「Tivoのように赤字は垂れ流さない」---D&Mの新戦略

永井美智子(CNET Japan編集部)2003年09月16日 18時31分

 ディーアンドエムホールディングス(D&M)は9月16日、事業戦略説明会を開催し、ポータブルMP3プレーヤーのRio、パーソナルビデオレコーダ(PVR)のReplayTVに関する今後の取り組みについて紹介した。

 D&Mは2002年5月に設立されたデノンと日本マランツの持株会社で、リップルウッドが主要株主となっている。今年3月に経営破綻した米SONICblueの事業を4月に3620万ドルで買収した。また、5月にはオーディオメーカーのMcIntosh Laboratoryを買収している。

 D&Mが現在注力しているのはネットワーク・ホームエンタテインメントという考え方だ。これはAV機器やパソコンなどをネットワークでつなぎ、家庭内のどこからでも様々な形でデジタルコンテンツが見られるようにするもの。その中心になるのがRio、ReplayTV、家庭用音楽配信サーバのEscientの3製品である。

 その中でも現在市場に最も普及しているのがポータブルMP3プレーヤーのRioだ。Rioはフラッシュメモリ搭載型とハードディスクレコーダ型の2種類があるが、米国におけるフラッシュメモリ搭載型の市場シェアは約25%と第1位となっている(2003年7月現在)。フラッシュメモリ搭載型とハードディスクレコーダ型を合わせたポータブルMP3プレーヤー全体でも、MacintoshのiPodに続いて第2位のシェアを誇っているという。

 日本国内においても、Rioは市場で大きなシェアを占めている。フラッシュメモリ搭載型は2003年6月から8月において国内トップシェアとなり、ポータブルMP3プレーヤー全体でもiPod、松下電器のMP3再生機能付CDプレーヤーに続いて第3位の地位を占めているという。D&Mでは10月上旬にもハードディスク型の新製品を投入し、MP3プレーヤー全体でもシェア第1位を狙う方針だ。なお、Rioの販売はD&Mの米国子会社Digital Networks North America(DNNA)のRio事業担当部門であるRio Japanが担当している。

Rioの新製品を手に戦略を語るディーアンドエムホールディングス取締役兼執行役のMichael Seedman氏

 一方、PVR製品のReplayTVと家庭用音楽配信サーバのEscientは、米国における販売が中心となる。ReplayTVの日本での販売については「日本にも必ず導入する」(D&M取締役会長兼代表執行役のMerle Gilmore氏)と断言したものの、具体的な日程などは未定という。「4月にSONICblueの買収を行ったばかりで、現在は世界戦略の定義を行っている段階だ」(Gilmore氏)

 D&Mではネットワーク・ホームエンタテインメントを先導するのは米国だと考えているようだ。「ホームシアターは米国から5年遅れで日本に入ってきた。現在米国では(家庭内のあらゆる機器をネットワークでつなぐ)ホームオートメーションという概念が出てきている。これが日本の家庭に普及するのもおそらく5年くらい先のことになるだろう」(D&Mチーフストラテジーオフィサーの本村直之氏)

 米国ではPVR市場をReplayTVとTivoが分け合っており、現在はTivoのほうが優勢だ。しかし本村氏は「Tivoは最初に赤字を出してもハードウェアを売り、それを月々のサービスに対する課金で回収していくという方針をとっている。以前はReplayTVも同じ戦略を取っていたが、これでは初期負担が重く、それによってSONICblueは破綻した」と指摘し、Tivoの戦略に疑問を唱える。ReplayTVはこの教訓を元に戦略を変更し、ハードウェアに初期3年間のサービス料を含めた価格でユーザーに提供する方法にした。これにより手元に資金を残すことができ、「健全な財務状態で積極的なセールスプロモーションが展開できる」(本村氏)という。現在、ReplayTVは店頭で550ドルで売られており、3年間は追加料金なして利用できる。一方Tivoは店頭価格が250ドルで、その後月々12.95ドルの利用料金がかかる。

 現在米国でPVRを導入している世帯は100万世帯ほどで、全体の1%にも満たないが、「5年後にはPVRが家庭にない家はなくなるだろう」とD&M取締役兼執行役のMichael Seedman氏は自信を見せた。

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