MP3音楽フォーマットというと、まず連想されるのは無制限にはびこる違法ファイル交換だろうが、そのMP3に不正コピーの防止をねらった模様替えが行われようとしている。
MP3の特許を所有し、ライセンスを供与しているThomsonとFraunhoferの2社は、人気の高いこのフォーマット向けに新しいDRM(デジタル著作権管理)用アドオンを開発中だと、Thomson幹部が現地時間2日に明らかにした。
この動きは、Apple ComputerのiTunesや、生まれ変わったNapsterのようなサービスが提供する合法的な音楽配信分野への、さらなる食い込みを狙ったもの。これらの新しいサービスはいずれもデジタルの施錠を行ったうえで音楽を販売しているが、Apple、Microsoft、RealNetworksなどが提供するコピー防止技術は各社が独自に開発したもので、互換性がほとんどない。これに対し、MP3ファイルは通常コピー防止機能なしで配信されている。
「デジタル配信は、やがて無視できないほど大きな市場になるだろう。我々は、各種の標準に基づいたDRM技術がこの市場で十分役立つと考えている。他にこれを提案しているところは見当たらない」と、Thomsonの技術マーケティング担当ディレクターRocky Caldwellは述べている。
現在、デジタル音楽配信の分野では新たな時代が幕を開けつつある。無秩序なファイル交換ネットワークに代わって、楽曲ごとに料金を支払うサービスが支持を集め始め、またCDそのものが最終的にデジタル形式のダウンロード配信に駆逐される可能性があるが、MP3へのコピー防止機能搭載はそうした流れを受けたものだ。
インターネット上での音楽配信の最初期に隆盛を誇っていたのは、紛れもなくMP3だった。12年前にMPEG(Moving Picture Experts Group)がまとめたこの標準の特許は、ドイツのThomsonとFraunhoferの2社が所有しており、両社は同フォーマットを使用するソフトウェア企業やハードウェア企業から長い間特許使用料を得てきた。
しかし、膨大な数の普通のパソコンユーザーを惹きつけたMP3の機能は、一方で大手レコード会社がこのフォーマットに疑いの眼差しを向ける原因ともなった。レコード業界は長い間、コピー防止機能付きのデジタル音楽フォーマットを求めており、そうしたフォーマットを普及させることで、ユーザーによる違法コピー作成や、Kazaaのようなネットワーク上でのファイル交換を防ごうとしてきた。
Windows Mediaやそれに関連するDRM技術を持つMicrosoftは、こうしたレコード業界のニーズに応えることで、大きな利益を上げている。同社のフォーマットはNapster、Musicmatchなどの音楽販売サイトで採用され、またCDにもバンドルされている。一方、Appleが独自に開発したFairplayというコピー防止ツールも、大手レコード会社の支持を勝ち得ているが、これは同社の運営するiTunes Music Storeの中核技術としても使われている。
ThomsonとFraunhoferが開発中のDRM技術は、MPEGグループおよびOpen Mobile Allianceが採用を進める各種のオープンな標準を基にしたものとなるとCaldwellは述べた。両社はこのコピー防止技術を、MP3フォーマットのライセンス取得者に対して無償で提供することになる。
他のDRMフォーマットと同様に、この技術も再生用ソフトウェアの開発元やチップメーカーから支持を取り付けなくてはならず、それがなければ、この技術で保護した楽曲を各種の機器で再生することはできない。両社は現在複数のチップメーカーや音楽配信サービスとの間で話し合いを進めていると、Caldwellは語った。
同氏によると、今年末までに、この保護機能付きMP3フォーマットをサポートするさまざまな再生用機器や配信サービスが出揃う見込みだという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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