テンプスタッフ、技術者に投資でシステム案件のフルアウトソーシングを目指す

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年03月02日 17時07分

 テンプスタッフ・テクノロジーは3月2日、将来性の高い技術者に対し、起業時の投資や経営支援を行うためのファンド制度としてTTエンジニアファンド「Vコラボレーション」を開始すると発表した。キャピタルゲインをねらってのベンチャー投資ではなく、優秀な技術者の起業を支援し、協業することで同社のサービス範囲を広げることが目的だという。

テンプスタッフ・テクノロジー代表取締役 水田正道氏

 テンプスタッフ・テクノロジー代表取締役の水田正道氏は、技術者の派遣だけでは顧客ニーズにすべて応じきれない現状を説明する。「顧客から、システム設計などの上流工程から任せることはできないかとの要望を受けることも多いが、そこまでの人材をわが社では抱えていない。独自に技術者の育成を行うことも考えたが、顧客のニーズに応えられるようなプロジェクトマネージャーが育つには時間がかかるのみならず、そのような人材を育成できるだけの環境も整っていなかった」と水田氏はいう。

 そこで同社ではM&Aも考えたというが、「この業界では、会社に顧客がついているというよりも、人と技術力に顧客がついているのが常である。人材の流出などを考えるとM&Aのリスクは大きく、成功のイメージがつかめなかった」(水田氏)という。そこで資金面などの問題から起業に踏み切れない優秀な技術者そのものに投資を行い、共同で事業を行うことで「テンプスタッフ・テクノロジーがこれまで提供しきれなかったサービスにも着手することができる」と水田氏は説明した。

 投資の対象となる分野は、制御系アプリケーションの設計・開発、ネットワークサーバの設計・構築、ヘルプデスクの設計・データベース構築・運用、Webサービスの4分野で、投資先企業同士の競合を避けるために、同一地域内で1分野1社に対してのみ投資を行う。テンプスタッフ・テクノロジーでは、2005年度までに投資先企業数5社を目指すとしている。

 1案件あたりの投資上限は、初期投資1000万円と追加融資4000万円の合計で5000万円。テンプスタッフ・テクノロジーが発行済株式の66.7%以上を保有して株式の譲渡制限をつけるが、代表者も出資を行い第2株主となることが条件となる。原則として5年後にはテンプスタッフ・テクノロジー保有の株式を代表者に売却し、代表者が発行済み株式の過半数を所有する。その後もテンプスタッフ・テクノロジーでは33.4%以上の株式を保有し、協業体制は継続することになる。

 テンプスタッフ・テクノロジー取締役サポート本部長の石黒智幸氏は、投資を受ける企業のメリットについて説明する。まず、本業に集中できるよう、運転資金のサポートが受けられること。テンプスタッフ・テクノロジーからの受託案件については、一定の条件下で前金処理を受けることもできるという。また、リースやオフィスの賃貸契約などで連帯保証が必要な場合、投資上限の範囲内で債務保証が受けられる。さらに、法人の設立登記などの手続きをテンプスタッフ・テクノロジーが発起人代表として行うので業務にロスが発生しないことや、テンプスタッフ・テクノロジーから優先的に案件を受託できること、人手不足の場合は同社登録スタッフを優遇価格で派遣してもらえることなどもメリットだ。

 投資先企業には制約もある。テンプスタッフ・テクノロジーから過半数の役員を選任しなくてはならないことや、定期的に経営の報告を行うのはもちろん、経営に関わる意思決定は必ず同社の承認を受けなくてはならないこと、年間で一定額以上の案件をテンプスタッフ・テクノロジーから受託すること、第三者との取引の際は事前に通知しなくてはならないことなどだ。

 システム設計や構築などの上流行程から、実際の開発、プログラミング、テスト、運用といった下流行程まで、すべて一括して業務受託することをねらうテンプスタッフ・テクノロジー。投資先企業は、これまでのプロジェクトの実績や技術力、ノウハウを基に選別するというが、果たして優秀な技術者がこれだけの制約を設けた投資案件に魅力を感じてくれるだろうか。同ファンドの行方を見守りたい。

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