仕事を楽しみ、歴史を作れ--世界最大のオンラインストアを支えるアマゾン文化 - (page 2)

 同社は事業拡大に対応するため、2005年に設営された物流センター(千葉県市川市、延べ床面積6万2300?)に続く、第二の物流センター(同3万4145?)を2007年7月、八千代市にオープンした。加えて、「地球上で最もお客様を大切にする企業」という第二の標語に従い、Amazon.comの既存サービスをカスタマイズし、日本文化に根ざしたAmazon.co.jp独自のサービス(代引きやAmazonポイント、Amazonショッピングカードなど)をリリースし続けている。

 それに伴い、2007年は例年に増して、物流プロセスの改善に携わる技術者の採用を活発に行った。さらに、セールスマーケティング部門や工場、製造系に属するエンジニア、サービスの利便性を高める開発に関わるプロダクトマネージャーの採用も増えているという。現在のところ、新卒採用は行っていないが、前向きに検討中とのことだ。

 同社が人材に求めるものは、高いスキルと豊富な職務経験だけではない。むしろそれ以上に、「アマゾンカルチャー」にフィットするか否かを重視するという。

 高橋氏は、「採用に際し、たとえ非常に高いスキルを持った技術者であっても、フィット感に対する要求レベルを絶対に下げないんです。人事としては、『これほど優秀な人をなぜ落とす…』と、胃が痛くなるときもありますね(笑)」と心情を吐露する。

 そこには、いかに個人として優秀であっても、一人では絶対に行き着けない高みがあり、一定レベルのコミュニケーション力や分析力、論理的思考力を備えた人材が集まって、初めていいアイデアが生まれるという思想がある。コーヒーを飲みつつ楽しんで交わした幾多の会話の中から、使えるアイデアを抽出し、形にしようとする会社、それがAmazonなのだ。

 もちろん、この高いハードルをクリアする人材はそう多く存在せず、転職市場にはなかなか出てこない。ただ待っていたのでは、巡り会えないことは重々承知の上だ。そこで同社は、転職希望者だけにリーチする従来の一般的な「待ち」の採用スタイルではなく、転職意志のない優秀な人材に自ら「会いに行く」、新しい採用手法を模索している。例えば、そうした人材にメッセージを送るため、媒体やエージェントを巻き込んだイベントを開催するといったことをしているという。

 「これまでやったことのないことでも、長期的視野に立ち、効果がありそうならどんどん試します。当社は、そういうアイデアを歓迎する会社ですし、この手のことは試してみなければわかりませんからね。この場では、そのアイデアの具体的な内容は話せませんけど(笑)」(高橋氏)

 企業のイメージアップを図ってマスにアピールすることで、応募者のすそ野を拡大し、そこから優秀な人材をすくい上げるという、大手企業によく見られる手法とは正反対ともいえる、ピンポイントな採用スタイルだ。ちなみに、今回の取材に当たり、Amazon.co.jpにくまなく目を通したが、アマゾン ジャパンでは会社概要という形のコーナーは用意していないことがわかった。その点を広報マネージャーの宮崎めぐみ氏に質すと、こんな答えが返ってきた。

 「事業が拡大し続けていて、会社概要自体が日々変わっているので、『Amazon.co.jpについて』という形で用意してあります。でもそれ以上に、当社には前出の2つの標語だけあれば十分なんです。会社概要を見るよりも、ストアにアクセスして欲しい、という感じなんですね(笑)」

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