ソフトウェアメーカーのSalesforce.comが行った会計手法の変更に対して、米証券取引委員会(SEC)が異議を唱えており、株式公開に向けた同社の計画に関する調査に遅れが生じている。
Salesforceの事情に詳しい匿名希望の情報筋によると、同社による販売手数料の費用計上方法に対してSECの関心が集まっているという。この問題は、米国時間9日付けのSan Francisco Chronicle紙で初めて明らかになった。
Salesforceは新規公募の準備に関するコメントを控えている。同社は昨年12月、SECに新規公開の書類を提出していたが、今回の調査をそれを受けたもの。
この申請書類によると、Salesforceは昨年、販売手数料の会計処理方法を変更しており、この変更で同社の収益が書類上は増加したという。
それまでの数年間、Salesforceは複数年契約に関する販売手数料を、契約を結んだ四半期の費用として計上していた。しかし、同社は2003年、これらの費用を一般的に認められた会計原則である契約期間全体での分散償却に変更した、と情報筋は説明している。
Salesforce.comは、営業担当者への報酬支払方法を実際に変更したわけではないが、今回の会計方針変更は純利益に膨大な影響を与える。同社が変更を開始した2003年度は、同社の純損失が前年の2920万ドルから930万ドルに縮小した。同社はまた、同会計年度の最初の9カ月で470万ドルの黒字を計上したが、前年同期には720万ドルの赤字だった。
情報筋の話では、SECはSalesforceに対し、首尾一貫した財政状況が一般に分かるよう、財務報告書を計算し直し、前年度まで遡って新しい会計手法を適用するよう求めているという。
当初は早ければ3月と見られていた同社の株式公開は、SECによるこの調査で遅れることになった。同社の株式公開は、ハイテク業界のIPOブームに再び火を付け、またソフトウェア業界を刷新する可能性のある新しいビジネスモデルの試金石になるとも見られている。
Salesforceは、サブスクリプションベースのソフトウェア販売という新しいビジネスモデルをもった企業のなかでも模範的な存在だ。いまこのモデルには法人の購買担当者の間で人気が高まっている。アナリストの予想では、Salesforceや同種の企業が成功すれば、SAPやSiebel Systems、PeopleSoft、Oracleなど既存の大手ソフトウェア企業に課題を突きつけることになる可能性があるという。
Schwab SoundViewの証券アナリスト、Peter Colemanは、Salesforceの会計手法に対する懸念は、同社のビジネスモデルに対する不確実性の1つを浮き彫りにしている、と語っている。
問題は、売上を長期分散して集めるSalesforceのモデルと、導入時に多額の売上をあげる従来のモデルと比べた場合、ソフトウェアメーカーにとってはどちらのモデルのほうが収益性が高いのかということだ。「この新しいモデルについては、まだはっきりしていない点がたくさん残されている」(Coleman)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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