カナダのトロント大学で教鞭をとる日本人研究者が、時にはローテクな方法がハイテク技術の突破口を開く鍵となることに気付いた。
飯塚啓吾教授は、ごく普通のセロファンラップで、ノートパソコンのスクリーンを3次元ディスプレイに変えてしまえることを発見した。
半波長板と呼ばれる、偏光方向を変える板を探していた飯塚教授は、ついに、あるブランドのギフト用セロファンラップが、ハイテク技術に勝っていることに気づいた。「あらゆる素材に対して、半波長板の機能を持つかどうかを試してきたが、このセロファンが私が見つけたなかではベストのものだ。しかも、皮肉なことに、これが最も安い」(飯塚教授)
飯塚教授の推定では、セロファンラップは1×2mのロールで約3ドルで、特注の半波長板の値段の3500分の1程度だという。
この研究結果は「Review of Scientific Instruments」の8月号に掲載された。
飯塚教授のシステムは、ノートパソコンなどの液晶(LCD)スクリーン専用だ。これは、液晶スクリーンが偏光した--つまり、特定の方向に振動する--光を放出することを利用しているためだ。
飯塚教授の方式では、スクリーンは左右2つの部分に分けられ、それぞれにステレオカメラの画像のように、若干異なる画像を表示する。スクリーンの片側はセロファンで覆われ、光の偏光方向が変えられる。そしてユーザーは、右目にはスクリーンの左側からの光だけ、左目にはスクリーン右側からの光だけが入るよう偏光されたサングラスをかける。
画像はユーザーの頭のなかで合成され、1つの3次元画像として知覚される。人間の奥行き感覚は、両目に映る画像の若干のズレによって引き起こされている。
セロファンは、特定の波長の偏光方向だけを変える市販の半波長板とは異なり、可視光線のスペクトル全体の偏光方向を変えるので都合がよい、と飯塚教授は述べている。ただし、25ミクロンというセロファンの厚さが重要になるという。また、石油の副産物であるセロファンの化学組成は、ブランドによってさまざまだ。飯塚教授は、手工芸会社Lewiscraftが販売しているある特定の製品が、最適であることを見つけた。
飯塚教授の3次元ディスプレイの研究は、聾者を助けたいという願いなどに促されたものだ。インターネットでの手話伝送は、手の奥行き位置が見えればより良いものとなるはずだ、と飯塚教授は述べている。
飯塚教授はまた、携帯電話用の3次元ディスプレイ開発にも関心を持っている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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