途上国の子どもに1人1台ノートPCを――そんな理念で「100ドルノートPC」を開発しているOne Laptop per Child(OLPC)プロジェクトから生まれたユーザーインターフェース(UI)が「Sugar」だ。2008年にOLPCから独立し、Sugar Labsというコミュニティで開発が進んでいる。Sugar Labsを率いるWalter Bender氏が10月、ドイツのミュンヘンで開催された「Qt Developer Days 2009」にて講演し、Sugarの狙いや教育ソフトウェアに抱く思いなどについて語った。
OLPCは米マサチューセッツ工科大学(MIT)のMedia Labから生まれたプロジェクトで、「コンピュータを通じて子どもが情報を探し、考え、コラボレーションできるようにし、疑問を持つことを支援する」という思想の下で生まれた。Sugarはその一部として開発され、「XO」などのOLPCコンピュータで採用されている。Sugar Labsは、2008年にBender氏らSugar開発チームがOLPCから離脱して設立した非営利団体で、さまざまなハードウェアに対応する教育向けプラットフォームを開発している。
Sugar Labsはほかのオープンソースプロジェクトと同様、ボランティアベースで開発を進めており、教育者が参加しているという点が大きな特徴だ。Bender氏は「自由なコンサルタントプロジェクトのようなもの」と語る。焦点はただ1つ、子どもの教育にある。「どうやって学習するかわかっている世代を育てること」とBender氏。そして、「批判精神があり、自分で解決できる世代」と付け加えた。そのためにも、教育関係者の参加は不可欠となる。
SugarはLinuxなどで動作する。大部分がPythonで書かれており、GNU General Public License(GPL)の下で公開されている。現在、25言語・40カ国で利用されており、貢献者は100人を越える。
ハードウェア面での制約があったOLPC時代から、Sugarは学習体験に注意を払ってきた。Sugarの基本精神は「学習中心」。教えることよりも学ぶことにフォーカスし、知識へアクセスできるだけでなく、知識と対話を通じて表現力や批判精神を磨き、最終的には子どもたち自身が知識のクリエーターとなることを目指している。「(Sugarは)表現を奨励し、やってみたいと思わせるようなデザイン」とBender氏は語る。
Sugarは、参加、継続、表現、観察、思案、応用ができるプラットフォームを目標としている。これらは、「情報にアクセスする」というコンピュータの初期の目的を超えるものだ。なお、Sugarでは利用者を「ユーザー」といわず、「ラーナー(Learner:学習者)」と呼んでいる。
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