人間向けのRFIDタグを製造する米VeriChipは、医療業界における自社技術の採用に向けて一歩前進した。
米食品医薬品局(FDA)は27日(米国時間)、病院がVeriChip製RFIDシステムを用いて患者を認識したり、診療記録にアクセスできる病院スタッフを制限したりすることを認めるか否かについて、最終調査を開始する決定を下した。フロリダ州パームビーチに本社を構えるVeriChipのマーケティング・セールス担当バイスプレジデントAngela Fulcherが明らかにした。
VeriChipは、上腕三頭筋の脂肪組織に埋め込んで利用する、11ミリのRFIDタグを販売する。チップに同社のスキャナーを近づけると、チップは反応して、無線でID番号をスキャナーに送信する。この番号がデータベースに登録されたID番号と一致すれば、このチップが埋め込まれた人物は、特定の部屋に入室したり、財務関連のトランザクション処理を行ったりすることができる。
「このチップは、(指紋などの)他のバイオメトリック・アプリケーションの代わりとして用いられている」とFulcherは説明する。
Fulcherによると、FDAの調査は、健康上のリスクや影響に焦点を当てるものではないという。VeriChipは米国内ではすでに、セキュリティアプリケーションや金融市場向けに、このRFIDチップを販売している。同社の基本技術は、数年前から動物でも利用されている。
今回FDAが主に調査するのは、プライバシーに関する問題だとFulcherは示唆した。つまり、FDAは、VeriChipの技術を利用することによって、機密情報が不適切に開示されてしまうような状況が発生しないかを調べることになる。
技術面では、FDAが27日に、市場にはこれに相当する製品はないという書簡を公開している。これがきっかけとなり、今回の調査が実現することになった。同社は、2003年10月から調査を申請している。
イタリアの保健省は今年4月から、医療業界でこうしたチップを利用する6カ月間の試験を開始した。
VeriChipは米Applied Digital Solutions(ADS)の子会社で、先日は、メキシコの司法長官が自分の腕に同社の小型RFIDチップを埋め込んだと発表したことで世界のニュース紙面をにぎわせている。
Fulcherによると、基本となる技術は新しいものではないという。ADS傘下のグループ企業であるDigital Angelは、15年前から動物を識別するために、こうしたタグを何千枚も販売してきた。また、米エネルギー省は、Digital Angelの技術を採用してサケの移動を監視している。家庭のペットや家畜にチップを埋め込んだ例もいくつかある。
「このタグは20年間もつと見ている」(Fulcher)
Fulcherによると、人間を識別するためにタグを利用するという考えは、2001年9月11日に起こった同時多発テロの後に生まれたという。ADSのメディカルアプリケーション担当バイスプレジデントRichard Seeligは、消防スタッフが万一の場合でも本人だと確認してもらえるよう、自分の腕にペンでバッジ番号を書いているのをテレビで見て、この構想を思いついた。
Seeligは自らDigital Angelのタグを体内に埋め込み、最高経営責任者(CEO)に機能することを実証してみせたという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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