中国のSkypeユーザーに影響を与えている大規模なセキュリティ問題について、Skypeはほとんど認識していなかったことを同社社長が明らかにした。
Skype社長のJosh Silverman氏は米国時間10月2日、同社のブログ上で、Skypeの中国内パートナーであるTOM-Skypeが、中国政府が攻撃的とみなしたユーザーのインスタントメッセージの記録や保存を行っていたことを同氏自身は知らなかったと説明した。
Silverman氏は、中国ではすべての通信が同国政府の監視下にあることから、Skypeのインスタントメッセージング(IM)チャットも監視されていたことは知っていたと述べる。同氏によると、 Skypeはまた、2006年には中国で検閲が行われている事実をユーザーに公表し、チャットメッセージで使われる特定の言葉を遮断するためテキストフィルタが使用されていることを説明したというしかし、Silverman氏は、自分の理解では不適切とみなされたメッセージは「削除されるのみで、どこかに表示されたり、送信されているとは考えていなかった」と付け加えている。
Silverman氏はブログの中で、「特定のキーワードを含むチャットメッセージのアップロードや保存を行っているのはTOMのプロトコルではないというのがわれわれの理解だ」とし、さらに「現在、TOMと協力して、なぜプロトコルが変更されたのか調査中だ」と述べている。
トロント大学Citizen Labのカナダ人研究者らが先ごろ、この問題に関するレポートを発表した。それによると、「TOM-Skypeは、特定の機密性の高いキーワードを含むテキストチャットの検閲や記録を行っており、さらに、よりターゲットを絞った監視を行っている可能性もある」という。
また同レポートによると、TOM-Skypeは膨大な量に及ぶデータの記録、保存を行っているという。そのデータの中には、個人情報や、Skypeユーザーからの通話を含む、TOM-Skypeユーザーに対するすべてのテキストチャットおよび音声通話の詳細な連絡先が含まれている。さらにTOMは、TOM-Skypeユーザーのプライバシー保護という点で不適切な方法で情報を保存している、と同レポートは指摘している。
Silverman氏によると、Skypeはこの問題を把握するや否やTOMの幹部らに連絡を取り、保存された個人情報に関するセキュリティ問題を解決したという。しかし、同氏は、TOMがこの情報を保存してきたことに対してSkypeが抱いている懸念も指摘した。
Silverman氏は、「われわれは、これら両方の問題を知り、強い懸念を抱いた。そこで、われわれはTOMと協力して迅速にこの状況に対処し、TOMがこのセキュリティ問題を修正した」とした上で、「さらに、現在われわれはTOMとともに、特定のメッセージのアップロードおよび保存という、より広範な問題に対処している」と語った。
Silverman氏はブログの中で、TOMも中国の他のインターネットサービスプロバイダー(ISP)と同様に、中国政府からすべての通信の監視を義務付けられていると指摘した。そして、「中国で検閲が実施されているというのは共通の認識だ」と付け加えた。検閲の対象となるキーワードとしては、台湾の独立、中国で活動が禁止されている宗教団体「法輪功(Falun Gong)」、中国共産党に反対する政治活動などに関連した用語が挙げられる。
しかし、Silverman氏は、Skypeのコンピュータ間の音声通話は完全に安全であるとして、Skypeユーザーの不安の払拭に努めた。
同氏は、「(今回のセキュリティ問題は)すべての当事者が標準的なSkypeソフトウェアを使用している場合の通話には一切影響はない」とし、さらに「Skype同士の通話は、これまでと同様、完全に安全でプライバシーが確保されている」と付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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