セキュリティソフトウェアメーカーのSymantecにとって、ワームやウイルスなど一連のセキュリティに関する頭痛の種がビジネスの追い風となっていることは、よい知らせでもあり同時に悪い知らせでもある。
同社の最高経営責任者(CEO)John Thompsonは1999年の就任以来、移り気の激しい消費者市場から、安定した売上の見込める法人部門へと重点を移すべく、同社の方向転換に努めてきた。Thompsonはこの方向転換で、2002年と2003年にはいくらかの成功を収めたが、 しかしこのところ多発しているウイルスのせいで、この限られた成功も危うくなっている。アナリストの予想では、同社の今会計年度の稼ぎ頭になるのは消費者向け事業だという。
「Symantecは法人向け事業の成長速度が十分ではないと、証券アナリストから何度も言われてきている。いくらか成長はしているものの、人々が期待したほどのものではない」とSmith Barney CitigroupのアナリストTom Berquistはいう。消費者向け製品の売上に大きく依存することにはリスクがある。ウイルス攻撃のペースが鈍化し、人々が既に必要な保護ソフトを購入済みとなれば、Symantecの成長のペースはIT業界全体のレベルにまで減速してしまうだろう。消費者向けウイルス対策事業の成長が鈍る場合に備え、同社はウイルス対策とは無関係の企業向けセキュリティ事業を強化する必要がある」(Berquist)
Symantecは28日(米国時間)に第4四半期の決算を発表する。同社は全てのパソコン所有者に影響するウイルスやワームなどのセキュリティの脅威から利益を上げている企業の代表といえる。Internet Security、Personal Firewall、SystemWorks、AntiVirusといったNorton製品を持つSymantecは、悪いニュースを利益に変えられる企業の1つだ。しかし移り気な個人ユーザーが、十分な保護手段を講じていると判断したり、あるいは他社の製品に目を向けてしまえば、Symantecには法人向けの事業からもっと多くの売上を得る必要が出てくる。
Symantecでもこのリスクに気付いている。同社が米証券取引委員会(SEC)へ提出した書類の中には、「わが社は、2003年12月31日までの9カ月間における消費者向け製品売上の伸びの大部分が、2003年8月に発生した数々のセキュリティの脅威によるもので、この成長が今後も継続する可能性は低いと考えている」と書かれている。
同社の第3四半期決算(2003年12月末締め)では、消費者部門の売上が前年同期比55%増の2億4240万ドルに達し、売上全体の49%を占めた。一方、企業向けセキュリティ部門の売上は17%増の1億8670万ドルで、全売上の38%だった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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