1999年の再現か--プチバブルに踊るIT業界の光と影

Michael Kanellos, Ina Fried(CNET News.com)2004年04月09日 22時36分
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 株式分割?携帯端末のオークションが加熱?製品をタダでばらまく?・・・ IT業界では今、1999年に逆戻りしたかのような光景が随所で展開されている。

 景気の回復とIT投資の増加が重なり、規模こそささやかなものの、企業ではイケイケムードが復活し、また個人の間でも衝動的な振るまいが復活している。バブル当時のような手放しの楽観主義が戻ると期待するものはいないが、あの頃を彷彿させる現象が確かに目立ってきている。

 たとえば7日(米国時間)に、検索業界大手のYahooと携帯機器BlackBerryのメーカーであるResearch In Motion(RIM)が、ともに1対2の株式分割を行うと発表した。ごく最近まで株式関連の話題といえば、もっぱら自社株の買い戻しの話ばかりで、実際Yahooでも2000年1月以来株式分割を行っていなかった。しかし、同社の収益はウォールストリートのアナリストの予想を大きく上回り、株価も8日朝には7ドル高くなり、3年ぶりの高値更新となった。

 RIMの収益は予想にとどかなかったものの、特別な訴訟費用がなければ予想通りの収益を上げていたという。カナダのオンタリオ州に本社おく同社は先頃新たに株式を発行し、10億ドルの資金を集めている。

 同日、通信用チップの専門メーカーBroadcomは、圧縮技術を開発するSand Videoを買収した。同社では過去数カ月間に数件の企業買収しか行っておらず、1999年から2000年にかけて十数社を買収していた頃とは対照的である。なお、同社はその後3年間かけて、事業のリストラを実施してきた。

 また、勤め先の株価をチェックし、自分のストックオプションがいくらになっているかを皮算用するのが、シリコンバレーで働く人間の間で格好の暇つぶしとして再浮上してきた。たとえば、半導体メーカーのNational Semiconductorのように、1年前に10ドル後半だった株価が47ドル前後まで値上がりしていれば、こうした暇つぶしが流行っていても一向に不思議はない。

 「わが社の社員は、株価が過去一年間で150%以上値上がりしたことをよく知っている」と同社広報担当Jeff Weirは述べ、「これだけ株価が上がっていれば、注目を集めて当然だ」と付け加えた。

 一方、eBayのオークションでは、PalmOneのスマートフォン「Treo 600」の値段が小売価格を越えるなど、バブル全盛期を彷彿させる様相を呈している。当時の消費者も、オンラインオークションサイトで小売価格を越える金額を出して入手困難なPalmの携帯端末を落札していた。

 「Treo 600は素晴らしい製品だ」とリサーチ会社DisplaySearchのバイスプレジデントJerry Bensonはいう。

 さらに、高級品市場さえも息を吹き返している。これは企業幹部やエンジニアが以前ほど失業の心配をしていないことの現れといえる。Jeremi Silvaは、インテルのお膝元カリフォルニア州サンタクララにあるStevens Creek BMWというカーディーラーで働いているが、同氏によるとここ数カ月で販売台数が目に見えて増加しており、新たに登場したBMW 645というモデルの場合など、確保した在庫がひとつ残らず売れてしまうという。

 「定価7万9000ドルのクルマが飛ぶように売れている。だいぶ金回りがよくなっているのは間違いない」(Silva)

 ビジネスの好転を示す確かな兆候がもうひとつある。それは自動車の走行スピードが遅くなったことだ。ドットコムブーム後の景気後退期には、サンフランシスコとパロアルトを結ぶ道路はガラガラで、文字通り飛ぶようなスピードでクルマを走らせることができた。ところが現在の道路事情はバブル期と同じくらい悪い。

 「特に労働者の日(9月第一月曜日にあたる休日)の後から、道路の渋滞が目立ってきた」と、長年ベイエリアの交通情報を伝えているレポーターRon Lyonsは、昨年10月のインタビューでそう語っていた。

 ストックオプションは、時代の変わりようを示す良いシンボルだ。ドットコムブーム当時のハイテク企業では、従業員へのインセンティブとしてストックオプションを支給するのが一般的で、その結果多くの人間が富を得た。これらのオプションは経費として計上されなかった。しかし現在では、米国会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)が企業に対してストックオプションを費用に計上するよう勧告している。この要求は利益を大幅に低下させることから、IT企業やベンチャーキャピタルではこの提案にいきり立っている。

 バブルがとっくに終わったことを示す兆候は、ほかにもある。2000年当時、株価の急騰していたAmerica Onlineは、メディア大手のTime Warnerを買収することができた。ところが合併後の企業は、AOL側の財政難に苦しんだ挙げ句、昨年秋にAOL Time Warnerという社名を捨てた。これは、AOLのひどい失墜ぶりを示すものとして人の目に映った出来事だった。

 一時的に話題となったほかの企業、例えばWebvanとPets.comなども、いまや完全に姿を消してしまった。

 さらに、多くの働き口もとっくの昔に無くなってしまった。そして景気全体は上向いているものの、IT企業は安い労働力を求めて海外に目を向けている。

 それでも、景気が盛り返している兆候は確かに見られる。株式の新規公開(IPO)は、これまでしばらくほとんど途絶えたままだったが、現在はまたゆっくりと元のペースに戻りつつある。新規公開企業の多くは、すでにしっかりとした経営基盤を持つところがほとんどだが、なかには比較的創業から日の浅い会社も混じっている。Wi-Fiチップを専門に手がけるAtherosは、1998年に創業した会社だが、今年2月に赤字を抱えたままIPOを果たした。同社の株式は現在、公開時を上回る価格で取引されている。また、Seven Networkという創業から赤字を続けているワイヤレス電子メールプロバイダも、まもなくIPOを行うと見られている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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