米国で科学や工学といった分野の博士号を取得する人の数は近年減少している。また、海外からやってくる博士号取得希望者の数も減っているため、今後も博士号取得者数は減少するものと思われる。また、米国ではもっとリスクの高い研究活動を行えるはずなのに、実際には研究者が保守化していて、そうした試みをやりたがらない、という意見もある。
連邦議会への提言や、国立科学財団(National Science Foundation)の監督などの活動を行う米国科学委員会(National Science Board)は、科学や工学系の知識を持っていることを必須条件とする人材募集が増えているにも関わらず、科学者やエンジニアを目指す米国民の数が「著しく」減少しているとの警告を発している。
しかし、なかには、博士号取得者をこれ以上米国内で増やす必要はないと考える人もいる。インターネットバブルの崩壊や海外アウトソーシングの影響で、失業中の技術者がすでにたくさんいると主張する向きもある。
シンクタンクのRANDが最近発表した調査結果よると、米国のIT業界では、労働者不足といった傾向は見られないという。「科学/技術/工学/数学のスキルを持つ人材が米国内で不足しているといった声をよく聞くが、1990年以降にこのような人材が不足している、あるいは今後不足しそうな気配であるといった証拠は見当たらなかった」と同調査の結果報告書には記されている。
今年の秋時点で、コンピュータ科学関連の学生数が全米でどれくらいになるのか、正確なデータを入手することはできなかった。しかし、Computer Research Associationが、博士号の授与を行う米国内のコンピュータ学科を対象に調査を行ったところ、学部生の人数が昨年は18%減少したことが分かったという。
カーネギーメロン大学のLeeによると、近年見られる学部生の減少傾向は、ここ20年間続いてきたコンピュータ科学を学ぶ学生数減少という、もっと大きなトレンドの一部に過ぎないという。この20年にわたる減少傾向は、1990年代後半のインターネットバブルの影響で、一時的に歯止めがかかっていただけだと同氏は述べる。同氏に言わせると、根本的な問題は、コンピュータ科学が取り組み甲斐のある分野であることを世間にアピールできていない点にあるのだそうだ。
これまでコンピュータ科学の分野では、マシンを通して人類の文化を発展させることの面白さよりもむしろ、実用的な側面を宣伝することに重点が置かれてきた。そのため、壮大な可能性を感じさせる生態学や化学と比べて、魅力のない学問だと世間から思われるようになってしまったとLeeは述べる。
「VoIPやEコマースなどと言われて、コンピュータ科学が、宇宙の歴史を紐解くことより魅力的な学問だと思う人は少ない」(Lee)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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