「家電メーカーと小売業者が共同でサプライチェーンマネジメント(SCM)にRFIDを導入した場合、約25.5億円の収益拡大効果が見込める」--アクセンチュアは2月25日、RFIDの導入効果に関するケーススタディの結果を発表した。
今回想定されたケースは、受注から納品までのスピードアップに課題があり、在庫、欠品率、倉庫内作業者の人件費に削減の余地がある、家電メーカーのある事業部と小売業者。売上規模は、家電メーカーの事業部が3000億円、小売業者が2000億円。いずれも3週間分の在庫を抱え、欠品率は売上の3%。倉庫内作業者の人件費はメーカーが年間15億円、小売業者が同10億円。メーカーから小売業者への配送は平日のみで各日1回、メーカーの工場から出荷されてから小売店舗に納入されるまでに1週間以上かかっているものと想定する。
アクセンチュア 通信・ハイテク産業本部 パートナーの堀田徹哉氏 | |
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想定ケースに家電業界を選んだ理由について、アクセンチュア 通信・ハイテク産業本部 戦略グループパートナー RFID Go To Marketチーム統括の堀田徹哉氏は、家電業界の製品サイクルが短くなっており、出荷から納入にいたるSCMにはさらなるスピードアップが必要なためと説明する。ここにRFIDが貢献するというのだ。RFIDを活用することで、製品の受入・出庫時に行う検品が自動化できるほか、ピッキングや仕分けの簡略化が可能になる。これにより、メーカーの流通倉庫や小売のセンター倉庫、小売店舗での作業工数やリードタイムが半減するという。
ただしRFIDの導入だけでは効果が限定的になると堀田氏は指摘する。RFIDをSCMシステムの一部と位置付け、基幹業務のプロセス革新を同時に行うことで、より大きな効果が得られるというのだ。
アクセンチュアの試算では、RFIDを利用すると共に、受発注・在庫管理の基幹系業務を改善することで、リードタイムを最大3日短縮できるという。倉庫における業務効率化が図れるため、倉庫内人件費が30%、メーカー・小売双方で在庫が最大30%削減できる。また、欠品率が2%改善されることで売上が2%増加するという。
金額にした場合、メーカーと小売合計で年間25.5億円の営業利益増となる。システム改修に必要な投資額は25〜45億円であることから、1〜2年で回収可能だとアクセンチュアは結論付けた。「これは十分検討に値する数値だ」(堀田氏)
一方、各企業が在庫管理の効率化を目的として個別にRFIDを導入する場合、投資額は8億円、効果は合計5.5億円となる。堀田氏は、「投資が少ない代わりに大きな効果も得られない」とした。
アクセンチュアでは、RFIDの導入を切り口に企業に対して経営改革を訴えたい考えだ。 「RFIDの導入は、経営革新という上位の視点から有効性や投資対効果を議論すべきだ。経営革新として何をやりたいのか、何をやらなくてはいけないのかをまず考え、そこにRFIDがどう利用できるかを考えていく必要がある」(堀田氏)
同社は、企業に対してRFIDの活用戦略や導入計画策定支援サービスを提供するほか、SCMやCRMシステム全体のプランニング、システム構築サービスなどを提供していくとしている。
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