ユーザーのアップロードした動画を配信する「YouTube」が、広告販売を計画していることはひた隠しにされており、その戦略さえコードネームのなかに覆い隠されている。
YouTubeは、急速な成長をみせるこの市場で首位を走っている。そのため、同社がどんな種類の広告モデルを採用するのかは、広告業界の注目の的となっている。YouTubeでは、素人の手になるさまざまなビデオが公開されているが、同社はこのインターネット版バラエティショーを取り仕切る司会者役を務めることで、多数の熱烈な支持者を集めることに成功している。この人気を利益に結びつけるために、同社は125億ドルの売上規模を持つオンライン広告市場にしっかりと狙いを定めている。
高速なブロードバンド回線でウェブに接続する大勢のユーザーが、テレビに替わる選択肢を探し求めるなかで、ビデオのネット配信が盛り上がっている。だが、広告業界の専門家のなかには、YouTubeや「eBaum's World」「AddictingClips.com」「Break.com」といった競合各社が、アマチュアビデオの配信を事業にできるかどうかについて首をかしげる者もいる。これらのサイトでは、わずか数秒から10分ほどの長さのビデオが公開されており、そのなかにはひどくおかしいものも多い。だが、なかには身の毛がよだつものや、不吉なもの、悪意に満ちたものや、不気味以外の何物でもないものもみられる。大半のビデオアップロードサイトでは、血まみれの殴り合いや、自分のベッドルームのなかを動き回る半裸のティーンエージャー、あるいは自動車事故や飛行機事故の瞬間を撮したビデオが公開されている。
「ビデオアップロードサイトには、まだこれといったビジネスモデルがない」とJupiter ResearchアナリストのDavid Card氏は言う。「広告主のなかには、これらのサイトにアクセスする若者たちを目当てに、くだらないコンテンツのスポンサーになることを厭わないところもあるだろう。しかし、いっさい関わりを持ちたくないと考える広告主もたくさんいる。ひとつだけ確かなのは、この分野には十分な広告費が回っていないということだ」(Card氏)
CGM型の動画サイトには有望な点が2つあると、Ammo Marketingで戦略ディレクターを務めるGary Stein氏は指摘する。その1つは、数多くの、しかも最も熱心に追い求められているオーディエンス--つまり、18〜34歳の男性が、これらのサイトに集まっていることだ。
「これらのサイトが広告主にとって非常に魅力的な理由は1つ--『数』しかない」とStein氏は言う。「これらのサイトには数多くの視聴者がおり、その数はいまも増加を続けている。これらの視聴者はふつうのテレビでは飽き足らない若い男性で、テレビよりもインターネットに費やす時間が長い」(Stein氏)
また、YouTubeなどのサイトはビデオに期待をかけている。ビデオは広告の提供手段として実績があり、これまで数十年間にわたってテレビ広告を流してきた企業各社も理解できるメディアだ。
ビデオの本編に入る前に流れる「プリロール(pre-rolls)」と呼ばれる通常15秒程度のコマーシャルは大きな収入源になる可能性があると、Stein氏は述べている。
このプリロールを視聴者は実際に観ており、しかもそのメッセージは他の広告手段よりも長い間印象に残ることが複数の調査からわかっているとStein氏は言う。eBaum's Worldの広告ディレクターを務めるKarl Heberger氏もStein氏と同じ考えだ。ただし、大手アップロードサイトのひとつであるeBaums's Worldには、プリロール広告は見当たらない。
eBaums's Worldがプリロール広告を導入していないのには理由がある。同サイトには毎日約90万人が訪れているが、本編が始まるまで15秒も待たなければならないとなれば、大規模なユーザー離れが起こりかねないと、同社の幹部らがおそれているためだ。
「われわれのサイトは、注意欠陥障害(ADD:attention deficit order)世代向けの、短いビデオクリップに特化している」とHeberger氏は言う。「本編の前にコマーシャルを流すことは理にかなっていない。われわれはユーザーにそっぽを向かれたくない」(Heberger氏)
YouTubeやeBaums's Worldなどのサイトがプリロール広告を掲載することにしたとしても、ほとんどの広告主はあまり喜ばないだろうと、Card氏は言う。15秒間では大したメッセージを伝えられない、というのが同氏の考えだ。
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