衛星利用測位システム(Global Positioning System:GPS)技術を利用した製品の市場は、ここ数年、当初期待された成長を果たせないでいたが、政府の規制、顧客の支持、技術の進歩などが追い風となり、ここにきて急成長し始めている。GPSとは、衛星信号を通じて個人の位置を特定するもの。
SiRF TechnologyというGPSチップの設計会社は2001年に1500万ドル、2002年に3040万ドル、そして2003年には7310万ドルと、順調に売り上げを伸ばしてきている。
米証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると、SiRF(Silicon Radio Frequencyの略)は、昨年黒字を計上し、4月19日には株式公開を予定している。発行株式数は1000万株で取引開始後の初値は1株10−12ドルになると予想されている(ここ数ヶ月、実績のある企業の株価は公開初日に急騰している)。
SiRFに投資している企業には、Dell、Nokia、Intel、松下電器、NTTドコモのある子会社などがある。
一方、チップ設計を手がけるQualcommは、世界各国の通信事業者15社と携帯電話機メーカーおよそ20社に対し、同社のGPS One技術を提供している。現在およそ120種類の携帯電話にQualcommの技術を利用したGPS装置が内蔵されている。Qualcommはチップのほかに、GPSの速度および精度を向上させるためのサーバソフトも販売している。
「GPS技術が市場に出回り出したいま、我々は様々なアプリケーションを開発しているデベロッパに注目している」と、Qualcommのインターネットサービス部門担当バイスプレジデントSteve Brownは述べている。
最近、少なくとも米国でGPS市場が急成長した主な原因は、米連邦通信委員会(FCC)のE911指令にある。この指令は、携帯電話事業者に対し、2005年末までに各社のネットワーク上で利用される携帯電話の95%を、ユーザーが911番(日本の110番に相当)にかけた際、レスキュー隊が位置を特定できるようにすることを義務付けている。
各通信事業者はE911指令に従うため、様々なアイデアを試してきている。しばしば批判されるEnhanced Observed Time Difference(EOTD)もその一例だ。しかし、多くの事業者にとって最適な新技術はどうやらGPSか、あるいは携帯電話による測位を通して機能向上が可能なGPSの一形式であると見られている。Sprint、Verizon Wireless、Nextel Communicationsの3社が、E911対策としてこの技術を採用している。
この形式のGPSに対抗するのは、Time Difference of Arrival (TDOA)という技術だ。TDOAは、携帯電話網の基地局の内部にある「位置計測ユニット」に電波が到達するまでの時間を計測することで、電話の位置を割り出すという仕組みになっている。T-MobileやCingular Wireless、そして同社が買収を発表したAT&T Wirelessでは、昨年EOTDからTDOAに乗り換えている。
しかし、TDOAのような携帯電話網だけを利用するシステムでは、基地局をアップグレードする必要がある。これと比べて、GPSはサーバソフトウェアをアップグレードするだけでよく、また精度も高いと、この技術の支持者は説明する。
だが、GPSに対する消費者の需要が高まっており、企業各社はこれに目を付けている。たとえば、Hutchesonが欧州と東南アジアで構築している第3世代のネットワークでは、GPSによる位置追跡機能がサポートされる予定だ。また日本や韓国では、NTTドコモ、SK Telecom、KDDIの各社がロケーションベースのGPSサービスやコンテンツをすでに提供している。
Brownによると、KDDIは先頃、新規加入者数でNTTドコモを上回ったという。同社はこの原動力として、「イージーナビウォーク」という個人向けナビゲーションアプリケーションを挙げている。このアプリはGPS信号と電話機のなかで発生する処理の組み合わせを通じて、個人の動きを追跡するものだ。
「欧州の通信事業者はGPSを積極的に採用している」とBrownは述べ、さらにラテンアメリカ諸国では人の居場所を追跡できる機能が人気を集めつつあると付け加えた。「この地域では、個人の身の安全を守ることが大きな課題となっているためだ」(Brown)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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