ソウル発--韓国輸出産業の次の目玉は「悪の帝国」かもしれない。
アジアを代表するオンラインゲーム会社WebzenとGravityは、「ロード・オブ・ザ・リング」風のマルチプレイヤーゲームを世界市場に送りだす準備に追われている。
Gravityによれば、同社の中世風ファンタジーゲーム「Ragnarok」は、米国ですでに8万人のプレイヤーを獲得しているという。このゲームは米国以外にもブラジル、イタリア、トルコやその他13ヶ国で提供されている。
一方、Webzenのオンラインゲーム「Mu」も中国と韓国で推定4000万人の新規・継続会員を持つ人気ゲームで、平均すると常時約50万人がプレイしているという。
「米国企業の買収も検討している」とWebzenの創業者で現CEOのNamju Kimは述べ、数カ月後には米国で新しいゲームの提供を始めると付け加えた。同社は昨年12月に米国Nasdaqに上場し、現在の時価総額は3億ドルを超えている。
オンラインゲーム市場は、規模こそまだ大きいとはいえないが、成長は著しい。Gravityの場合、2003年の売上高は5000万ドル、純利益は1300万ドルだった。今年は売上高7000万ドル、利益3500万ドルを見込んでいる。Webzenも好調で、同社の予測によれば、今期の売上高は4870万ドルから6400万ドルに、営業利益は2780万ドルから3630万ドルに増える見込みだという。
彗星のように登場したオンラインゲームは、低迷する国家経済をITで立て直すという政府の戦略の成功事例といえるだろう。ブロードバンドネットワークを全国に敷設するという前代未聞の大計画のおかげで、オンラインゲームの普及には欠かせない高速インターネット接続が実現した。プレイヤーは常に新しい製品を求めるため、新しいビジネスも次々と生まれた。
複数の資料によると、現在、韓国には2万8000以上のゲームセンターがあるという。住民1700人あたり1つの計算だ。ゲーム専門のケーブルTVチャンネルも3つあり、Milton Bradleyの定番ボードゲーム「Stratego」をほうふつとさせるリアルタイムストラテジーゲーム「StarCraft」(Blizzard Entertainment)などの人気ゲームの試合の模様や攻略ノウハウが紹介されている。
Gravityの快進撃の様子を示す地図と、同社のJeong-ryul Kim会長。 |
韓国のゲームブームは、新しい技術がいかに短期間で一国の文化に広範な影響を与えるかを示している。ゲームセンターの悪いイメージ--たばこの煙がたちこめ、チンピラがたむろしている薄暗い場所--にもかかわらず、オンラインゲームはわずか数年で映画に迫る大衆娯楽に成長した。
「PCバン」として知られる韓国のゲームセンターの多くは、清潔で健全な場所だ。10代のカップルがデートで訪れることも多い。オンラインゲームのマイナスイメージを払拭するために、Webzenは昨年ソウルの中心地でイベントを開催し、プレイヤーやその家族を招待した。来場者数は約3万人に上った。
カナダ人ゲーマーのGuillaume Patryは、1999年に「StarCraft」の試合に出場するためにソウルを訪れ、オンラインゲームにかける韓国人の情熱を目の当たりにした。彼は自分の初戦に1000人のファンが詰めかけたのを見て、あっけにとられる。
「誰もが僕を知っていた。カナダではただのティーンエージャーなのに」とPatryはいう。彼が「StarCraft」の世界チャンピオンになると、人々の興奮の度合いがさらに高まった。その後、彼はチャンピオンの座から脱落するが、ファンは今でも彼の「マネジャー」(彼と一緒にいる外国人の友人)を呼び止め、彼の写真やサインをねだるという。
韓国ではゲームの月額料金は25ドル程度だが、PC バンを利用する者が多いため、一つのアカウントで複数のユーザーがゲームに参加することもある。中国の場合、月額料金は7ドル前後だ。
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