「プロプライエタリなソフトウェアはオープンソースソフトに問題なく組み込めるのか」。Linuxに人目を引く新しい描画機能を搭載するための取り組みにより、この問題をめぐって以前から戦わされてきた論争が再燃している。
この問題にはドライバと呼ばれるソフトウェアモジュールが関係している。ドライバとは、Linuxの中核であるカーネルに挿入されるソフトウェアで、システムがネットワークアダプタやハードドライブ、ビデオカードなどのハードウェアを動かすために使われる。
Linuxではこうしたドライバがよく使われてきているが、人目を引く描画機能をLinuxのユーザーインターフェースに導入しようという最近の動きを実現するには、グラフィックカードを対応させるためのドライバがほぼ不可欠だ。PCで3Dなどの視覚効果を実現するために、Linuxはコンピュータに搭載されたグラフィックチップを活用する。ただし、問題なのは、Linuxがオープンソースであるのに対し、NvidiaやATI Technologiesなどの主要なグラフィックチップベンダーから出ているドライバはオープンソースではないという点だ。
プロプライエタリなドライバをめぐっては、純粋なオープンソース主義者と現実主義者の間に対立がある。Linuxに適用されるGNU General Public License(GPL)を起草したフリーソフトウェア財団(FSF)によれば、GPLではプロプライエタリなドライバの利用は禁じられているという。
しかし、FSFは絶対的な力を示そうと試みているものの、彼らの前には動かしがたい障害が立ちはだかっている。グラフィックチップベンダー各社が、3Dグラフィックドライバをオープンソース化していないのだ。
The 451 GroupアナリストのRaven Zachary氏は、「より多くのハードウェアベンダーに対してLinuxのサポートを期待するなら、Linuxコミュニティは、プロプライエタリなソフトウェアに抵抗することを止めなければならない」と述べている。
NvidiaやATIの力を借りずにオープンソースのグラフィックドライバを作成するのは難しい。「最新のグラフィックプロセッサを使うユーザーにとって、プロプライエタリなドライバはほぼ唯一の選択肢となっている。Nvidiaの『GeForce 7』シリーズやATIの『Radeon X1000』シリーズ向けには、いまのところ対応するオープンソースのドライバソフトが出ていない」と、ハイエンドのLinuxハードウェアに関するサイトPhoronixを始めたMichael Larabel氏は述べている。
これらのプロプライエタリなドライバをリバースエンジニアリングして、同等の役割を果たすオープンソースのドライバを開発しようという取り組みは、何カ月も遅れることがよくあり、しかも「ごく初歩的な」ドライバしかできないとLarabel氏は付け加えた。
ATIは、知的所有権に関する理由から自社のドライバをプロプライエタリなままにしているという。「ATIがライセンス供与を受けているサードパーティーの知的所有権があり、これを守ることが法律で義務づけられている」と、ATIのMatthew Tippett氏(Linuxソフトウェアエンジニアリングマネージャー)は言う。「グラフィックス市場における競合は激しく、また特にハイエンドカードの分野では、わが社は多数の知的所有権を保有している。企業秘密としてのプロプライエタリな側面は、可能な限り維持していきたいと考えている」(Tippett氏)
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