IBMが元従業員2名を故意に危険物質にさらし、その結果従業員がガンを発症したとして訴えられていた裁判で、カリフォルニア州の陪審団は26日(米国時間)、全員一致で原告の訴えを退けた。
ここ数年、工場内の危険な労働条件に対する訴訟を幾度となく起こされてきたIBMをはじめとするコンピュータ業界にとって、今回の評決は大きな勝利を意味する。この裁判は、IBMがこの問題で訴えられた初めてのもので、現在係争中の数百件に及ぶ同様の裁判の結果にも影響を与える可能性があることから、今後大きな論議を呼びそうだ。
原告のAlida HernandezとJames Mooreは、IBMのハードディスク製造工場に勤務後、衰弱性のガンを発症した。2人は、同社が危険性を事前に察知していたはずであり、業務で日常的に化学物質にさらされることの危険性について従業員に警告する義務があったと主張した。IBMに対して提起され、未だ裁判が開始されていない訴訟が他にも200件以上存在する。
カリフォルニア州法では、工場労働者が訴訟を起こす場合は、労働者のための州の労災委員会を通じて提起するよう定められている。しかし今回原告は、IBMが工場の安全性について労働者を欺いたと主張し、この規定をうまく回避した。
IBMは声明の中で、「今日の評決は、我々の事業の全ての面に、従業員の健康と安全が折り込まれていることを認めたもの」と述べた。
原告側代理人でAlexander, Hawes & Audet法律事務所に勤務するRichard Alexander弁護士は、今回の裁判では、開始当初から、労働者よりも雇用者を優遇するカリフォルニア州法が大きな障害となったと語った。
Alexanderは「法廷に持ち込めなかった証拠がトラック1台分もあった」と語った。このAlexanderのコメントは、1つには、判事が公判前に従業員の死亡記録を保存したIBMのデータベースを、証拠から除外したことに言及したものだ。原告は、そのデータベースを見れば工場労働者のガン発症率が、一般の人々の発症率に比べて高いことが分かると主張した。
「現行のカリフォルニア州法の下では、労働者を職場の危険から守る術はなきに等しく、(今回の評決も)予想された通りの結果といえる」と同氏は付け加えた。
Alexanderは、この訴訟で控訴する予定はないが、その代わりに29日からニューヨークで開始予定の、IBMに対する次の有害物質訴訟に期待しているという。この裁判の原告であるCandace Curtisは、親がIBMの工場で化学物質にさらされていたことが原因で、奇形児として生まれたと主張している。同裁判には、Alexanderも弁護団の一員として参加する。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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