S・バルマー:「Linuxのほうが品質で上回るというのは理屈に合わない」

 フロリダ州オーランド発-- 米Microsoft CEO(最高経営責任者)のSteve Ballmerは21日(米国時間)、ソフトウェアを信頼できるものにするための自社での取り組みを弁護し、またオープンソース陣営の言い分に対して反論した。

 市場調査会社米Gartner主催の業界向けカンファレンスで講演したBallmerは、顧客に対して、システムにパッチを当てるための、改善策の導入が遅れていることを認めたが、それでもMicrosoftでは、現在大きな前進が見られると語った。

 「もっと努力しなければいけないことは分かっている。だが、ハッカーの立場ならセキュリティホールを1つ見つけるだけでいいけれど、我々は何人ものハッカーを相手にしなくてはならないという非常に厳しい立場にある」と、Ballmerは述べた。

 「我々はパッチの作成に多くのエネルギーを注いでいるが、対応がやや遅かったかもしれない。それでも、対応の改善に努めてきている」(Ballmer)

 Ballmerはまた、ソフトウェアの品質およびセキュリティ面の安全性を向上させることは、Microsoftが顧客からの信頼を維持する上で非常に重要だと述べた。同社では現在、自社ソフトのセキュリティ改善を目指す「Trustworthy Computing」という、ほぼ2年越しの計画を進めているところだ。

 Microsoftを非難する者からは、この計画の効力が現れるのが遅いという声が上がっている。そして、これは些細な問題ではないと、一部の研究者は指摘している。彼らは、Microsoftのソフトウェア、特にWindows OSへの過度の依存は危険だと考えている。

 「我々は、自らが最優先事項に定めたことに関しては、滅多に失敗したことがない。そして、このセキュリティの問題は、間違いなく今我々が最優先事項として取り組んでいるものだ」とBallmerはいう。「これは難しい問題で、何の準備もなくすぐにできてしまう類のものではない。我々は、社内でも最も優秀な人材を貼り付かせて、この問題を解決しようとしている。もし、セキュリティの問題に関して、顧客から不満が出れば、それが業界全体の進歩を遅らせてしまう可能性がある。同時に、この問題をうまく解決し、それで顧客の満足を勝ち得れば、我々は競合他社との差別化を果たせる。そういった意味でも、このセキュリティの問題は、我々にとって将来を左右する重要な事柄である」(Ballmer)

 Ballmerによると、同社ではWindowsオペレーティングシステムや関連アプリケーションにパッチを当てるメカニズムを、もっと予想しやすいものにする必要があり、そのために「1回の簡単なインストールで完了できるようにし、またロールバック機能や管理用のツールも付加」しなくてはならないという。Microsoftは今月、自社製品へ新しいセキュリティ技術を追加し、またパッチをリリースするプロセスを改善することに力を入れていくと発表していた。

 Ballmerはさらに、営利企業の開発したソフトウェアの品質と、オープンソースモデルで開発されたソフトの品質を比べ、「どんな理由があって、世界中のさまざまな人間が開発に係わったコードのほうが、プロの開発者のつくったものよりも品質が良いといえるのか?何故そうしたやり方で開発されたものが、よくコントロールの行き届いたやり方で開発されたものよりも、優れているというのか?私にはわからない」と語った。

 「Linuxにはロードマップもないし、誰も後ろから支えてくれたりしない。ロードマップを提示し、顧客に法的な保護を与えられるということこそ、営利企業の持つアドバンテージだと思う。営利企業が相手なら、顧客は困った時に誰と話をすればいいかで迷わない。ところが、オープンソースの世界ではこうはいかない。いまのところ、我々のやり方はとてもうまく機能していると思う」(Ballmer)

 「Linux版のOfficeを出す計画があるか」との質問に、Ballmerはノーと答えたが、ただし「絶対にあり得ないとは言えない。それでも、今のところ計画はないし、これを興味深い機会だと捉えてもいない」と述べた。

 Ballmerによると、クライアントシステム向けLinuxの市場は、いまだに小さなものだという。

 「それは、Macのマーケットよりも小さい。Macは、Microsoftにとって規模こそ小さいものの面白いビジネスだ。それでも、ビジネスとして小さなものであることは変わりない。Macほど人気のない新しいプラットフォームをサポートするチャンスがあると言われても、それが良い出発点になるとは思えない」(Ballmer)

 Ballmerによると、「ユーザーは、Linuxで動作するソフトウェアに対価を支払うことに慣れていない。これは宗教の問題ではなく、ビジネスだ。我々は、顧客が何を必要としており、何に対してなら対価を支払うかを理解する必要がある」という。

 Ballmerはさらに、Windowsよりもオープンソースコードの方が安全だとの意見に異論を唱えた。

 「実際にデータをあつめてみれば、そんな事実はないことがわかる。たとえば、Windows 2000がリリースされたときは、発売後150日間で、重要な脆弱性が17カ所見つかった。Windows Server 2003では、それが4カ所だった。ところが、Red Hat(Linux)6では、その5倍から10倍も多くの脆弱性が見つかっている」(Ballmer)。

 「オープンソースソフトにも脆弱性は存在する。我々が夜寝ている間にも、中国にいる誰か(ほかの開発者)が、脆弱性を見つけ次第それにパッチを当てるといった話もあるが、そんなプロセスからは安心して使えるものは出てこない。それに比べて、我々には維持し続けられるレベルの品質を生み出すプロセスがある。これは、決してLinuxの悪口ではない。ただ、Linuxのほうが品質で上回ると考えるのは、理屈に合わないといっているのだ」(Ballmer)

 

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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