車載コンピュータ用OSに関して、過去に何度か脇道に逸れてしまったことのある米Microsoftだが、今度こそはと同市場への参入を本格化させつつある。
同社はこれまで、多数の自動車メーカーに働きかけて、ナビゲーションシステム、音楽プレーヤ、各種情報機器など、さまざまな車載電子機器に、自社のWindows CEオペレーティングシステムを採用させようとしてきていた。その結果、日本のホンダやスウェーデンのVolvoをはじめとするメーカー各社との契約を獲得しているが、なかでも独BMWは同社のシステムを積極的に採用している。
Microsoftでは、ここ数カ月の間、車載OS関連の話を抑えてきたが、来年1月にラスベガスで開催されるConsumer Electronics Showで、会長のBill Gatesが基調講演を行う際には、この分野の取り組みについての発言の行うとみられている。今年7月に大学の研修者を前に行った講演で、同氏は次のような大胆な予想を行っていた。
「3年後には、自動車の約3割にはWindows CEで動くディスプレイシステムが搭載されているだろう」と同氏は述べ、さらにディスプレイ装置の付いた自動車は、そうした機器をクルマに搭載することについて意見が分かれている米国のマーケットよりも、むしろ日本やヨーロッパで多く見られるようになると付け加えた。
もっとも、アナリストらは、この3割という目標を到達するのは難しいかもしれないと述べている。
Telematics Research Groupの主任アナリスト、Phil Magneyは、「ちょっと背伸びのしすぎだ。100%のマーケットシェアを握っているというなら、話は別だが」と語っている。
Microsoftは、車載電子機器用のOSを提供している企業が多くあるなかで、その1社に過ぎず、QNX Software Systems、Wind River、そしていくつかのLinuxメーカーなどと競合関係にある。今年夏の時点で、車載電子機器市場におけるMicrosoftのシェアはおよそ10%程度だが、但し業界全体も事前の予想ほどには成長していないと、複数のアナリストが述べている。
Magneyによると、今日、自動車の約13〜14%がネットワークに接続されており、それ以外もナビゲーションやエンターテイメントのシステムを搭載しているという。
Gatesの短期目標はやや大げさなものかもしれないが、それでも同社は製品の開発で大きな進歩を遂げ、また自動車メーカーにそっぽを向かれることになった自らの思い上がった態度も改めていると、アナリストらは指摘する。
Gartnerのアナリスト、Thilo Koslowskiは、「Microsoftはこれまで、自動車メーカーや部品サプライヤーに対して、あまりにアグレッシブで、おそらく適切なやりかたでアプローチしていないのではないかいう大きな問題を抱えていた。同社はいつも、最終的には顧客を支配したがるのだ」と語っている。
同社はまた、システムのあらゆる面を自分でコントロールし、自社ブランドを前面に出したいと考えていたが、このような考え方は自動車メーカーには馴染まないものだ。「信頼できる戦力として自動車業界に受け入れられるためには、サプライヤーとしての振る舞い方を学ぶ必要がある」(Koslowski)
それでもMicrosoftは、パートナー企業と協力することがかなり上手くできるようになってきており、自動車メーカーや、さまざまな関連製品をつくる企業との関係をかなり改善していると、アナリストは指摘する。
「Microsoftは日本市場でかなり健闘しており、欧州市場へも食い込みつつある」(Magney)
過去の取り組みでは、Microsoftには車載コンピュータに対して1つのイメージしかないと感じさせるようなところがあった。しかし、同社が開発を進める新世代のデバイスは、外観と機能の点でこれまでとは異なるものになりそうだ。純粋にエンターテイメント性を追求したものもあれば、ナビゲーションを充実させたものや、電子メールやカレンダー情報にアクセスする情報機器として機能するものも健在だ。これらのシステムでは、同社が音声認識技術の研究から得た膨大な成果や、革新的な各種データアクセス手法が、積極的に採り入れられている。
Microsoftは、これらのシステムが外の世界と接続するための、さまざまな方法についても検討を進めている。メモリカード上の情報を読むデバイスもあれば、ネットワーク接続機能を内蔵しているものもあり、また携帯電話などを経由して接続するものもある。Microsoftの自動車事業部プロダクトマネジャー、Kelly Kimuraは、「近い将来、(接続に関しては)複数の方法が登場する可能性が高い」と語っている。
Microsoftは今月開催されたComdexトレードショウで、電子メールなどの個人データにアクセスでき、交通情報も入手できる音声駆動式のシステムを搭載したSUV、BMW X5のプロトタイプを展示していた。
車載電子機器の市場はまだ爆発的な成長は遂げていないが、今後着実に成長していく市場だ、とアナリストは指摘する。Magneyの予想では、5年以内には自動車の36%がワイヤレスネットワークに接続されるようになるという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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