サンの元No.2はモトローラへ:エド・ザンダーの新たな挑戦

By Michael Kanellos and Evan Hansen2003年12月25日 10時00分

  米Sun Microsystems元社長兼COOのEd Zanderは、粘り強い人物として有名だ。米Motorolaの新最高経営責任者(CEO)として、彼はその性格を証明するチャンスを再び手にした。

 いつかZanderは大手IT企業の経営者になると、誰もが思っていた。昇進の階段を登り続けた米Sun Microsystemsでの15年間、ニューヨーク州ブルックリン生まれのZanderは経営にも直接手を下す人物として確固とした評判を築いた。彼は、マーケティングに秀で、疲れ知らずのエネルギーを持ち、そしてあらゆるIT関連のCEO候補者リストに載る素質を備えている。

 Zanderは2002年7月にSunを離れた。SunのCEOであるScott McNealyの下で5年近くもナンバー2の座を務めたものの、Sun内部ではこれ以上昇進する見込みがなかったからだ。そして夏には、投資ファンドSilver Lake Partnersで、苦戦中のハードディスクメーカー、米Seagate Technologyの再上場を支援していた。

 ZanderはMotorola創始者の孫、Christopher Galvinの後任に就く。Galvinは9月、取締役会で後任者が決まれば辞任すると発表していた。シカゴにあるMotorola本社へ転勤するため、これからZanderは大好きなゴルフクラブを冬の間しまっておかねばならないことになる。

 Zanderは、多くのアナリストが困難だと考えている問題を引き受けた。Motorolaは、75年の歴史を持つ、経営に失敗したIT企業の象徴だ。累積赤字は60億ドル、過去3年での解雇者は5万人にのぼる。この10年間、同社は重要な急成長中の新技術で知られると共に、一方では、またとない機会を逃している企業としても有名だ。

 CNET News.comのMichael KanelloとEvan Hansenが行ったインタビューの中で、ZanderはMotorolaに関する計画、展望、Sunから学んだこと、そしてSunを辞めた理由について語った。

---Motorolaについての展望を聞かせてください。Motorolaを携帯電話機の会社だと思っている人もいれば、通信会社だと思っている人もいます。総じて、そのイメージは漠然としています。

 それが問題だと考えています。ある意味、Motorolaでは、組織が企業を定義しています。企業が組織の定義付けをしていません。

 私がMotorolaに魅力を感じる点は5つあります。まず売上高が260億ドル規模、Fortuneでは世界第59位の企業です。このような企業からトップの申し出を受ける人はほとんどいません。第2に、ワイヤレス、モバイル、通信、コンバージェンス(統合)、VoIPなど、業界が向かっている事業を全て持っている豊かな会社です。ものすごいチャンスがあります。

 3番目に、Motorolaには35億ドルの研究開発資産があり、多くのパテントがあります。4番目はグローバルなブランドです。中国、欧州、アフリカなど、世界中のどこにいても、Motorolaと言えば通じます。ブランドがあるのです。現時点では世界最高のブランドではないかもしれませんが、グローバルなブランドです。

 そして5番目として、私はMotorolaの人がとても好きなんです。彼らには勝ちたいという気持ちがあり、革新的なものを作り出してきた75年の伝統があります。そして、市場で全力を尽くすことを望んでいます。

---Motorolaが直面している大きな課題は何ですか。

 Motorolaは、迅速に、実行重視かつ結果主義で、説明責任を果たす必要があります。おっしゃるように、(自分たちの)定義付けをする必要があります。「Microsoft」と言うとき、「Xbox」のことを思い浮かべている人はいません。Microsoftはソフトウェア企業です。CiscoやIBMについても同じです。

 私は同じことをSunでも実行しました。90年代初め、Sunにはいくつかの事業会社がありました。私は1995年に、Sunをインターネットおよびインターネットコンピューティングに関する企業として定義付けました。これが、多くの成功をもたらしました。(古い体制は)91年、92年には向いていました。サービス事業やソフトウェア事業への参入を可能にしたからです。しかし、最終的にはひどい混乱状態に陥りました。世間の人は、SunSoftやSNCCなどの奇妙な名前やロゴで、Sunを定義するようになったからです。Sunは既に何の意味も持たなくなりました。

 ここで重要なのは、Motorolaという単語が何らかの意味を持つようにしなければならない、ということです。どんな意味を持たせるかは、私もまだ分かりません。通信分野の何かであることは分かっています。今、毎日Mのロゴを見ていると「モビリティ」を思い浮かべます。Motorola社員は、モバイル通信についてきちんと理解しています。しかし、Mがモビリティなのか、ワイヤレスなのか、デジタルコンバージェンスなのかは分かりません。

 ほかのビジネスもあります。政府関連は数十億ドル規模のビジネスです。世界のあらゆる政府が、防衛や警察や消防の分野でMotorolaを使っています。自動車業界も大きなビジネスです。

 そして今、携帯電話分野も驚異的なビジネスとなっています。携帯は素晴らしい。しかし、もっと早くやっておくべきでした。携帯電話機事業は、もう少しうまくやっていれば、ものすごいビジネスとなっていたはずです。

 Motorolaは半導体事業を切り離す決断をし、徐々に実行に移していきます。切り離すものもあれば、買収するものもあるでしょう。立派な企業を作るために重要なことは、得意分野を明確にすることです。

---当面の最優先事項を3つ挙げてください。

 がっかりさせるつもりはないのですが、学ぶこと、聞くこと、コミュニケーションをとることの3つです。(インタビューの)直前に、400人のバイスプレジデントと話をしましたが、彼らは私の優先事項を聞きたいとは思っていません。私はまだ信頼されていないからです。彼らは、私のスタイルや価値観などについて聞きたがっています。私はまず腰を据えて、Motorolaでの博士号を取らなければなりません。そうすれば、「我々は正しいビジネスをしているのか」が判断できるようになります。今日はじめてMotorolaの建物に入り、トイレの場所が分かったところなんです。この情報は最初に押さえておくべきですから。

---会社の評価にどのくらいの時間がかかるか、考えはありますか。

 少し前に(IBMの元CEO)Lou Gerstnerの本で読みましたが、この本は非常に良いと思いました。彼は当初、アナリストからの多くの非難を受けました。アナリストは、Louの最初の90日の計画と展望について知りたがったのです。しかしLouは最初、ひたすら地道に実行し手の届く範囲の成果に集中しました。会社を壊さない、という彼の素晴らしい考えはしばらく後になって出てきました。このようにするべきです。すぐに実行できる範囲で付加価値をつける努力をしていると、偉大な考えが生まれてきます。

 3カ月かかるか、6カ月かかるかは分かりませんが、椅子に座ってプレゼンテーションを聞き続けるつもりがないのは確かです。外に出て、顧客やパートナーと話をするつもりです。従業員にも会うつもりです。

---Chris Galvinは、ほかの経営陣との意見の相違を理由に辞任すると言いました。Galvinは音声通信に集中したいと主張したのに対し、ほかの経営陣はデータサービスを電話に統合する話をしていたと言います。この意見の相違を解決することができますか。

 解決できれば良いと思いますが、この件についてはChrisと20分ほど話をしただけで、取締役会との話し合いはしていません。Chrisは良い人物で、私がビジネスを学ぶのを助けてくれるでしょう。

---業績回復のためにまずやらねばならないこととは何ですか。Motorolaは60億ドルの赤字を抱え、5万人を解雇しています。

 今日の大半の通信系企業と違い、Motorolaのバランスシートは良好です。キャッシュフローは過去15四半期に渡りプラスですし、売上も増えています。資産流動性の問題に直面しなければならない会社ではありません。もちろん、やり方を改善し、切迫感を持つ必要はあります。

---「切迫」というのは興味深い言葉です。Motorolaには、動きの遅い企業という定評があるからです。半導体業界のルールの1つとして、Motorolaがファブ(チップ生産工場)建設を発表する頃には、景気上昇は終わっているとも言われます。携帯電話でトップの座にいたのに、フィンランドのNokiaに取って代わられました。外部のこういった評判についてはどう思われますか。

 人は間違いを犯します。誰でもです。10年から12年前のDellを見てください。(Motorolaの)政府関連のビジネスはうまく行っています。自動車業界とのビジネスも素晴らしい。携帯電話については、確かにデジタルの動向を読むのが遅すぎ、もっと早く気付くべきだったかもしれません。

 そうですね。カメラ付携帯電話は、数カ月前に出されるべきでした。そして、こういったこと全てが市場シェアに影響します。ただ、携帯電話ビジネスの良いところは、シェアが激しく上下することです。

---それは文化の問題に要約されると思いますか。

 引き続き注目すべき問題ですね。私にも分かりません。しかし切迫感はあります。そうでなければ取締役会は行動を起こさなかったはずです。Chris GalvinはMotorolaにおいてとても重要な人物でしたから、これは厳しい選択だったと言えます。

---地理的に見て、最大のチャンスはどこにありますか。

 北米以外を見ると、(GDPを)急成長させようとしている発展途上国は電柱を立てていません。Galvin家は早くから中国に上陸し、その結果、中国ではすばらしい存在感を確立しています。

---MotorolaにおけるLinuxの役割について、どうお考えですか。SunではLinuxの大ファンとしては知られていなかったようですが。

 実は、私はLinuxの大ファンでした。Linux関連の仕事を4年から5年やっても昇進しなかったので会社を離れましたが、(Linuxサーバアプライアンス企業の)Cobaltを買収しました。市場は変化していたのです。大学を卒業したばかりの人がいて、起業ラッシュがおきていました。また、コモディティ化した半導体の末路も見ました。我々がCobaltを買収したとき、幹部と取締役会に対し、基本的にこう話しました。我々はLinuxを支持しなければならないと。しかし、私はその後すぐに辞めましたし、人々は私に賛同しませんでした。

 Sunは自社でLinuxを持つべきでしたし、コミュニティを持つべきでした。LinuxはUnixであり、Unixの全開発者はSunのLinux開発者であるべきだったのです。

---それにしても、最終的にMotorolaに来た経緯は。

 人生のあらゆることと同じです。予期していたわけではありません。(所属していた)Silver Lakeや自分の生活に満足しており、こんなチャンスを求めてはいなかったのです。しかし経営者には、自分を微調整してくれる何かが付き物です。

 10月半ば頃だったと思います。リクルーターからの電話を受けたときには、「よくわかりません」と言いました。しかし、興味は持ちました。一週間後に再び電話を受け、取締役会メンバーのうちの2人、John PepperとLarry Fullerとの夕食に誘われました。10月26日だったと思います。素晴らしい夕食でした。妻に「彼らは素晴らしい人物で、MotorolaはMotorolaだ」と言いました。ほかのメンバーにはニューヨークで会いました。偶然ですが、米J.P. Morganの元CEOもいました。3時間も立て続けで話し、私は「まいったな、こんなことは何年もしていない」と思いました。

 そして11月の終わり頃、感謝祭の前に、私が最終選考に残ったと告げられました。社内からの候補者と強力な社外からの候補者がいました。私は、感謝祭の間にスタッフミーティングを開きました。妻と2人の息子、息子の妻、妹、それからもちろん最も大事な94歳の母親とです。母は目が見えません。私は母に「ママ、どうすればいいかな」と尋ねました。彼女は10年間、私に「仕事を辞めて、少し休みなさい」といい続けてきた人です。ところが母は「これはやるべきだと思う」と言ったのです。そして、家族で決をとりました。

 物事は非常に速いスピードで起きました。契約は1週間前に初めて見ました。先週の日曜日に契約が完了したばかりです。

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