ソフトバンクBBと日本オラクルが先月末、ユーティリティコンピューティングの提供で協業すると発表したことを受け、11月20日に「BBユーティリティコンピューティング戦略フォーラム」が開催された。ソフトバンクBB代表取締役社長の孫正義氏は、「この戦略こそ情報社会インフラを変える、革命的なものだ」と、いつものごとく威勢が良い。
事の始まりは4年前。孫氏と、その友人でもある米OracleのCEO、ラリー・エリソン氏は、孫氏の自宅で会話を交わしていた。これからはネットワークコンピューティングの時代だ、水道やガスと同じようにコンピュータが使われ、ネットワークの向こうから必要なコンピューティング処理能力が流れてくると。「シンクライアントはもっと軽くてもいいのだ。サーバをわざわざ家やオフィスに設置しなくても、ネットワークの向こうでプロが安全に管理し、必要な部分だけをユーザーが使えばいい。この考えは私もエリソン氏も一緒だった」と孫氏。だがその頃はオラクル製品もそこまで強力なものではなく、ネットワークも貧弱すぎたため、ローカルに様々なアプリケーションを抱えておくことは仕方のないことであったと孫氏は説明する。
だが今は違う、と孫氏。「今では高速なネットワークを安価で提供することが可能となった。ATM網ではなく、IP網で全国を結ぶことができるのだ。しかもオラクルからはグリッドが実現できるという10gが発表され、ソフトウェアのプラットフォームもできた。ハードとソフトがついに統合され、革命的なユーティリティコンピューティングが実現される。これが本当のネットワークコンピュータだ」(孫氏)
ソフトバンクBB代表取締役社長の孫正義氏。 | |
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孫氏によると、全国をフルIPネットワークで結んだのはソフトバンクBBが世界初。「いまでも全国統一のIPインフラを持っているのはわが社だけだろう。これが他社との決定的な差だ」と孫氏はいう。この実績でエリソン氏も同社と組む気になったのだと孫氏は説明する。
BBユーティリティコンピューティングについて孫氏は、「オンデマンドで豊富なコンテンツやアプリケーションが提供できるサービスで、課金体系も月額固定から従量課金まで多様な設定ができるもの」と語る。また「BBのIPネットワークとOracle 10gのエンタープライズグリッドを組み合わせた新しいサービスインフラストラクチャで、管理の一元化を実現し、コスト削減に結びつくものだ」と説明する。
この戦略を活用した事例として、ソフトバンクBBと日本オラクル、およびドクターネットが19日に、遠隔医用画像診断システムを構築すると発表したことに続き、20日は日本オラクルとソフトバンクのグループ企業であるエックスドライブ・ジャパンが共同で、エックスドライブ・ジャパンのオンラインストレージサービスを拡張したと発表した。オラクルのアプリケーションサーバ製品のファイル管理システムをベースとし、ファイルのバージョン管理やアクセスログ管理が可能となるネット上のデータストレージサービスを提供するという。また、今後はソフトウェアの流通もストリーミングでほしいものだけをネットワークから受け取るというユーティリティ戦略で進めるという。
「ソフトバンクは元来パソコンソフトの流通を行う企業で、現在も何万タイトルというソフトウェアを流通させている。しかし在庫を抱えなくてはいけない点がネックとなっていた。これからはソフトウェアをネットワーク上に置くことで、流通コストが削減できるのみならず、ユーザー側もソフトウェアをインストールする必要がなくなる」と孫氏。「ソフトウェアのサポートセンターにかかってくる電話のほとんどは、インストール時のトラブルだ。インストールがなくなれば、ユーザーにとってもわれわれにとっても効率的なのは明らかだ。素人がコンピュータの運用管理を行わなくてはいけない時代は終わった」(孫氏)
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