IBM的な「種まきの仕方」--ベンチャー企業でなくVCに投資する理由

Dawn Kawamoto(CNET News.com)2004年04月22日 10時00分
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  大手IT企業の多くは、ベンチャーキャピタル部門を自ら管理する。しかし、業界最大手のIBMは違う。新興企業や新技術への投資戦略に関する限り、IBMは他社とは異なる方針を採用しているようだ。

  IBMは若いベンチャー企業に直接投資をするのではなく、もっと間接的に、つまり「ファンド・オブ・ファンズ」方式で選択的な投資を行っている。IBMのVenture Capital Groupは過去4年で40以上のベンチャーキャピタル(VC)ファンドに出資した。また、80社以上のVCと密接な関係を築いており、その中には、Accel Partners、Walden Internationalなどが名を連ねる。

  IBMがベンチャー投資部門を設置したのはドットコム・バブルがはじける直前のことだ。外部の技術革新を活用することが目的だった。IBMのDeborah Magidによれば、この戦略はよい結果を生んでいるという。Magidの指揮のもとで、IBMは今年、他のVCが運用するファンドに合計2000万ドル以上の資金を投じることになっている。

  IBM戦略提携部門ディレクターのMagidは、この共生関係がIBMとVCの双方に利益をもたらしているという。IBMは現金とノウハウを提供して、VCとその投資先企業の相談役として機能する。一方、VCは投資先企業を通して、IBMに最新の動向や技術に関する情報を提供している。

  投資先企業の一部は、やがてIBMのビジネスパートナーとなる。事実、IBMの総収益の3分の1はこうした企業の貢献によるものだ。IBMのビジネスパートナーが創出する収益は290億ドルに上る。ビジネスパートナーがIBMとともにサービスや商品を提供する場合もあれば、IBMが単独で提供する場合もある。

  CNET News.comはMagidにインタビューを行い、IBMの投資戦略や、事業戦略/IT戦略との関わりについて話を聞いた。

---IBMのベンチャー投資部門がベンチャー企業ではなく、VCのファンドに投資をする理由を教えてください。

 90年代半ばのIBMは、マスコミの報道を聞いてはじめて新企業が設立されたことを知る状況にありました。これでは、新企業の経営基盤に食い込む機会はありませんでした。経営に関する意思決定に関わっていなかったからです。いうなれば、我々はエコシステムの外側にいたのです。その内側に入るためには、ビジネスが生まれる現場と密接に関わる必要がありました。

---関心のある分野の動向を、VCに監視してもらっているということですか。

  IBMのポートフォリオを補完する必要性があるときは、つきあいのあるVCに有望な提携先を探してもらいます。VCの力を借りることで、新しい企業と関係を結び、その関係を戦略的に育てていくことができるのです。相手企業がまだ無名だったり、設立後間もなかったりする場合は、このやり方が特にうまくいきます。

---最近注目している投資分野を教えてください。

  注目している分野はいろいろあります。特定の市場や技術に関するものもあれば、特定の市場セグメントに関するものもあります。現在、特に関心があるのは中小企業市場です。それ以外では、主に技術関係ですね。今後数年のITの動向を考えると、やはりWebサービスが重要になると考えています。

---Webサービスのなかでも、特にVCに注目してもらっている分野があれば教えてください。

  IBMは現在、Webサービスを利用したアプリケーションに注目しています。Webサービスのような技術を特定の事業分野や産業分野の知見に結びつけ、新しい価値を生み出す方法があるなら、大いに関心をそそられるところです。

---他にはどんな分野に関心がありますか。

  データセンター関係---具体的にはコンピューティングの自動化、コンピューティング資源の割当と管理について関心を持っています。

---ごく初期の段階から投資を行い、結果として大規模な取引関係に発展した例はありますか。支障がなければ、具体的な企業名を教えてください。

  Cyanea Systemsはそのよい例といえるでしょう。Cyaneaとの関係は、同社がまだ何も製品を出荷していなかった時期にさかのぼります。当時、Cyaneaの製品はまだ初期の試験段階にあり、見ることができたのは試作品のみでした。これはアプリケーションビューからシステム環境にいたるまで、稼働中のアプリケーションの状態を監視するというものです。Cyaneaの創設メンバーの一人は金融サービス企業Charles Schwabの出身で、これがいかに複雑で難しい問題かを熟知していました。そこで、動作中のアプリケーションのトラブルを解決したり、監視・追跡したりする方法を模索していたのです。

  これはIBMのWebSphere事業にとっても重要な課題でした。WebSphereはアプリケーションサーバで、大量のトランザクションを処理しなければなりません。WebSphere上で稼働しているアプリケーションの状況を把握することができるCyaneaの技術は非常に魅力的でした。IBMはパイロット版の開発と試験に協力し、それをIBMの環境に統合できるよう支援しました。現在、CyaneaはIBMのビジネスパートナーであり、製品も大幅に強化されています。

---IBMが支援を継続したくても、VCが3度目、4度目の投資を渋った場合、その企業に直接投資をしますか。それとも、その企業に関心を持つような別のVCを探しますか。

  ベンチャー企業に直接投資をしたこともありますが、これはごくまれな例です。IBMの戦略上重要だと幹部が判断した場合は、そうすることもあり得るでしょう。しかし、VCファンドへの投資を担当する部門が、そのような意思決定を行うことはありません。

  私の知る範囲では、何年か前に、ある新興企業に投資を行ったことがあります。この会社はIBMが必ず必要とする技術を開発していました。すぐに必要な技術ではありませんでしたが、いずれはIBMのビジネスパートナーになってもらいたかったので、いくばくかの資金をこの会社に直接提供して関係を固め、支援の意向を明らかにしました。この会社が確実に成長できるよう支援したわけです。しかし先ほども申し上げた通り、これはあくまでも例外的なケースです。

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