米Xeroxのパロアルト研究所(PARC)は、インクジェットの印刷技術を使って、安価で柔軟な半導体シートを作る方法を開発した。この技法は、ディスプレイ用のフラットパネル製造を根本から変えることになるかもしれない。
伝説に名高い同研究所は、プラスチックシート状に小型トランジスタを印刷することで、従来のシリコン型半導体の機能を再現する試みを続けている、世界でも有数の研究機関である。PARCの研究者は28日(米国時間)、柔軟なプラスチックシートに付着する電気を伝えるインクを使って、シリコン型の半導体と同等の機能を果たす、折り曲げ可能な半導体をつくり出すことに成功したと発表した。
この印刷可能な新型半導体は、シリコン型半導体ほど効率的には動作しないものの、液晶ディスプレイや電子ペーパーなどの近未来型ディスプレイの核として動作する分には十分な性能を持つと、PARCの研究者たちは説明している。
建設に膨大なコストがかかるクリーンルームのような生産設備の代わりに、この新製品なら、新聞のプレス機のような印刷設備でつくれてしまう。つまりハイテクプリンタから半導体シートが印刷されて、次々に吐き出されてくるような感じになると、科学者たちは推測する。
「防塵服を着た作業員が、クリーンルームでばらばらのシリコンウェハーを持ち歩いたり、ロボットアームがウェハーの束を運ぶ代わりに、35mmカメラのフィルムのような、1m幅で100フィートの長さのロールが持ち運ばれる姿を想像してほしい」と、PARCで同プロジェクトに従事する研究者、Raj Apteは語った。「フィルムがカセット内にあることを考えれば、クリーンルームといえどもダーティルームといえるかもしれない」(Apte)
電気を通すプラスチックを開発しようとする取り組みは、半導体やディスプレイ製造に関して、従来の高コストな手法に代わる別のやり方を探る科学者たちにより、長年にわたって続けられてきている。米Lucent Technologiesのベル研究所や蘭Philips Semiconductorsを含む、他のいくつかの研究機関でも、同様の試みを行っている。
従来のシリコンチップが高速化・小型化するにつれ、生産設備のほうはますます高価になりつつある。液晶ディスプレイの例でいえば、半導体と貼り合わせる巨大なガラスシートの生産は、最新型の生産設備のコストを大幅に押し上げている。たとえば、 NECとSVAが共同でつくった、中国の液晶パネル生産施設では、工場の建設に7億ドルものコストがかかっている。
対照的に、新しいインクジェット型の半導体印刷プロセスでは、これらの生産技術はかなり合理化することが可能で、とりわけ最も効率的で高性能なチップを必要としないディスプレイの製造技術には、このことが当てはまる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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