのウェブサイトを狙った「電子の聖戦」が始まるとのニュースが一部のメディアで流されたが、セキュリティ専門家はこの報道を一蹴した。
ロシアの通信社RIA Novostiが伝えたこのニュースは、Eugene Kasperskyという著名なウイルス対策研究者が、8月26日に数多くのウェブサイトでいたずら書きを行うよう、いくつかのサイトが呼びかけを行っているとのコメントを引用したものだった。
しかし、セキュリティ研究者らは、インターネット攻撃の呼びかけは過激派サイトでよく見かけられるものだが、通常は大した問題にならないとしている。
セキュリティベンダーのArbor NetworksでワームやDoS(サービス拒否)攻撃を研究するJose Nazarioは、「『ちょっと集まって、たくさんのサイトにいたずらしよう』という話はよく出てくるが、これまで大したことは起こっていない」と語った。
Nazarioによると、セキュリティ研究者らは、攻撃準備が始まった際に、オンラインでの活動が活発になるのを目にすることが多いという。しかし25日の時点で、そうした準備が始まったことを示す証拠は何もないとNazarioはいう。「正直なところ何も聞いていない。大規模攻撃の前兆は全くない」(Nazario)
Kasperskyが経営する会社自体も、同氏が25日に出した声明を深刻には受け止めていない。ウイルス対策ソフトメーカーのKaspersky Labsは、オンラインでの犯罪やスパムの問題を説明するために開いた前日の記者会見で、Kasperskyが口にした簡単なコメントを、報道陣が大きく取り上げすぎたと語っている。
ウイルス対策研究者によるこの記事への反証や、セキュリティ専門家からの批判は、Kaspersky Labsが運営するVirusList.comサイトに掲載されている。
KasperskyはVirusList.comに掲載した声明の中で、「誰が蜂起を呼びかけているかは分からない」と述べ、こうした呼びかけの信憑性が立証できないことを強調した。
「『電子の聖戦』という言葉が使われたのは今回が初めてではない。前に目にしたものでは、人種差別的な電子メールの送信や、イスラエルのサイトでの落書きやハッキングに重点が置かれていた」(Kaspersky)
2002年11月には、Simon Wiesenthal Centerが、同団体が定期的に監視している過激派サイトがイスラエルのサイトに対する電子聖戦を呼びかけたことを明らかにした。しかし、その後数週間経っても、誰かがこの呼びかけに応えた形跡はほとんど見られなかった。Anti-Defamation Leagueも2000年の12月に同様の攻撃を警告している。
また1年前には、オンライン破壊者がインターネットの地下社会に対し、コンテストの一環としてウェブサイトへのいたずらを呼びかけたこともあったが、このコンテストも失敗に終わった。中国と米国の破壊者たちが始めたインターネット版のなわばり争いにより、2001年には膨大な数のサイトがいたずらの被害に遭い、一部のセキュリティ専門家はこれをサイバー米中戦争と呼ぶようになった。ただし、現在では主要サイトがセキュリティ対策にかなり真剣に取り組むようになったため、このような攻撃は昔ほど成功しないものと見られている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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