全米レコード協会(RIAA)は、不正なファイル交換利用者を相手取った訴訟で、すでに数十件の和解が成立したと発表したが、同協会のやり方に批判的な人権団体が法的な異議申し立てを行ったことで、新たな難問に直面することになった。
アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)は29日(米国時間)、著作権侵害を問われた容疑者の身元を明らかにするために、何千通もの召喚状を違法に使用したとして、RIAAを非難する文書を裁判所に提出したと発表した。これにより、ピア・ツー・ピア(PtoP)ファイル交換ネットワークを使った著作権侵害者を追及しているRIAAの活動に、今後支障が出る可能性が生じてきた。
ACLUは、RIAAがデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて送付した召喚状は、正当な法の手続きに違反し、インターネットユーザーの匿名性を保護する憲法上の権利を侵害するものだと主張している。
RIAAは、召喚状の送付に続き、今月はじめには数百件の訴訟を起こしている。多くの訴訟が起されたことが和解を促し、係争中の裁判261件のうち、これまでに52件で和解が成立した(RIAAへの支払金額については明らかにされていない)。また、訴訟に至らなかったケースでも、12件の和解が成立している。
ACLUは、26日に異議申立て書を提出したことにより RIAAに反対する非営利団体の仲間入りを果たした。先週、米国図書館協会(ALA)など5つの図書館協会は、現在カリフォルニア州の連邦控訴裁判所で係争中の裁判で、PtoPネットワークの閉鎖を求めているRIAAを批判した。
レコード会社がDMCAを根拠に、PtoPネットワークを使った著作権侵害の容疑が掛けられている、ボストン大学のユーザーの身元を明らかにしようとしていることについて、ACLUはボストンの連邦裁判所に対し、これを却下するよう求めた。
ACLUは、裁判所に提出した文書の中で、「手続き上の保護の欠如は重大な結果を招く」と指摘している。「個人の憲法上の権利が奪われるだけでなく、企業あるいは個人が批判者に対し報復する目的で、批判者の身元を知るために著作権を主張するという行為を阻止できなくなる」(ACLU)。
ACLUと共に命令申請を提出したボストンのDavid Plotkin弁護士は、電子メールの中で、「DMCAは、問題の著作物がインターネットサービスプロバイダ(ISP)のシステム内に保存されている場合にのみ召喚状の提出を認めており、ボストン大学やほとんど全ての他のISPの場合のように、著作物がユーザーのパソコンに保存されている場合には、これを認めていない」と語った。
さらにPlotkinは、(RIAAが提出した)召喚状には手続き上の不備があり、正当な法の手続きに違反している上、米国憲法で保障されている表現の自由にも反すると主張した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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