昨年のLinux対応開発ツールの発表に続き、OSDLやCELFへの参加、さらにはRed Hatとのアライアンスなど、Linuxに対する動きを急速に進めるウインドリバー。同社の方向性や戦略、なかでもLinux関連事業の展開は今後どうなるのだろうか。今年1月に米Wind River SystemsのCEOに着任したケン・クライン氏が来日し、19日に記者説明会を行った。
米Wind River SystemsのCEOに着任したケン・クライン氏 |
ウインドリバーの主力製品となるのは、組み込み機器向けのリアルタイムOS VxWorksだ。しかし同社は、組み込み市場で需要が高まるLinuxに対する流れを敏感に感じ取った。そこで同社では、約1年ほど前よりLinuxサポートの検討をはじめていたのだという。昨年10月のLinux用開発ツールの発表は、Linuxを正式にサポートするという戦略の第1段階というわけだ。その後のLinux関連団体への参加やRed Hatとの提携から、同社のLinux関連事業に対するさらなる本気度が見て取れる。
ウインドリバーが今年2月に発表した新戦略DSO(Device Software Optimization、スマートデバイス搭載ソフトウェアの最適化)は、ソフトウェア開発プロセスの簡素化・効率化を図り、ソフトウェア開発環境の信頼性や安全性、相互運用性を高めること、さらには複数の開発環境下でのソフトウェア開発を標準化することに重点を置いている。クライン氏は、「顧客企業では、VxWorksとLinuxを並行して採用するケースも多かった。こういった状況下でDSOを推進するために、Linux業界最大手のRed Hatとの提携に至ったのは自然な流れだ」と説明する。
Linuxを推進することで、VxWorksのシェアが縮小するかというと「決してそういうことはない」と、ウインドリバー代表取締役の藤吉実知和氏はいう。「VxWorksは、リアルタイム性が必要とされるアプリケーションにとって最適であり、Linuxはより多くのアプリケーションへのアクセスを必要とする場合に最適だ。例えばネットワークのラインカードにはスピードが必要なためにVxWorksを使うが、そのラインカードをコントロールするためにはLinuxを使うといったように、両OSの用途は全く違うもの。今後もVxWorksとLinuxはそれぞれの用途を生かしつつ発展を続ける」と藤吉氏は語る。
ウインドリバーが4000万ドルもの投資を行って開発したVxWorksは、安全性の強化や接続性の向上などが施され、バージョン6.0のベータ版が今年8月にリリースされる予定だという。6.0の正式出荷は、今年12月になる見込み。
LinuxはRed Hatと共同で組み込み向けに最適化する。開発ツール群も統合し、VxWorksとの連携を確保したうえで、Linux対応プラットフォームとして今年後半には発表する予定だ。
LinuxとVxWorks共通の開発環境となるWind River Workbenchは、6月にもバージョン2.0が出荷開始される。8月に出荷開始予定の2.1では、ハードウェアの立ち上げからデバッグをサポートするという。12月にはVxWorks 6.0対応のWorkbench 2.2が出荷される予定で、同月にはさらにLinuxサポートを強化した2.2.1も出荷されるという。現在WorkbenchはVxWorksとLinuxのみサポートしているが、「今後はiTRONなどの他OSやレガシーにも対応する予定」(クライン氏)という。
クライン氏によると、ウインドリバーは組み込みデバイス用のソフトウェアでマーケットシェア30%と現在シェアトップ。同社がターゲットとするのは、デジタルコンシューマー、産業部門、ネットワークインフラ、自動車、エアロスペース/ディフェンスの5つで、21日には産業用多関節ロボットで世界一の販売台数を誇る安川電機が、同社のロボットコントローラーにウィンドリバーのパッケージ製品Wind River Platform for Industrial Automationを採用したと発表したばかり。現在3億以上ものデバイスに搭載されているというウインドリバー製品は、「今後もデバイスが増え、そのためのコンテンツも増加するに従い、さらに需要が見込めるだろう」とクライン氏は語った。
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