MicrosoftはSun Microsystemsに19億5000万ドルを支払い、独占禁止と特許の問題を解決するとの決定を下したが、この決定によって、同社が一連の法的な争いのなかで見せてきた態度を軟化させたことが浮き彫りになった。
両社の経営幹部--特にSunのScott McNealyとMicrosoftのSteve Ballmer--の口から発せられる、時として威勢のいいレトリックは、何度もニュースの見出しを飾ってきた。しかし、Microsoftのここ数年の行動は、同社の一般的なイメージとは大きく異なり、現実主義的な考えを示している。
「今回の和解は、Microsoftが変化したことを反映している。そのことに疑いの余地はない」と以前米司法省で働いたことのある独禁法専門の弁護士は述べている。「1990年代後半にMicrosoftがとったアプローチとは異なる。これは、同社がパートナー企業や政府との戦いに、多くの時間を費やしたくないはと思っていることを明確に示すものだ」(同氏)
今回の和解は、最近顕著になりつつある同社の成熟を示した動きといえるだろう。実際、Sunとの和解に合意した数日前、BallmerはMicrosoftがついに長い思春期から脱したと感慨深く語っていた。
Microsoftにこうした態度の変化がみられる理由としては、同社がこれまで直面してきたいくつもの訴訟で経験を積み重ねたという可能性が考えられるかもしれない。あのMicrosoftですら、いばった独占企業というイメージを持たれることに疲れた。そこで、巨額の札束を渡してもめ事を収め、先へ進むことにした。
「Microsoftは、訴訟で争った相手企業から、さまざまなレトリックで攻撃されてきた」と述べるのは、Gray Cary Ware & Freidenrichで働く独禁法専門の弁護士Mike McNeely。同氏は「戦略的に検討した結果、Microsoftも同社と敵対する各社も『ばかばかしい。お金で解決できるのではないか』と考えるに至ったのだろう」と付け加えている
1997年のApple Computerとの和解では、Microsoftは苦境にあったAppleに1億5000万ドルを投資し、Mac OS向けにOfficeやInternet Explorer、各種開発ツールを引き続き開発していくと約束した。これにより、WindowsがAppleの持つ特許を侵害したか否かをめぐる両社の長い対立は終わりを迎えた。同時に、この和解がWindows OSの数少ないライバルの存続を助けることにつながり、Microsoftに独禁法違反で告発された場合の反論材料を与えることにもなった。
Apple CEOのSteve Jobsは、Macworld Expoのなかでこの和解を発表したが、その際に「Appleが勝つためにはMicrosoftが負けなければならないという考え方を改めなくてはならない」と語った。この合意はMacworld Expoに詰め掛けた熱狂的なMacファンを呆然とさせ、その後衛星回線経由でつながったBill Gatesの姿がスクリーンに映し出されると、多くの参加者からブーイングが起こった。
Microsoftは、2003年5月29日にはAOL Time Warner(現在のTime Warner)との訴訟で合意に至っている。Microsoftはかつてブラウザ分野で争っていた同社に7億5000万ドルを支払うとともに、ソフトウェア配信とデジタルメディアで協力することを約束した。Time WarnerのNetscape Communications部門は、2002年1月にMicrosoftに対する独禁法違反の申し立てを行っていた。同社がWindowsに自社のブラウザをバンドルして販売していることに対して、Time Warnerは、MicrosoftがOS市場における独占的地位を利用して、Netscapeのブラウザ事業をつぶしていると主張した。
両社の和解は、AOLの元CEOであるSteve Caseが2003年初めにAOL Time Warner会長辞任を発表した後に実現した。McNealyと同様、CaseもMicrosoftに対し、遠慮のない批判を浴びせていた。Caseの辞任後、GatesはAOL Time WarnerのCEO、Richard Parsonsに電話をかけ、解決の可能性について話し合いを開始した。決着が付いたのは2カ月後のことだ。
「お互いに賢明な決定を下すチャンスに見えた」。Parsonsは取引を公にした際にこう述べた。Gatesは「これにより、すべては過去の話となる」と付け加えた。
今回のSunとの和解が、RealNetworksとの和解の前兆となるかどうかは、明らかではない。RealNetworksは2003年末に、Microsoftを独禁法違反で訴え、同社に対して10億ドルの賠償金を求めている。同社では、ソフトウェア最大手のMicrosoftがPCに搭載することで、メディアプレイヤー市場での公平な戦いを不可能にしていると主張している。
「私の印象では、MicrosoftにはRealと和解すべき技術的理由は何もないと考えているようだ」というのは、Forrester Researchの主席アナリスト、Frank Gillettだ。同氏によると、その一方で「独占問題について法廷で争う必要がない」という広報的価値が、和解の動機付けになる可能性はあるという。
Realにとっては、先頃欧州委員会が下した裁定が追い風になっている。欧州委員会は先日、Realと競合するWindows Media PlayerをWindows OSにバンドルするのは不正だとの決定を下した。欧州委員会はMicrosoftに対し、Media Player非搭載のWindowsを提供するよう命じたが、これに対してMicrosoftは上訴すると述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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