2009年1月にBarack Obama氏が米国大統領に就任し、民主党優位の連邦議会が誕生すると、新大統領は前任者よりも政府の助成と規制に重きを置いたテクノロジ政策を推し進めるチャンスを手にすることになるだろう。
ワシントンとシリコンバレーのコミュニティーでは早くも、誰が米国最初の「最高技術責任者(CTO)」となるかについての憶測が飛び交っている。タイミングよくObama氏への支持を表明していたGoogleの最高経営責任者(CEO)であるEric Schmidt氏ではないか、それともVint Cerf氏だろうか。官僚出身の人物にも可能性があるとすれば、米連邦通信委員会(FCC)の委員長を務めた経歴を持ち、今回Obama氏の代弁者として活動していたReed Hundt氏かもしれない。
Obama氏がCTOとなる人物に期待するのは、「わが国の政府と全官庁が、21世紀にふさわしいインフラ、政策、およびサービスを持てるようにする」こと、そして政府のコンピュータネットワークのセキュリティを保護することだ。たった1人で抱えるにはかなりの大仕事だが、前例がないわけではない。Clinton元大統領は、同政権の医療制度改革が大失敗に終わったあとに、インターネットの規制についてIra Magaziner氏に多大な権限を委譲した。
医療保険制度の問題は、どの政権にとっても荷の重い仕事だろうが、同時にイラク占領や不況といった問題にも対処しなければならない新政権にとってはなおさらだ。医療記録とその保存手段の電子化を目指す新しい政府規制の制定は、以前から長らく議会を悩ませてきた問題に対処する最初の一歩に過ぎない。
著作権については、民主党は音楽業界や映画業界の希望に合わせようとする傾向が強いというのが従来の見方だった。しかし今回はそうならない可能性がある。米国内での著作権法の執行をより強力に進めていくべきだと主張したのはJohn McCain氏の方で、これに対してObama氏は、「市民の対話、技術革新、および投資を促進すると同時に、知的財産権の保有者が公平な待遇を受けられるよう、著作権と特許権の制度を刷新、改革する必要がある」と述べるにとどまった。
このようなあいまいな言い方はもちろん、意図的になされたものだ。Obama氏は以前にも、われわれが投げかけた「デジタルミレニアム著作権法を改正して、米国民が合法的に購入したDVDやコンピュータゲームのバックアップコピーを1部だけ作成できるようにする意向はあるか」という質問に対して明言を避け、そのような改正案を「考え方としては」支持する、とだけ答えた。
しかし国外については、Bush政権が採用した、そしてもしMcCain氏が大統領になれば採用したと思われる政策と明らかに異なるようなアプローチを取ることはなさそうだ。Obama氏のウェブサイトでは、「中国では米国の著作権と商標権が守られていない」と述べ、国際的によりいっそうの法執行と基準が必要だと主張している。
テクノロジ企業にとって大きなマイナス面となるのは、民主党の勢力が強まった連邦議会とホワイトハウスが、自由貿易に対して、はたしてどれほど敵対的な態度を取るのかということだ(この点についてはある程度強調しても言い過ぎにはならないだろう)。
Obama氏は、自由貿易に対してClinton氏が持っていたようなイデオロギー的な先入観は持っておらず、民主党内の保護貿易主義者から強いプレッシャーを受けることは間違いないと見られる。2005年の中米自由貿易協定の承認問題で、少数の民主党議員が共和党議員に合流して賛成にまわったとき、その15名の民主党議員たちは、党内からも、労働運動家からも強い非難を浴びることとなった。そのようなリスクを再び犯そうという政治家はほとんどいないだろう。
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