マイクロソフト、ライセンス契約変更の意図は?

Ina Fried(CNET News.com)2004年03月02日 11時18分

 Microsoftは先頃、コンピュータメーカー各社を長年苦しめてきた文言をライセンス契約から削除すると決定したが、これについて複数のアナリストが、同社でビジネスのやり方を変えようとする意欲が高まっていることの現れだと述べている。

 Microsoftでは、ソフトウェアの開発やマーケティングのやり方についてはあまり変更する気はないものの、Directions on MicrosoftのアナリストRob Helmによると、監督機関が抱く懸念への対応には熱心で、契約に関する問題を中心とした論争を解決する可能性も高いという。

 「Microsoftは、契約条項については、技術や設計面の変更を要するものよりも柔軟な姿勢を見せることになるだろう」(Helm)

 Microsoftは先週、各コンピュータメーカーと取り交わすWindowsの標準的な契約から、ある条項を削除したことを公表した。その条項は、自社製マシンにWindowsを搭載して販売したいと考えるメーカーに対し、Windowsが自社の知的財産を侵害しているとは主張しないよう同意を求めるものだった。

 先月実施されたこの措置は、日本の公正取引委員会が特定の契約文言に関する調査の一環として、Microsoftに緊急の立ち入り調査を実施するわずか数日前の出来事だった。Microsoftの関係者は、公取委の調査のことは知っていたが、時期が重なったことは偶然に過ぎないと述べている。

 同社では、特に海外のコンピュータメーカー各社からこの文言に対する疑問の声が挙がってきたことで、数カ月前からこの文言の削除を検討していたという。Microsoftの技術政策ディレクターDavid Kaeferは、「我々は、明らかに数多くのパートナー企業からこの話を聞いていた」と語った。

 Microsoftの幹部らによると、今回削除されたのと全く同じもしくは類似する文言が、1990年代前半からWindowsの契約の中に含まれていたという。

 各国の規制当局は、数年前から断続的にこの問題を調査していた。1990年代前半から半ばにかけて実施された米司法省の調査は、結局何の措置もとられずに終了したが、この問題は同省とMicrosoftによるその後の反トラスト訴訟の中で言及された。また、EU(欧州連合)も2000年と2001年にこの問題を調べたが、何の措置もとらずに調査を終了している。

 Kaeferによると、この文言が挿入されていた目的は、顧客のために訴訟の可能性を低減し、不確定要素を排除することだったが、Microsoftは別の方法でもこれを実現できるという。おそらく同社は、今後複数のコンピュータメーカーと特許のクロスライセンス契約を結んでいくことになるだろう。すでに同社は、Hewlett-Packard(HP)をはじめ、Cisco Systemsなどの大企業との間で、このような契約を結んでいる。

 この条項を削除したことは「ビジネスとして理にかなった判断」であり、Microsoftの行動がより広範な影響を及ぼすとの意識が同社で高まっていることを示していると、RedmonkのアナリストSteve O'Gradyは述べている。同氏は、他の(国の)規制当局がすでにこの条項を調査しながら、結局何の措置もとられなかった点に注意を促している。

 「もし、この条項が合法的だとすれば、Microsoftはそのまま契約のなかに残しておけたはずだ。だが、明らかに彼らはそうしなかった」(O'Grady )

 この選択についてO'Gradyは、「Microsoftが自社のビジネスのやり方を外部がどう見ているかついて、前より少し敏感になった」ことを示すものとしている。

 一方Kaeferは、今回の動きについて、Microsoftが知的財産に関する問題の取り扱い方を再考している大きな流れの一部だと指摘。同氏によると、Microsoftはこうした問題を取り扱うに際して法的な懸念を解消し、またパートナー企業との関係を改善するような、思いがけない方法が複数あることを学んでいるところだという。

   「こうした事柄を考え抜き、モデルの変更が適切な場合にはそれを変えるとの意欲があれば、その意欲が顧客満足度の点で我が社を助けることになるだろう。顧客の満足は、我々が掲げるとても大きな目標だ」とKaeferは述べている。Microsoftは、顧客からの評価の改善を優先事項としており、またそれが同社経営陣のボーナス査定における重要な要素となっている。

 日本での(公正取引委員会による)調査について、Microsoftが自社の行動でこの疑念を無意味なものにしたいと考えていることは確かだ。

 O'GradyとHelmはともに、おそらくこの問題がMicrosoftにとっては争う価値のないものだという点で意見が一致した。

 Microsoftは、ソフトウェア開発の手法よりも契約条件を変えてもかまわないとしていることから、同社の方針変更から利を得るのは各コンピュータメーカーであってMicrosoftの競合相手ではない、とHelmは述べている。

 「得をするのはPCメーカーということになりそうだ。司法省対Microsoftの訴訟のときもそうだった」(Helm)

この記事は海外CNET Networks発の ニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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