ソニー、2万人リストラへ:構造改革推進に向け新たな経営方針を発表

永井美智子(CNET Japan編集部)2003年10月28日 21時18分

 ソニーは10月28日、経営方針説明会を開催し、新たな経営方針「トランスフォーメーション60」を発表した。事業改革の柱として固定費の削減と新市場の創造を掲げ、2006年度に連結営業利益率10%を目指す。会場では子会社のソニー銀行・ソニー生命保険・ソニー損害保険の3社を傘下に置く中間金融持株会社を設立することも発表された。

 会場で説明に立ったソニー取締役 代表執行役 会長 兼 グループCEOの出井伸之氏は「利益が縮小傾向にあることはいなめないが、決して経営が大ピンチだからあわてて構造改革をしているわけではない。第1次構造改革は1999年から行っており、世界的なプレーヤーなら少なくとも営業利益率が10%はなくてはいけない、ということで構造改革を行っている」と今回の経営方針の趣旨を説明した。ソニーが22日に発表した2003年度第2四半期の決算は前年同期に比べ営業利益が34.3%減と落ち込んでおり、通期の見通しも下方修正している。

 ソニーはまず、主力のエレクトロニクス事業を中心に固定費を3300億円削減する。

ソニー取締役 代表執行役 会長 兼 グループCEOの出井伸之氏
全世界のグループ人員を2006年度までに2万人(うち国内は7000人)減らすほか、製造・物流・サービス拠点を再編・集約し、2005年度末までに世界全体で現在の200拠点から3割削減する。特に現在液晶ディスプレイ(LCD)などに置き換わっているブラウン管ディスプレイ(CRT)の生産ラインを集約させ、2006年度には現在の17ラインから5ラインにする。国内のCRT生産ラインは現在3ラインあるが、これは2006年までになくなる予定だ。

 エレクトロニクス事業は中核製品に資源を集中させる。フラットテレビやホームサーバ、PC、デジタルカメラなど、現在エレクトロニクス事業の売上の約半分を占める製品を戦略カテゴリーと位置づけ、資源を集中させる。これにより2006年には戦略カテゴリーの売上高を全体の7割強にまで高めるとしている。

 同時に間接部門や非生産材の調達部門についてもリストラを行う。間接部門は2004年度中に欧州と米国において拠点を集約し、効率性を向上させる。間接部門の人員削減数はグループ全体の1万1000人に当たる予定だ。非生産材の調達部門に関しては、調達窓口を集約させ、集中購買の仕組みを構築する。部品品種を現在の84万点から2005年度までに10万点に削減するほか、サプライヤーを現在の4700社から1000社に絞り込む。これにより非生産材関連の固定費を2002年度から2006年度までに12%削減するという。

久夛良木氏が新たな半導体カンパニーのプレジデントに

ソニー取締役 副社長兼ソニー・コンピュータエンタテイメント代表取締役社長兼CEOの久夛良木健氏

 ソニーが掲げたもう1つの柱が、「融合」をキーワードにした新市場の創造だ。ソニーのエレクトロニクス技術と子会社のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の技術を融合させた新たな商品の開発に力を入れる。「これは本当の意味でソニーグループの総力戦となる」(ソニー取締役 副社長兼ソニー・コンピュータエンタテイメント代表取締役社長兼CEOの久夛良木健氏)

 ソニーでは、次世代技術の牽引役はデジタル家電になると見ており、その核となる半導体の開発に注力する方針だ。今まで分かれていたソニーとSCEの半導体部門を統合してセミコンダクタソリューションズネットワークカンパニー(SSNC)を設立し、アーキテクチャの開発からシステムLSIの製造までをグループの共通機能として集約する。なお、NCプレジデントには久夛良木氏が就任する予定となっている。

 金融分野ではグループ内の金融事業の強化を目的に、ソニー銀行・ソニー生命・ソニー損保の3社を傘下に置く中間金融持株会社を設立する。関係官庁からの許認可取得が必要となるが、2004年4月の設立を予定している。さらに持株会社は、2006年4月をめどに株式公開を目指すという。これにより金融事業が自ら成長資金を調達する仕組みを作るとともに、金融事業の価値を顕在化させる狙いだ。なお、子会社3社の業績は好調で、出井氏によると「2006年までに完全に黒字化するだろう」とのことだ。また、会場では液晶パネルの生産について、サムスン電子と合弁会社を設立する予定であることも正式に発表された(詳細記事へ)。

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