ある大手半導体メーカーが、Nanteroという新興メーカーと契約を交わし、同社のカーボンナノチューブを使ったメモリ製造技術を採用することになった。Nanteroにとって、これは2件めのライセンス契約となる。
Nantero最高経営責任者(CEO)のGreg Schmergelは、ライセンス先の名前を明らかにしなかったものの、2〜3週間以内には発表が行われると語った。同氏によれば、他社との交渉も進んでいるという。今回の契約に先立ち、同社は6月に、LSI Logicへメモリ技術をライセンスすると発表にしていた。LSI Logicでは、2005年末までにNanteroの技術を自社製品に組み込みたいと考えていると、Schmergelは述べた。
「(今度の新しいライセンス先は)非常に大きな会社で、半導体製造設備も持っている」とSchmergelは語り、さらに「ほかにもいくつか契約交渉を進めている企業がある。だが、そのうちのいくつかは発表されることはないだろう」と付け加えた。
Nanteroでは、カーボンナノチューブで(チップ内部でオン/オフのスイッチの役割を果たす)トランジスタを作り出す技術を提供している。カーボンナノチューブとは炭素原子を管状にしたもので、数多くの驚くべき特性を備えている。
同社の技術は、このうち2つの特性を利用している。1つは自在に曲げられるという特性で、もう1つはファンデルワールス力により炭素原子が互いが強く引き付けあうというものだ。
Nanteroのメモリ設計では、カーボンナノチューブのリボンが炭素基盤上に吊るされる形になる。回路が「オフ」の状態ではナノチューブのリボンは基盤には触れず、リボンを吊るしているインターコネクト間を電気は流れない。これが「オン」の状態になると、ナノチューブは下側へと曲がり、ファンデルワールス力により基盤へと接触する。電気は流れ、メモリ素子はデータ的に「1」として記録する。
このオン/オフ状態は、リボンに別の電荷を与えることで相互に切り替え可能である。
Nanteroのメモリは、プロセッサ上にキャッシュメモリとして組み込まれているSRAM(Static Random Access Memory)よりも高速だと、Schmergelは説明する。LSI Logicでは、Nanteroのメモリ技術をSRAMの置き換えとして用いるつもりであり、今回名前の伏せられているライセンス先についても同様だという。Samsung、STMicroelectronics、Hynix、Cypress Semiconductorなどの企業がSRAMを製造していると、iSuppliのアナリストBetsy Van Heesは述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス