先週の金曜日、MicrosoftとSun Microsystemsは長年にわたる戦いに終止符を打ち、10年間の協力契約を結んだ。今後両社は、さまざまな分野で協力し合う。さらにMicrosoftはこの契約に基づいて、長年のライバルであるSunに16億ドルを支払うことになる。
CNET News.comはサンフランシスコでMicrosoftのCEOであるSteve BallmerとSunのCEOであるScott McNealyにインタビューを行い、提携が競合企業に与える影響、McNealyの毒舌の行方、和解の功労者について話を聞いた。
---今回の提携はIBMにどんな影響を与えるのでしょうか。
Ballmer: SunとIBMの関係と、MicrosoftとIBMの関係は同じではない。MicrosoftにとってIBMは顧客だ。Webサービス市場では、SunはMicrosoftよりもはるかに密接にIBMと連携してきた。エンタープライズ市場では、MicrosoftとSunはどちらも成長中のプレイヤーだ。一方、IBMはすでに大きな存在感を確立している。この市場には今も昔もIBMをしのぐプレイヤーはいない。今回の提携がIBMにどんな影響を与えるのかは分からないが、それは顧客が決めることになるだろう。
McNealy: 公平に行こう。今回の提携が、選択肢を求めている顧客--つまり1社ではなく、複数のベンダーから選びたいと考えている顧客のニーズを満たすものになれば、これほどうれしいことはない。最後に選ばれるのが、われわれなら最高だ。IBMが選ばれなくても、われわれの問題ではない。それで構わないというのが、正直なところだ。
---SunとMicrosoftにとって、IBMがたとえ最強でなくても手強いライバルであることは明らかです。今回の提携はIBMにプレッシャーを与えることになるのでしょうか。
Ballmer: そうなるだろう。
McNealy: そうでなければ意味がない。
---なぜ今ごろ和解をするのでしょうか。Java訴訟が片付いた3年前では不可能だったのでしょうか。
Ballmer: 正直なところ、2001年はバブルや何やらで万事が混乱していた。
McNealy: バブル崩壊後も忙しかったんだ。
Ballmer: 2001年に比べると業界はずいぶん落ち着いた。やっと状況を整理し、理解できるようになった。そして昨年、Scottが新しい一歩を踏み出してくれた。これには心から感謝している。
---(McNealyに対して)ゴルフ場でJack Welchに入れ知恵をされたのでしょうか。 それとも、正真正銘あなたの発案だったのですか。
McNealy: 実は、妻がBallmer夫人を我が家に招待したんだ。そこから何となく話が始まった。
Ballmer: 僕らには共通の友人も何人かいる。
McNealy: 共通の役員もいた。
Ballmer: それは君の奥さんだろう。
McNealy: よし、全部彼女の責任にするとしよう。
---両社が和解したとなると、今後はScottのMicrosoftに対する皮肉の数々を聞くこともできなくなるのでしょうか。
Ballmer: まさかそんな。世界中の金を積んでもScottの毒舌は止まらないだろう。
McNealy: 実は今回の契約額はたった1億ドルなのだ。残りは全部、僕の口止め料(笑)。
Ballmer: (笑)いずれ両社の共同プロジェクトに関する話もできると思う。だからといって、お互いに競争しないわけではない。今後もお互いに切磋琢磨したいと思っている。もちろん、協力関係を継続することには違いない。私はSunとの協力関係を重視している。だから、今回の提携は両社の関係を変えることになるが、Scottの口数を減らすことはできないだろう。
McNealy: お互いのビジネスを伸ばし、限界まで知恵を絞ることが今回の提携の趣旨だ。
Ballmer: Sunの担当者とは定期的に顔を合わせることになるだろう。別れる前に、その日程や頻度をScottと相談したいと思っている---定例会議のようなものになると思う。こうした会議では、顧客のために何ができるかが議論される予定だ。
---MicrosoftはEUから独禁法違反訴訟としては史上最高額の制裁金の支払いを命じられました。さらに今回の提携でも出費が予定されています。今後の増配や株主への支払いに支障が出ることはありませんか。
Ballmer: これは前進のための重要な一歩だ。無論、今後の方針については取締役会で議論するつもりだが、今日この場で話せることはない。
---Sunにとって今回の提携は、Microsoftの『毛玉』(McNealyがMicrosoftの製品を皮肉っていった言葉)に入るためのものだったのでしょうか。それとも、この提携はオープン化を促進し、企業にメリットをもたらすものなのでしょうか。
McNealy: SunがMicrosoftの知的財産を利用するときはSunがロイヤルティを払い、MicrosoftがSunの知的財産を利用するときはMicrosoftがロイヤルティを払う。今回の提携はそうした流れを作るものだ。
Ballmer: われわれのような企業、つまり知的財産と雇用創出意欲を併せ持つ企業は、「外部から何を取り込めるか」だけでなく、「投資に見合う対価が得られるか」という問題も考慮しなければならない。今回の提携はその枠組みとなるものだ。Sun、StarOffice、Solaris、Javaについては、我々は公平で適切な枠組みを手に入れた。Scottも同じものを我々から得たと思っているはずだ。この枠組みは今日だけでなく、今後10年間にわたって、両社の協力関係を支えるものになるだろう。
---(McNealyに対して)今回の提携により、公平な競争が可能になったと思いますか。競争に関わる懸念はすべて解消したのでしょうか。
McNealy: 今回の提携は重要な関係と機会をもたらした。あとは実行できるかどうかだ。機会はたくさんある。技術共有の基盤にふさわしい、公平で適切な関係を手に入れることができたと確信している。
これまで両社のエンジニアはお互いに近寄ろうともしなかった。それは法務部門が「接近禁止」を命じたせいもあるが、協力の余地があることを知らなかったせいでもある。エンジニアはお互いを信頼していなかった。しかし、今回の契約でライセンスに関する枠組みをはじめ、必要な材料はすべてそろった。扉は大きく開かれ、顧客からの要望も強い。障害はすべて取り払われたと思う。
---相互運用が可能になっても、インターフェースがオープンになったわけではないなら、Sunが「毛球」の中に入ったような気はしませんか。
McNealy: 提携したからといって、オープンなインターフェースを放棄したわけではない。これからもオープンなインターフェース、マルチベンダーといった方針を貫くつもりだ。今回はMicrosoft環境との相互運用性が必要になった場合に、それを実現するための仕組みを作ったにすぎない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス