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ビル・ゲイツに聞く、「Longhornで何が変わるか」

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 これだけ大成功を収めて続けてきても、Bill Gatesはやはり、冒険家だ。

 ハイテク業界史上最も厳しい経済状況のなか、Microsoft会長兼チーフ・ソフトウェアアーキテクトのGatesは、彼が今まで最も成功してきたWindowsの売り込みに、躊躇している様子はない。

  今週、Microsoftは次期オペレーティングシステム(OS)Longhornの、開発者向けバージョンをリリースした。Gatesは、2006年発売予定のLonghornが現行のWindowsでは不可能だった新たなアプリケーションを多数生み出し、インフラ全体の機能を向上させるものになると述べている。

  しかしLonghornでは、プログラミング方法やストレージモデルが大幅に新しくなるため、開発者や管理者にとっては広範囲に及ぶトレーニングが必要となるのも事実だ。セキュリティ問題や低予算、リスクの最小化に苦しんでいる大企業にとって、このことはどう響くのだろうか。企業がハイテク予算を依然として切り詰めている状況のなか、システム変更によるメリットは、コストを上回ることができるのだろうか。

  Microsoftのソフトウェア開発者会議の初日、CNET News.comのMike Ricciutiがこうした疑問をGatesにぶつけた。

---アナリストの多くは数年前、Microsoftがリリースする単一の大型オペレーティングシステム(OS)はもうすべて出尽くした、と考えていました。Longhornの登場により、彼らの考えは誤っていたことになるのでしょうか。それとも、Microsoftの社内で発想の変換があったのでしょうか。

 Longhornは単体のOSではありません。つまり、完全にコンポーネント化されて、細かい部品に分解されたアーキテクチャになっているのです。

---しかしそうは言ってもやはりLonghornは、Windows 2000やWindows XPと同様、一つの大きなOSとしてリリースされますよね。

 その通りです。Longhornでは、多くの革新的な技術が統合されています。人々に必要とされ、物事を処理する際の標準となるような多くのアプリケーションがプラットフォームに導入される、という流れは常に存在しています。

  過去10年の間、決済用ソフトウェアのような中間層のシステムが数多く登場しました。こうしたものはかなり高価なうえ、それぞれ異なるモデルを採用しており、デバッグの方法もまちまちでした。

  しかしいまや我々は、Webサービスの世界---コンピュータ科学者らが何十年もの間夢見ていた、緩やかに組み合わされた、メッセージベースの画期的な通信方法---に移行しつつあります。そうなると、中間層のシステムを実現する上で必要なものはすべて、50ドルのOSに含まれていなければならないのです。そこで我々は(Webサービスツールの)Indigoを開発しました。IndigoはWindowsに含まれる予定なので、Windows上で決済などの処理が行えるようになります。

  この恩恵を受ける人々は、Webサービスが動いていることを知ることはないでしょう。しかしそれだけでなく、(グラフィックとプレゼンテーションの新エンジンである)Avalonのすばらしいグラフィックスを利用したり、(新ファイルシステムの)WinFSで情報を処理したりすることも可能になるわけです。プラットフォームで利用する際にコストがかからない上、デバッグの方法やパフォーマンスも一通りで扱いやすくなります。

  これは、ソフトウェアの奇跡と言えるでしょう。次から次へと良いものが手に入るのですから。我々はミドルウェアで実装されていたことをシステムに導入したことになります。Windowsにはメディア再生機能や、ブラウザといったものがすでに導入されていますし、今後もさまざまなものが導入されていくでしょう。一般的に、Microsoftは今後10年間、かつてのようにソフトウェアを改善し、生産性の向上を実現することはないだろうと思われているようですが。

---現在の景気とIT予算をめぐる状況から、LonghornはMicrosoftにとって大きな賭けだというアナリストもいます。この意見には賛成ですか。企業がLonghornを導入する際の魅力となるのは、何でしょうか。

  Microsoftでは、新たな技術革新を利用するためにはIT予算が増額されなければならないとは考えていません。Microsoftは、大量生産による低価格モデルによってソフトウェアに革新をもたらすことができます。ソフトウェアの開発を簡素化するだけでなく、IT部門が抱える管理コストやセキュリティの追加コスト、ディレクトリ管理コストも削減できるのです。

  ソフトウェアの発展により、人々は今行っていることをもっと簡単にできるようになるでしょう。物事をごく簡単にして人々を驚かせ、新しいハードウェアやアプリケーション、そしてWebサービスやワイヤレス、タブレットPCなどの新技術を取り入れるチャンスを与えていくのです。

  Longhornは、IT予算が1990年代の頃のように復活するという期待の下に構築されているわけではありません。Longhornの価格は、今のWindowsの価格と同じです。我々は毎年68億ドルの研究開発費を費やして製品を提供していますが、ユーザーはただ恩恵を受けるだけです。これは我々がWindowsでいつもやっている方法です。我々は、顧客のコストを節約させながらIT技術の進歩を実現できるのです。顧客は新世代のアプリケーションを利用することになります。

---ここ数週間に私が話をした企業の最高情報責任者(CIO)のなかには、より複雑なシステムではなく、よりシンプルなデスクトップシステムがほしいと言う人もいました。こうした顧客には、どのようにLonghornを売りこんでいくのでしょうか。Longhornは彼らにとって、どんなメリットがありますか。

 Longhornは作業の方法を統一し、ユーザーがよりパワフルに、よりシンプルに利用できるようにするというものです。ネットワークコンピュータもありましたが、惨憺たる結果に終わりました。ブラウザが搭載されていても十分なメモリがなく、すぐ時代遅れになってしまうし、ROMなどを入れなければならなかったからです。

  不安定で機能も充実せず、常に最新の状態にアップデートすることのできないネットワークコンピュータは、捨て去られました。シンクライアントが欲しいのであれば、Windows Terminal Serverを搭載したシステムを提供できます。それに、Longhornではその豊富な機能をシンクライアントに反映できるよう、ターミナルサーバ機能も含まれます。

---非常に多くのCIOが、特にサーバ分野でLinuxへの投資を続けています。LonghornはこうしたCIOの考え方を変えるのでしょうか。Microsoftでは、サーバ分野をLonghornの管理機能を売り込んでいく市場の1つと考えているのですか。

 もちろんです。サーバ分野はさらに進出していかねばならない巨大な分野だと考えていますし、どのOSも管理機能をもっと改善しなくてはならないと思っています。我々はWindowsを大きく進歩させました。最近のリリースでどこまで達成できているかを見れば、人々は度肝を抜かれることでしょう。サーバ用Linuxに関して言えば、確かにUnixのシェアを奪っています。サーバで成長しているOSは、WindowsとLinuxの2つしかありません。

  企業の部門レベルではWindowsのシェアが圧倒的で、今では特にWindows 2003 Serverが使われています。一方企業の中核レベルでは、WindowsとUnixが常に競合しています。我々のサーバ製品の規模が大きくなるにしたがって、こうした分野でのシェアを伸ばしつつあります。Linuxは、我々が現在競合しているUnixと言えるでしょう。ですから、今後リリースされるWindowsはすべて、人々が解決したい問題に対して効果的でなければなりません。

---Microsoftの顧客にとって、セキュリティは依然として大きな問題です。先週には、セキュリティへの懸念からMicrosoftと長期契約を結びたがらない企業もある、という内容のレポートがありました。この考え方をどう変えるつもりですか。

 まず、そのレポートを誤って解釈されているようですね。我々は顧客のセキュリティ問題に相当な労力を注いでいますし、今回はこうした企業契約を強く売り込んでいるわけでもありません。なぜなら我々は、企業のファイアウォールやシステムのアップデートに対して、非常に真剣に取り組んでいるからです。ウイルスの蔓延を防ぐには、ソフトウェアのアップデートとファイアウォールによる防御が重要なポイントとなります。アップデートの数をごく少なくして、自動的に実行されるようにするため、我々がすべきことは数多くあります。

  ファイアウォールに関しては、システムをどのようにして管理しやすく、性能のよいものにしていくかについて、すでにお話ししているかと思います。Microsoftのシステムは広く普及しており、我々はウイルスが蔓延するのを防がねばなりません。そのためには、ユーザーのシステムを必ず最新の状態にした上で、ファイアウォールを設置する必要があります。顧客がこうしたセキュリティ問題に悩まされないようにするために、今後数カ月の間に我々が顧客に対して行うべき事ははっきりしています。

---ある意味で、開発者たちはLonghornを今日初めて見たことになります。IT開発者がLonghornに慣れ、日常業務で利用するようになる、そしてより重要なこととして、Longhornを今後のプロジェクトの一環として計画に組み込むまでに、どれくらいの準備期間が必要でしょうか。

 Longhornがどういうものが分かるにつれて、人々が今やっていることにかなりの影響がでてくるでしょう。例えば、Indigoが普及するにつれて、XML(拡張マークアップ言語)によるWebサービスがプラットフォームに組み込まれるようになるでしょう。アドレス帳や予定表、文書、メモなどの情報形式が共通になり、構造化されるのを目の当たりにすれば、Webサービスへの移行に弾みがつくはずです。

  我が社のOfficeグループは、Longhorn向けのOfficeバージョンを開発予定で、その計画にOfficeリソースのほぼ全てを投入しています。つまり、Windowsで最もよく利用されるアプリケーションがサポートすることになるわけです。

---旧式のアプリケーションのサポートはどうするつもりですか。古いアプリケーションをLonghornに移行させるのは簡単なのでしょうか。

 今日我々は、20年前のアプリケーションとの互換性も重要であることを示すため、Longhorn上で動く表計算ソフト「VisiCalc」のデモを行いました。Electric PencilやdBase、初期のLotus 1-2-3を稼動することも可能です。我々は互換性のあるOSを構築してきました。それはMicrosoftの仕事の1つであり、そのためにたくさんのリソースを費やしてきたのです。新たな機能を提供する場合でも、既存のアプリケーションも動くようにしています。ただし最大のメリットが得られるのは、Longhornのために作られた新アプリケーションを利用した場合です。

  しかし情報を検索したり、機器間で情報を複製するといった場合は、既存アプリケーションを利用してもメリットがあります。我々は、Longhornではごくわずかな労力でこんなことができる、もっと労力を払えばさらにこんなことまでできる、というのを示すところです。この取り組みは、たった今始まったばかりなのです。

---Longhornの新プログラミングインターフェース、WinFXの見た目は、Windowsの熟練プログラマにもなじみやすいものになるのでしょうか?

 マネージド・コードを使った経験のある人ならば、WinFXではAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)が、非常に一貫性のある形になっているのが分かるでしょう。.Netフレームワークを見たことがある人なら、これが.Netフレームワークの進化形であることが分かるはずです。ここ4年の間に、マネージド・コードを使うように方針が転換されました。現在ではプログラムの処理の半分が、マネージド・コードで行われていると言ってもいいかもしれません。したがってWinFXは、それをさらに押し進めることになります。

  私は(27日の基調演説の)最後のスライドで、5つのアクションをリストアップしました。(1)基礎---セキュリティやアップデート、マネージド・コードといった事柄全て、(2)マネージド・コードの利用、(3)Webサービスの利用、(4)リッチクライアントの活用、そして(5)Longhornの最終的な形を決めるWindowsコミュニティと関わることです。

---Xboxや組み込みシステム、タブレットPCなど、Microsoftの他のシステムや計画がLonghornのシナリオにどう関わってくるのか、その辺を少しお話し願えますか。

  タブレットPCは1年前に発売され、出荷台数は40万を超えています。タブレット用Windowsの新しいアップデートは、来年中に行われる予定です。その後、Longhornに合わせて大型アップデートがリリースされます。今我々は、手書き入力や音声入力を統合する方法を検討中です。今日のデモでも、ファイルに、ちょうど付箋のようにメモを手書きで入力するのをご覧に入れました。手書き入力のための認識技術やインフラは、Longhornで劇的に進化します。

  今度の中間リリースでも手書き入力の一部は導入されますが、本格的なリリースはLonghornになります。Microsoftでは全グループを挙げてLonghorn関連のリリースについて議論しているところです。タブレットPCやMedia Centerのように、今後Longhornリリースまでの間に製品を出すグループもいくつかあります。しかしほとんどのグループではすでにLonghorn前のリリースは終わっており、現在はLonghornに合わせたリリースに専念しています。

---サーバ版のLonghornについてはどうですか。開発者たちは、Longhornのサーババージョンがなくてもシステム構築を始めることができるのでしょうか。

  サーバとクライアントのスケジュールは異なります。Longhornの開発がさらに進めば、スケジュールに関してよりはっきりしたことが言えると思います。今日はスケジュールについて話すのが目的ではありません。今日は(Longhornクライアントの)ベータ版を来年リリースする話をして、開発者向けのプレビューを行ったのです。しかし我々は、Longhornが技術的に完成するまでかなり時間がかかるという認識を非常にはっきりと持っています。

  サーバ版の中間リリースはどうなるか、といったスケジュールはまもなく明らかになるでしょう。また、そのときまでに我々が改善しなければならないこともいくつかあります。その1つは、すでにお話しした通り、セキュリティに重点をおいたリリースです。その機能の一部についてもすでに明らかにしています。我々はこうした重要な課題を解決した上で、最終的にLonghornが全ての集大成となることを説明していくつもりです。

---それで、開発者はLonghornのサーババージョンがなくてもプログラムの構築を始められるのですか。

  その通りです。サーバでWinFSやIndigoが利用できるようになったときに初めてメリットが生まれますが、我々はフルスピードでLonghorn用アプリケーションの開発を進めていますし、今回のカンファレンス出席者の中にも、すぐにアプリケーション開発を始める人がいるはずです。

--- WinFSの統一ストレージという概念は、昔のCairoプロジェクトの頃から耳にしています。なぜ今頃WinFSなのでしょうか。何が変わったのですか。

  私はWinFSに大いに期待しています。データベース技術が異種データを扱えるレベルにまで成熟するのに、しばらく時間がかかりました。データベースにXMLの革命がおきたのです。SQL ServerのYukonバージョンの開発中に、「おっ!この技術の一部をファイルシステムに導入できるぞ」と思ったのがきっかけでした。おそらく、マシンの性能と、人々が持つ情報の規模によって生まれたものだと思います。

  ユーザーが学ぶコマンドの数、つまりインターフェースの数は非常に多くなっています。もし、新着情報の通知といった機能が全て1つにまとまるのなら、人々はそちらを望むでしょう。新しい音楽情報や、新しい家族写真、住所変更のお知らせなどを知りたいと思ったユーザーは、それぞれの機能ごとに異なる情報の箱を構築しているわけです。彼らは新着情報の通知も欲しいし、データ制御もしたいし、セキュリティも、データの複製も、詳細検索も欲しいのです。彼らは情報ごとにこうしたたくさんの機能を求めています。

  そこで我々は、「分かりました、そうした機能を1カ所で使えるようにしましょう」と言っているのです。こうしたことが実現するのは、ハードウェアの進化と、データベースの進化、そしてこうした情報の統合がユーザーにもたらすメリットの重要性によるものです。ユーザーが学習しなければならない概念が山ほどあるのに、彼らはそれぞれの情報箱について使いこなせていません。WinFSで実現されるデータ共有が、まだなされていないからです。

---Longhornでは、初期の.Net My Servicesにあった、個人情報管理やシームレスコンピューティングといったコンセプトが復活するかのように聞こえますが、実際そうなのでしょうか。

  個人情報を組織化するという意味で言えば、その通りです。でもそれは、ユーザーの管理下で行われ、クライアント上に保存されます。この点が大きな違いです。HailStorm(中止された.Net My Servicesプロジェクトのコード名)では、こうした情報を扱えるだけのクエリー検索機能がなく、コンテンツのインデックス機能もありませんでした。

  当時でも、データ複製という概念はありました。でもそれは、OSの変更が(同時に)なかったために、サーバベースのデータ複製になっていました。HailStormは、我が社の1990年代の全プロジェクトのなかで、行き詰まりを迎えたものの1つと言えると思います。原因は、サーバ上に情報を保存することに対する人々の反発と、詳細な検索機能がなかったことです。

---ユーザーが自分の情報を管理する、というコンセプトの一部は復活するのですね。

  もちろんです。アドレス帳や予定表が他のアプリケーションでも利用できるべきだ、という考え方は、Longhornの重要な要素になっていると思います。これらをプラットフォームに移行させることで、アプリケーションごとに別々のアドレス帳を作るのではなく、どのアプリケーションでも電話番号などの情報にアクセスしたり、アドレス帳にメモしたりできるようにしていますから。

---記者やアナリストのなかには、インターネットコンピューティングの将来に関して、MicrosoftをIBMに対抗する存在と位置づける向きもあります。両社はWebサービスなどの分野で協力し合っていますが、両社のビジョンは異なっているのでしょうか。

  両社のビジョンの共通点は、短い時間ではとても話しきれないほど数多くあります。MicrosoftやIBMの誰と話をするかによって、それぞれ話の重点が異なってくることはあるでしょう。しかし我々はソフトウェア会社であり、ソフトウェアの魔法によって複雑さが軽減され、新たな開発プラットフォームが誕生し、セキュリティ問題が解決すると信じています。もちろん、IBMもソフトウェアを開発しています。大型顧客のほとんどでは、.Netと(IBMの)WebSphereを両方使用しています。

  IBMは非常に長期間にわたり、主要分野で我が社の主たる競合会社であったと思います。業界にとって重要なのは、我々2社がWebサービスに関して共通のビジョンを持っていることなのです。(IBMのソフトウェア部門担当幹部の)Steve Millと私は、約2カ月前ニューヨークで、Webサービスのデモンストレーションを行いました。これは電子商取引を実現させ、インターネットに接続しているソフトウェア同士が、コンピュータ言語やOS、ハードウェアに関係なく通信するのを可能にするインフラです。

  IBMとMicrosoftは、Webサービスに両社の最高の人材を充てており、それが業界に対する大きな貢献となっています。Webサービスは、人々が何十年もの間夢見てきたことです。我々は非常に明確なロードマップを持っており、規格の講習会なども開いています。ですからこれは両社の共同作業なのです。IBMには現在も、メインフレームや大型システムなどによる収入があります。

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