アンチウイルスソフトを手掛けるベンダーは、インターネットの脅威から顧客を守ってきた。しかし彼らは、いま新たな別の脅威にさらされている。米Microsoftによるアンチウイルスソフト業界への参入である。
米Microsoftは米国時間6月10日、ルーマニアのアンチウイルス・ソフトウェア・ベンダー、GeCadの技術と知的財産を買収し、従業員の一部を雇い入れることを明らかにした。Microsoftはこの買収を「Trustworthy Computing計画の次のステップ」(同社)と位置づけている。Trustworthy Computingは、セキュリティ強化を目的とする取り組みで、パソコンのアンチウイルスソフトウェアをアップデートしない、約3分の2のWindowsユーザーに向けるものという。
Microsoftのセキュリティビジネス部門バイスプレジデント、Mike Nashは「買収した技術をどう活用するかについては最終決定していない」としながらも、「買収の目的は、Windowsユーザーに対して、アンチウイルスに関する有料定期購読サービスを提供することにある」と語っている。
「顧客がMicrosoftのアンチウイルスソフトウェアを利用したいと考えるならば、我々は顧客に対して選択肢を用意する。今の段階で顧客がどのようなものを求めているか分からないが、我々の最終目標がこれまで以上に多くの顧客を保護することにあることに変わりはない」(Nash)
Microsoftは現在、MSNのインターネットサービスとオンラインゲームの一部で月額料金を設定しているが、セキュリティパッチのダウンロードサービスであるWindows Updateは無料である。Nashは、このWindows Updateの無料提供を変更する計画はないと語っている。
Nashは、Microsoftが提供するアンチウイルスサービスについて、「売上高がどの程度になるかは予測できない」としている。Microsoftがサービスの形態をまだ決定していないためである。
今回のMicrosoftによるGeCad資産の買収は、他のアンチウイルス・ソフトウェア・ベンダーの脅威となると考えられている。1990年代にMicrosoftが行った「ブラウザー市場の攻撃」を彷彿させるからだ。
しかし、アンチウイルスソフト/サービス大手、米Network Associatesのプレジデント、Gene Hodgesは、「アンチウイルスソフトとブラウザーは違う」と、そうした考え方を否定している。「ブラウザーでは、ベンダーによる迅速な対応がなくても、ネットワークはダウンしない。アンチウイルスソフトの業界では、単に技術を提供するだけでは、ビッグ・プレイヤーにはなれないのだ」(Hodges)。さらに同氏は、「Windows XPにパーソナルファイアウォールが装備されたが、それでもサードパーティのパーソナルファイアウォール製品は引き続き売れている」と述べている。
なお米Symantecなどのベンダーは、今後の成り行きを見守るとしてコメントを控えている。一方、米Computer Associates Internationalといった、アンチウイルス製品・サービスの売上高全体に占める割合が低い企業は、影響が少ないと見ているようだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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