コンピュータ科学者や経済学者からの抗議と非難を受け、欧州議会は論争を巻き起こしているソフトウェア特許に関する指示の採決を延期した。
当初9月1日(現地時間)に予定されていたこの採決は、9月22日に始まる本会議での実施へと延期された。
ソフトウェア特許は構想の背景にある概念の独占を許すものだとされており、提案されているDirective on the Patentability of Computer-Implemented Inventions(コンピュータプログラム関連の発明特許に関する指示)に反対を表明する陣営は、これが事実上無限のソフトウェア特許を許してしまうことにつながると主張する。米国では、大手企業が大量の特許を取得し、競合する新興企業から自社を守るためにこれを利用している。
欧州議会議員のArlene McCarthyが草案を作成したこの指示には、緑の党やヨーロッパ社会党(PSE)などの政党が反対の立場を表明した。ドイツおよびフランスの社会党はこの延期を、9月下旬の本会議に先駆けたソフトウェア特許関連問題に対する欧州議会議員(MEP)の意識向上の機会として捉えている。
同提案に関して6月に行われるはずだった採決は、同法案がヨーロッパの小規模企業やオープンソースソフトウェアのデベロッパーに不利な米国型特許環境を生みだしてしまうとのMEPの批判を受けて中止になった。
提案されているソフトウェア特許法は、ソフトウェアも含んだ「コンピュータプログラム関連の発明」に適用される特許に関する規則を明確化しようとする欧州委員会の努力の成果。EU加盟国の各特許庁は現在、ソフトウェア関連特許の申請を受理するにあたって国々で異なる基準を定めており、欧州委員会の提案はこのような状況の是正を狙っている。
MEPのMcCarthyは、提案された指示に関する6月の調査報告の中で、コンピュータ関連の発明の特許性と米国IT業界の成長性が関連していることが分かったと述べていた。同氏は、欧州議会向けにロンドンの知的所有権研究所が実施した調査に言及し、このような特許は「特に中小企業や独立系のソフトウェアデベロッパーの成長を助けた」と記している。
だが、ある経済学者の団体は先日、この指示を批判する書簡の中で、大半の経済研究はこの主張を支持しないとし、ソフトウェア特許と経済成長に関連性があるとのあらゆる考えを一笑に付した。そして、この指示の現在の内容では、「ヨーロッパの革新、成長、そして競争力に非常に深刻な悪影響を与えかねない」と主張した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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