---ICANNの予算は年々膨らんでいます。30名程度の組織で予算は1000万ドルに達していますね。ICANNの活動は合意の形成や調整といった本来の役割を逸脱しているという批判もあります。組織が閉鎖的になっている可能性はありませんか。
ICANNの規模と仕事量を同種の組織、たとえばRipe NCC(欧州などのIPアドレスの割り振り・管理を行う団体)やその他のインターネット関連機関と比較してみてください。(サイズは)異常ということはありません。
これも見落とされがちなことですが、組織構造そのものはシンプルでも、データベースに関する意思決定は単純ではありません。ポリシーの問題があるからです。特に厄介なのはトップレベルドメインの再委任問題です。この問題は途方もなく複雑化することがあり、ICANNでは過去に発生した再委任問題の文書化に着手しました。
これがどれほど厄介な問題かを軽くご説明しましょう。たとえば、ナイジェリアのドメイン「.ng」は泥沼にはまった問題の1つです。ナイジェリアでは政府内で「.ng」ドメインの管理権限をめぐる内紛が起こり、最終的には首相が間に入って仲裁しなければなりませんでした。ほかにもさまざまな問題がありました。
---これは一度限りの問題なのですか。つまり、.ngの管理権限がはっきりすれば万事解決するのですか。
いいえ、そうではありません。同一のトップレベルドメインで再委任問題が再発することはあります。一度ドメインを委任したからといって、それで終わりとはいかないのです。委任先の組織が破綻したこともありました。その場合は次の策を考えなければなりませんが、次の候補がコミュニティの信頼を得て、必要な条件を満たすまでには時間がかかります。
---VeriSignとの訴訟では、GoDaddyが10万ドルの献金を申し出ました。受け取るつもりですか。
ポリシーとは関係のない質問のようですので、ICANNのスタッフに聞いてください。
---VeriSignの提訴は、その数日前にICANN理事会がWLSを承認したことと関係あるのでしょうか。
いいえ、まったく関係ありません。我々は2年にわたってWLSの検討を進めてきました。今回の承認はその流れのなかで起きたものです。
---提訴が木曜、会議が始まったのは日曜です。VeriSignはICANNの注意を引くために、あえてこの日を選んだのでは。
そうお考えになりたいならどうぞ。ただし、我々は(ローマでの)一週間を、自分たちの本分を果たすために使ったと申し上げておきましょう。提訴の影響は特にありませんでした。まぁ、言葉選びに多少の制約を感じましたが。
---国連のITUはインターネットの運営にますます関心を寄せているようです。ITUをライバルと見ますか、それとも協力者と見ますか。
政府は自分たちの経済的利益にインターネットが大きな影響力を果たしうることに気づきはじめたのでしょう。ICANNはインターネット運営のポリシーに明確な責任を負っている唯一の目に見える存在ですから、これまでも多くの注目を浴びてきました。国連のKofi Annan事務総長が設立したタスクフォースが、インターネット統治の問題に目を向け、それがICANNの責任範囲をはるかに超えた壮大なテーマであることを認識してくれることを期待しています。
私は会長として、ICANNの責任範囲が現在よりも拡大されることを露ほども願ってはいません。むしろ、インターネットの利用には公共の利益に関わる問題、つまり政府の領域といえる問題が数多く含まれていると考えています。
---ICANNから国連機関へ移管すべき分野はありますか。
我々が現在の責任範囲のなかで確実に勤めを果たしている限り、そうした分野は今のところ思い当たりません。
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