分散コンピューティングでSARSのパターン解明に挑む

 香港の生命科学/人工知能ソフトウェア専門メーカーArtificial Lifeは7日(香港時間)、同社が独自に進める重症急性呼吸器症候群(SARS)の研究プロジェクトに、一般ネットユーザーが参加するためのスクリーンセーバー配布を、同社のウェブサイト上で開始した。

 このプログラムはホストPCのバックグラウンドで作動し、SARSウィルスの拡散状況をシュミレートする数理モデルを実行する。各クライアントで処理された計算結果はインターネット経由でArtificial Lifeのサーバに送られ、そこで分類・解析された上でパターン化される。

 高度に複雑な問題を処理するために、何百、時には何千台ものボランティアコンピュータを利用して計算を行う技術を、分散コンピューティングと呼ぶが、SARSの拡大状況をモデリングするこの作業に高度な計算処理能力を要するのは、関係する要素が膨大な数に上るため、とArtifical LifeのCEO、Eberhard Schoeneburgは説明する。関連要素の具体例としては、細菌の突然変異、患者の社会経済的レベル、病院の入院者数や場所などが挙げられる。

 これまで分散コンピューティング技術が利用された例としては、地球外知的生命体(ET)の探査プロジェクト「Seti@Home」が有名である。

 Schoeneburgによると、同社は当面香港と中国本土のみを対象にSARSウィルスの拡散パターンの研究を行うが、3カ月間のテスト運用後に、調査の対象地域をシンガポールなどアジアの他の都市にまで拡大する可能性があるという。

 現在全世界でおよそ6300人がSARSウィルスに感染し、死者は449人に上っている。

 Artifical Lifeはこの研究を行うにあたり、特に保健機関からの要請を受けたわけではないが、SARS問題に取り組むアジアの研究者たちが、調査結果に興味を示してくれることを希望している。

 しかし、調査結果の精度は各国政府が発表する感染パターンに関するデータの精度如何にかかっている。この点についてSchoeneburgは、「我々の仕事には、正式に発表された数字が信頼できるものかどうかを分析することも含まれる。これについては、確率分析やデータマイニングの手法で調べることが可能だ」と語る。

 なお、先ごろ中国当局者がウィルスの感染状況を過小申告したとして世界各国から非難を浴び、張文康衛生相らが更迭されている。

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