メモリの新技術標準確立に向けた動きが続くなか、米IBMと独Infineonは今週、16Mビットの磁気メモリチップのプロトタイプを発表した。
両社は米国ハワイで州で開催されているVery Large Scale Integration Circuits Symposium会場で米国時間23日、Magnetic Random Access Memory(MRAM)チップを紹介した。今日、コンピュータ向けメモリで主流となっている規格と異なり、MRAMはデータ保存に電気ではなく磁気を使用する。
MRAMはメモリ技術の状況を大きく進展させる可能性があると、少なくとも支持者の間ではいわれている。フラッシュメモリのように、MRAMは搭載されているコンピュータの電源がオフになったとしても、データを維持し続けることができる。また、すばやいデータの取り出しが可能であり、理論的には永遠にデータを保持し続けられる。
昨年6月に開催された同カンファレンスで、IBMとInfineonは、両社がいかに180ナノメートルプロセスを使って128kビットのデータを保持可能なMRAMチップを生産するのかを記した資料を発表している。
その際、両社は2004年初頭にMRAMのデモをより完全な形で実施すると約束し、2005年までには商用ベースの生産に向かう予定だと述べた。だが、この期限は確かなものでなくなりつつある。プロトタイプの発表を行うなかでInfineonは、MRAMが「数年の間に」メモリ市場の多くのセグメントに入っていく可能性があると述べている。
技術そのものの複雑さや、ムーアの法則に従ってメモリ技術を進化させていくためのコストを考えると、メモリ製品、特にフラッシュメモリ製品は、次の10年間で本質的なアーキテクチャの変革が行われるだろうと多くの人が予測する。簡単にいえば、メモリチップのサイズ縮小やトランジスタの追加を行うのは、非常に高価で難しくなるということだ。
MRAMは数ある技術の1つに過ぎない。Microsoftから投資を受けた新興企業Nanochipは、基板上で小型の駆動装置を使って極小の点に熱を通すことで0と1を判別するという、フラッシュメモリに代わる技術を提案している。Motorolaは、シリコンベースのナノ結晶をフラッシュメモリに組み込むことで、フラッシュメモリチップの小型化に成功したと述べている。ZettaCoreといういくつかの有力な資金提供者をつけた新興企業では、分子レベルのデザインを提唱している。
これらの企業は、自身の技術のメリットやライバル技術の問題点を説明している。しかし、MRAMの市場投入時期が不明確になりつつあることから分かるように、リスクやコストを考えると、既存技術の置き換えも容易でない。
「保守的な業界だ」とZettaCore CEOのRandy Levineはいう。「だが人々は(メモリ技術の変革について)話し合っており、大手メモリベンダでそうでないところはないだろう」(Levine)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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