三菱電機は3月22日、世界最高性能となる高精細広色域LEDバックライト液晶モニターを開発したと発表した。
今回開発した試作品は、解像度WUXGA(水平1920ピクセル、垂直1200ピクセル)、輝度600カンデラ平方メートル、印刷・写真業界で標準的に利用されている拡張色空間AdobeRGB(1998)と同等の色再現域を同時に達成した。色域は従来製品の150%増となる。色域はNTSC比101.3%、画面サイズは23型となる。
右が今回試作したディスプレイ。従来の液晶ディスプレイ(左)と比較すると、エメラルドグリーンが再現されていることがわかる |
三菱電機ではすでに解像度WGXA(水平1280ピクセル、垂直768ピクセル)の同方式の液晶ディスプレイを開発済みだったが、今回は更に大きな画面の試作機を完成させたことになる。用途を印刷業界や写真業界での校正作業や医療などの高い色再現性と高精細画像が必要な分野としているため、広い視野角を実現するIPS方式を採用した。
IPS方式では、高精細化をすることで「開口率」が低下し、画面が暗くなるという技術的な課題があったが、輝度低下を補うためにLEDを従来製品の約2倍となる216個配置した。LEDを増やしたことで、LEDからの発熱で発生する「色ずれ」を補正するために、液晶パネル内部に「ビルトインキャリブレーションシステム」を開発した。一般的に色ずれ補正技術として使われている、画面前面にセンサーを外付けしてモニターにフィードバックする方式に比べて、リアルタイムでの色ずれ補正が可能となる。
色再現性については、近年、従来のCRTモニターで再現できる標準的な色空間であるsRGBの欠点を補うための拡張色空間の標準化が進んでいる。印刷業界や写真業界では、既存のCRTもしくは液晶モニターでは表現しきれない色を扱っており、拡張色空間の色再現性が重要な要素となっている。広色域モニターを実現する方法としては、LEDバックライトのほかに新しい発光体を用いたCRTや冷陰極蛍光管(CCFL)およびカラーフィルターの改善などの方法が模索されている。しかし、明るさに関してはこれら2つの方法では対応することが不可能で、LEDバックライトが最も柔軟な色再現性を実現できる。
入力インターフェースにはDVI-Dによるデジタル入力を2つ採用。10ビットデジタル入力をサポートしている。信号処理回路(FPGA)では、色度変化に起因する表示色の変動を補正するだけでなく、8ビットパネルにおいてRGB各色10ビット階調もサポートした。
三菱電機では今後、製品化に向けた仕様の確立や、キャリブレーションシステムの精度向上、用途開拓などを進めていく方針。現時点では、製品化は検討中の段階だが、有機ELなど自発光のディスプレイに比べ、実現の可能性は非常に高いとしている。
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