「xMax」は次世代無線技術実現の切り札となるか

Marguerite Reardon(CNET News.com)2005年07月11日 21時08分

 WiMaxや3G(第3世代)携帯電話のような次世代技術で約束されていた事柄を実現する切り札として、「xMax」と呼ばれる新しいワイヤレス技術が注目を集めている。

 WiMaxや3G携帯通信網を使ったラップトップや携帯電話への高速データ通信については、これまでさまざまな可能性が語られてきた。そうする中で、これらの技術が直面してきた最大の課題は、バッテリに蓄えられた電力を大量に消費せずに、長距離の大量データ転送を実現することだった。

 この問題は至って単純だ。ネットワークの転送容量を上げたり、転送スピードを高速化しようとすれば、電波の到達距離がその分犠牲になる。つまり転送スピードが高速になればなるほど、電波の届く距離が短くなってしまう。長距離の高速転送技術を実現することも可能だが、そのためには電力消費量を上げる必要がある。つまり、データを受信する端末の側ではバッテリの駆動時間が短くなってしまう。

 「どのモバイルアプリケーションでも、電力消費量は最大の問題だ」と、無線/モバイル技術に特化したコンサルティング会社Farpoint GroupのCraig Mathiasは言う。「バッテリの駆動時間を長くできる技術ほど価値が高い。消費電力を抑えることができれば、モバイル機器向けにはるかに多くのアプリケーションを提供できる可能性が開ける」(Mathias)

 xMaxを開発したxG Technologyでは、フロリダ州のマイアミとフォートローダーデイルで、この技術が実際に機能することを証明するための一般向けデモンストレーションを行う計画を進めている。このデモでは、15マイル以上離れた場所へ40Mbpsの転送速度でデータを送るが、その際の消費電力は1ワットにも満たないという。

 「この技術に対してはいまだに多くの疑問の声が聞かれる。これは無理もないことだと思う」とxGのRick Mooersは言う。「われわれが進めているのは単なる改善ではない。もしこれが普及すれば、革命的なものになる可能性がある」(Mooers)

 Wi-Fiの強力版と説明されているWiMaxは、電波の到達距離が最大で30マイルで、理論上の転送速度は75Mbpsになるといわれている。しかし現時点では、WiMaxの受信装置があまりに多くの電力を消費してしまうため、ラップトップのような一般向けの機器に採用できる状態ではなく、携帯電話のような小型機器への搭載は問題外とされている。

 米国ではやっと3Gサービスが提供され始めたところだが、携帯電話会社ではすでに「Super 3G」技術の開発に取り組んでいる。Super 3Gでは、モバイル機器を使ってテレビを観たりインタラクティブゲームを楽しんだりできるようになる。これらのコンテンツを表示させるため、携帯電話メーカーでは高解像度の液晶画面を搭載する端末を投入する可能性が高い。しかし、これらのアプリケーションや機能が追加されれば、それだけ電力消費量が増すのは確実で、標準的な携帯電話機ではあっという間に電池切れになってしまう。

 xMaxは、WiMaxや次世代携帯技術がこうした障害を克服するうえで役立つ可能性があると、Mooersは述べている。

 「xMaxは、WiMaxや3G携帯と直接競合するものではない。xMaxをこれらの技術と一緒に使うことで、消費電力が大幅に下がる可能性がある。つまり、携帯電話であれば、現在の待機時間と同じくらい長く話せるようになる。頻繁に通話するユーザーの場合、数時間しか保たなかったバッテリが、充電なしで2〜3日は使えるようになる」(Mooers)

 xMaxの仕組みはどうなっているのか。まずは消費電力の問題から見ていこう。xMaxは、通常の変調技術で必要とされるよりも多くのデータを1つの正弦波で転送できるように設計された技術を使う。そのため、10万を超える正弦波を使って1ビットのデータを送るのでなく、xMaxではこれを1対1に近い割合で実現する。このことから、このテクニックはより効率的で消費電力をかなり低く抑えることが可能になる。そのため、信号を受け取る機器では多くの電力を消費せずに済む。

 また、xMaxは1GHz以下の周波数帯を利用することで転送距離の問題を解決している。この周波数帯の電波は壁や木などの障害物を突き抜けることが可能だ。しかし1GHz以下では帯域幅がかなり狭いため、大量のデータを転送するのは難しい。

 この問題を解決するため、xMaxの発明者Joe Bobierは、データを複数のチャネルに分割して転送する技術を開発した。これにより、1GHz以下のナローバンドのチャネルで信号を送受信できるようになった。さらに、出力パワーは、FCCの電波障害規制で定められているよりはるかに低いため、他のデバイスが隣接するチャネルを使ってデータを転送していても、それと干渉し合うことはない。

 「すべてのトランスミッタには、ライセンスを受けたチャネル以外に出ていく電力がある。FCCは他の帯域幅にどれくらいの電力がこぼれだしていいかを定めている。われわれの技術では、この電力が、許容レベルに比べて約10万分の1以下であり、あまりに少なすぎて検知できない」(Mooers)

 Mooersによると、xG Technologyは現在この技術のライセンスを求める数社と交渉を進めているという。WiMaxチップを開発するIntelや、次世代携帯技術を開発したQualcommが、xGと提携する可能性もあるが、Mooersは具体的な社名を明らかにしていない。

 xMaxは説明だけ聞くと非常に革命的な技術のように聞こえるかもしれない。だが、Mathiasのようなアナリストは、この技術がまだ開発の初期段階にあるとしている。

 「このようなものについては、これまで1度も聞いたことがなかった。この技術は非常に有望に思えるが、ただしxMaxがいうように機能するかどうかを見極めなくてはならない」(Mathias)

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