「10%の壁」を超えたアジア地域を統括--デジタル広告Criteo・斉藤祐子さん

 この連載では、シンガポール在住の筆者が、日本から東南アジアに拠点を移し、テクノロジ企業で働く女性を紹介していきます。赴任、転職、起業などさまざまなきっかけで新たなキャリアの一歩を踏み出した彼女たちに、仕事の奮闘や自身の将来、海外で暮らすことなどについて聞きます。

 今回紹介するのは、フランス発のグローバル企業で米NASDAQ市場に上場しているアドテクノロジ企業Criteo、その東南アジア地域における事業を統括している斉藤祐子さんです。大学を卒業後、ソニーやトランスコスモス、ウォルト・ディズニー・インターネット・グループ、キューエンタテインメント(CEO)など、ネット、メディア、エンタテインメントを融合させた領域で華々しいキャリアを歩んできました。


Criteo東南アジア担当マネージングダイレクターの斉藤祐子さん

 そんな斉藤さんに、Criteoの戦略や東南アジアにおけるアドテクノロジ市場のトレンド、またその仕事内容について聞きました。

ローカライズしなくても伸び続ける「アジア」

――Criteoの事業内容について教えて下さい。

 弊社は、パフォーマンス重視のデジタル広告に特化したサービスを提供しています。弊社の提供するリターゲティング・レコメンデーション広告は、Eコマースサイトや旅行系などのクラシファイドサイトなどを訪れて商品を閲覧したユーザーの行動履歴を蓄積し、そのユーザーがニュースサイトなど他のサイトを訪れたときにパーソナライズされた広告を表示するものです。

 私は、2012年9月にアジア太平洋地域事業の統括拠点である東京オフィスに、コーポレート・ビジネス・デベロップメントおよびオペレーションズ担当ディレクターとして参画し、ヤフーとの戦略的提携交渉の取りまとめなどに従事しました。その後、中国オフィスの開設を担当し、2013年1月から東南アジア地域事業の統括担当として、台湾、香港、インドを含む9つの国と地域を見ています。


同社のウェブサイト

 東南アジアで提供しているサービスはグローバルで統一されたものです。これはCriteoの素晴らしいところだと思います。私は1999年ごろからネットビジネスに携わってきましたが、どの外資系企業もサービスのローカライズに苦労していました。海外に進出しても、グローバル全体の売上の10%を超えられない、「10%の壁」のようなものがあると感じていました。

 しかし、Criteoの場合はそれがありませんでした。言語などインターフェースについて必要最低限のローカライズはしていますが、根幹となるシステムのローカライズは一切行っていません。それでも、どの国でも良いパフォーマンスが出ています。アジア太平洋地域はグローバル全体の売上の約2割を占めています。東南アジアの売上は市場が小さいため絶対額としてはまだまだ小さいですが、Criteoの中で最も伸びている地域です。

 現在までにこのオフィスから見てきた、東南アジアの広告キャンペーンの数は累計で150。広告は全世界のメディアに配信することが可能ですが、東南アジアだけに絞ると100媒体に配信可能で、うち5~6社がGoogleやFacebookなどグローバルに展開しているメディアです。

――競合企業の状況は。

 DSP(ターゲットユーザーがメディアを訪れた際に表示させるディスプレイ広告枠の買い付けを行うディマンドサイドプラットフォームのこと)の会社は2013年ごろから東南アジアに進出してきていますが、我々のようなユーザーの行動履歴からおすすめの広告をダイナミックに配信する会社の進出はまだこれからのようです。

 実は2013年の1月にこの地域を担当し始めたころは「進出したのが少し早すぎたのでは」と不安に思うこともありました。しかし、今となっては市場が爆発的に伸びていることを肌でもデータでも感じ取っており、その中に参加できていることにやり甲斐を感じています。市場の成長に乗り遅れないよう、優秀な人材を採用し、私たちも拡大していかなければなりません。

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