NECは9月29日、高知医科大学と共同でヒトの免疫反応を予測するプログラムを開発すると発表した。これにより、低コストで簡単に製造でき、副作用がほとんどない医薬品の開発が短期間で行えるようになるという。
NECが高知医大と共同で開発するのは、免疫系調整ペプチド医薬品と呼ばれるワクチンを生成するためのプログラム。ヒトの白血球の型であるHLA(ヒト白血球抗原)分子に結合する、ペプチドと呼ばれるたんぱく質を予測、特定する。ペプチドはウイルスなどにより体内に生成されるもので、このペプチドを特定することで がん細胞やウイルスのほか、アレルギーやアトピーなどの疾患に対して有効なワクチンが開発できるという。
今回NECが今回開発するプログラムは予測的中率が従来のものに比べて大幅に高く、治療目的に合った候補が高い確率で提示できる点が特徴だ。NECソリューション開発研究本部 市場開発推進本部 バイオIT推進室エキスパートで薬学博士でもある宮川知也氏によると、現在一般に公開されている予測プログラムの的中率は20〜30%程度だが、今回開発するプログラムを利用した場合、的中率は70〜80%になるという。
NEC市場開発推進本部 バイオIT事業推進室長の野村豊氏 | |
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NECは能動学習法という学習プログラムを取り入れることで的中率を高めている。能動学習法とは、実験条件と結果の間のルールをコンピュータが学習し、そのルールを次の実験サンプルの分析に応用する技術で、NECが2001年に開発した。さらに複数のコンピュータがそれぞれ異なる実験結果を元にルールを作成し、予測結果が複数に分かれるものだけを実験にかける「選択的サンプリング」という手法を採用することで、実験の効率化も図っているという。
NECでは50台のコンピュータを並列につないで実験結果の分析を行っており、5000億以上のペプチド候補の中から、1年半から2年で数十候補にまで絞れるという。なお、通常1回の実験に1カ月、150〜300万円の費用がかかるとNECでは説明している。
NECは2000年にバイオIT事業推進室を設立し、ライフサイエンス関連事業に参入した。NEC市場開発推進本部 バイオIT事業推進室長の野村豊氏によると、現在バイオ関連事業の売上高は数十億円程度という。現在の主な収益源は遺伝子やタンパク質などの解析に利用するストレージ等のシステム納入によるところがほとんどだが、将来的にはバイオインフォマティクスと呼ばれる受託解析サービスやシミュレーションなどの研究支援ソリューションを提供していきたいとしている。
NECは今回の開発成果に基づく予測情報を製薬会社に提供したり、医薬品売上高からのロイヤリティを受け取ることで、5年後に約10億円の売上を見込んでいる。ただし収益の大部分は医薬品のロイヤリティによるため、今回の開発成果に基づいた医薬品の開発・販売時期によって売上高は変わってくるとした。
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