データ保護が将来の鍵--DRM特許訴訟に和解したマイクロソフトのねらい

John Borland (CNET News.com)2004年04月13日 14時51分

 Microsoftは米国時間12日、InterTrust Technologiesとの間で長年続いていた特許論争に決着を付け、同社が進める多くの重要な計画に影を落とす法的な懸念を一掃した。

 デジタル著作権管理(DRM)技術を開発するInterTrustは、Microsoftの中核製品であるWindows、Office、Outlookから、.NETプラットフォームやXboxゲーム機まで、事実上すべてのMS製品が自社の保有する特許に違反していると申し立てていた。

 これらの多岐にわたる申し立ての核心には、情報の保護技術をめぐる問題がある。つまり、情報をコンピュータ間で移動したり、あるいはインターネットなどのネットワークを介してやりとしても、その情報が不正使用されないようにするための技術だ。Microsoftがデジタルオーディオ/ビデオの配信やウェブサービス提供の標準インフラになろうとするなかで、このコンテンツ保護機能は今後ますます重要度を増していくことになる。

 「Microsoftは、デジタルメディアの保護に関してWindowsが最良のプラットフォームになるよう確実を期したいと本気で考えている」とDirections on Microsoftのアナリスト、Matt Rosoffは述べ、さらに「今回の和解で、MicrosoftはDRM関連のいくつかの取り組みについて先へ進むことができる」と付け加えている。

 Microsoftは今回の和解で、InterTrustに対して4億4000万ドルを支払い、代わりに同社の所有する特許の永久ライセンスを取得することになる。Microsoftでは、次期Windows「Longhorn」のリリースに先立ち、知的財産に関する障害の一掃を狙う動きを見せているが、今回の和解もこうした流れの一部と考えられる。

 Microsoftはデータの保護に関してすでに相当な力を入れている。新しいMicrosoft Officeには、Wordドキュメントへの不正アクセスや転送、あるいはメール送信を防ぐ機能などがある。同社はさらに、多くのデジタル音楽/ビデオ企業が楽曲やビデオ番組のオンライン配信に採用しているWindows Media DRMツールの開発やマーケティングにも力を入れている。

 しかし、Longhornでは、これらのセキュリティ技術がより密接にOSに統合されると見られている。また、ハッカー対策を目的としたハードウェアベースの関連セキュリティ機能も同様だ。ソフトウェア開発者やハードウェアパートナーは、こうした重要なセキュリティ技術をサポートするにあたり、それが訴訟の対象になっていないことを保証するよう求めることになると、アナリストは指摘している。

 Microsoftは12日に行われたインタビューの中で、InterTrustの特許が同社の今後の開発計画の鍵を握っていたことを認めている。

 Microsoftの技術政策ディレクター、David Kaeferは、「基盤となる特許をInterTrustが保有しており、われわれがライセンスを受けなくてはならないことがますます明らかになっていた」と語っている。

 InterTrustの特許は、特定のデータへのルールの添付方法に関連したもので、これを使ってその情報がさまざまな環境でどう利用できるかを規制する。

 たとえば、ある音楽の利用について、基本使用料だけで1カ月に限りこれを再生できるようレコード会社が承認した場合、この曲がインターネットからダウンロードされたり、MP3プレイヤーへ転送されたり、あるいはXboxの内蔵ハードディスクに送られたり、といった動きをこのルールシステムで追跡すると、それがInterTrustの特許に抵触する可能性がある。

 InterTrustのCEO(最高経営責任者)Talal Shamoonは、「従来のアプローチでは、情報の保護にはコンピュータの保護が必要だった」と述べ、しかし同社のテクニックを使えば、「情報が常に保護されているため」コンピュータ自体はそれほど重要ではなくなるという。

 こうしたテクニックからは、音楽やビデオといったメディアファイルの保護を連想しがちだが、しかしこれを普通のデータに応用することも考えられる。とりわけMicrosoftをはじめとする各社が「セキュアコンピューティング」の方向性を打ち出し、ハッカーやウイルス作者によるコンピュータの乗っ取りを防止しようと取り組んでいる現在、こうしたテクニック--そしてそれをカバーするInterTrustの特許--の重要性がますます高まっている。

 Microsoftは、マルチメディアやビジネスなど文脈の違いに関係なく、あらゆるデジタルデータでのセキュリティ確保が自社の将来の発展にますます欠かせなくなっていると考えているが、今回の和解はそうした同社の考えを明らかに示したものだとアナリストは述べている。さらに、同社は先週、DRM技術を開発するContentGuardの持ち株比率を引き上げている。ContentGuardの技術は、Officeドキュメントのセキュリティ確保に関連するもので、InterTrustのテクニックと補完し合うという。

 「これら2つの技術は連携を強化されるかもしれない」とDirections on MicrosoftのRosoffは述べ、「Microsoftではもっと幅広く応用できる何らかの統合型DRM技術の開発さえ進めている可能性もある。同社は今後その方向へが進んでいくと思う」と付け加えた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。

   

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