スマートフォンネイティブが見ている世界

「あのネタは反日」「LINE有料化」—オンオフでつながりデマに騙される小学生

 ネットはデマが拡散しやすい。特に10代など低年齢の子どもたちは、ネットでのデマの拡散に加担してしまう例が多く見られる。

  • 些細なイタズラのつもりでも、運営企業やユーザーに重大な迷惑をかける悪質な行為とみなされてしまうこともある

 2014年6月、人気ゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ」がサービスを終了するという噂が流れた。噂が拡散したのは、「【パズル&ドラゴンズ】【公式サイト】サービス終了のお知らせ」というキャプチャ画面があったためだ。念の入ったことに、運営会社であるガンホー・オンライン・エンターテイメントのロゴなども入れられており、一見本物のキャプチャのように見える。

 ユーザーの1人が同作プロデューサーの山本大介氏にTwitterで問い合わせたところ、即座に否定されてデマであることが判明した。つまり、この画面は誰かが故意に作成したデマだったというわけだ。画面を作った愉快犯はユーザーを驚かせたかっただけなのかもしれないが、ガンホーは上場しており、このような風説が株価に影響する可能性がある。運営企業やユーザーに重大な迷惑をかける悪質な行為と言えるだろう。

 この時、ユーザーの中高校生たちは軒並み騙されている。彼らは情報を聞いた段階で確認もせず、「本当に○○なの?」とLINEやTwitterに書き込んでしまう傾向にある。これを見た他のユーザーが「○○なんだって!」と拡散し、デマが広まっていってしまうのだ。

「ラッスンゴレライ」は反日ネタか

 「『ラッスンゴレライ』というネタで知られるお笑い芸人8.6秒バズーカーは反日」という噂を聞いたことがある人は多いだろう。2015年4月頃からこの噂がネットで話題となった。現在ラッスンゴレライで検索すると、一番上にそのデマが表示される状態だ。噂が自然に沈静化しなかったため、本人たちが否定コメントを出す羽目となっている。

 「ラッスンゴレライ」というのは言葉遊びネタであり、特に意味がある言葉ではない。ところが、「ラッスンゴレライは落下寸号令雷という米軍が原爆を落とす号令の意味」「8.6秒バズーカーは8月6日に落とされた原爆のこと」「彼らのポーズは広島の原爆の子の像、長崎の平和祈念像の形」などと、すでに退会しているあるTwitterアカウントのツイートが元となり、広まっていってしまった。そもそも「落下寸号令雷」では日本語として意味をなさないのだが、このデマを信じている小学生は多い。


8.6秒バズーカーの2人がデマを否定する羽目になった

 「ラッスンゴレライ」を信じている小学4年男子A太は、「原爆をネタにするなんて(8.6秒バズーカーに)テレビから消えてほしい。YouTubeやまとめサイト、うごメモで見た。クラスの友だちも言っていた」と言う。うごメモとはニンテンドー3DSのうごくメモ帳3Dのこと。執筆時点でフレンドうごメモギャラリーは停止しているが、ワールドうごメモギャラリーは利用できる状態だ。

 ある小学3年女子B那は、「韓国に命令されて日本の悪口を言っているの。だからいけないんだよ」と言う。彼女は母親からその情報を聞いて信じてしまい、それまで楽しそうに真似をしていたのに、ぴたりとやめてしまったそうだ。保護者が教える例だけでなく、教員が子どもにデマを教えている例もあるという。小学生が保護者や教員に教えられたことを疑えるはずはないし、デマが広まるのは無理もないと言えるだろう。

デマの4タイプと広まる理由

 分類するとデマには、(1)知識がないことにより不安が広まるタイプ、(2)誤報やネタにより誤解が広まったタイプ、(3)他人を貶める・批判するタイプ、(4)好意により生まれるタイプがある。具体的には、それぞれ以下のようになる。

 (1)は、東日本大震災時の「コスモ石油の爆発により有害な雨が降るので雨に触れてはいけない」などが代表例だ。震災直後で不安に囚われている状態のため、よかれと思って友人・知人に拡散してしまう例が多かった。(2)は「18歳未満はLINE利用禁止」などが当てはまる。「18歳未満はLINE ID検索利用停止」というニュースが広まるうちに間違った情報となって広がったのだ。前述のパズドラの例も含まれるかもしれない。

 (3)は上記8.6秒バズーカーの例が該当する。(4)は、お笑い芸人江頭2:50さんが車椅子の少女に「めちゃめちゃイケてる」メンバー全員のサインをプレゼントしたなどのエピソードが当てはまる。実際に江頭2:50さんは震災時にトラックで自ら支援物資を届けたりしており、いい人という印象があるため、いい話系エピソードも受け入れられる土壌があったというわけだ。

 実在の人物から直接発せられた情報の方が信頼される傾向にあることを、「イグゼンプラー効果(exemplar:典型、代表例)」という。ニュースにおける街頭インタビューや商品に寄せられた利用者の声などは、この効果を狙ったものだ。たとえ相手のことを知らなくても、実在の人物が語った方が説得力が増す効果がある。ましてやSNSはすべて実在の、しかも知っている人物だ。実在の人物から聞いた言葉は信頼されやすいため、SNSではデマが広がりやすいのだ。さらに子どもたちは、オンとオフで濃密につながっているため、情報は瞬く間に共有、拡散されてしまうというわけだ。

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