E3が見たゲーム業界--巨大見本市を通して振り返る変遷(第1回)

文:Giancarlo Varanini(GameSpot) 翻訳校正:川村インターナショナル2009年07月16日 07時30分

 鳴り響く音楽、強烈な輝きを放つモニター、目を充血させた来場者たち。昨今のリニューアルの動きにもかかわらず、Electronic Entertainment Expo(E3)という名の年1回のお祭り騒ぎは、15年目を迎えた今も盛況だ。その始まり以来、E3は数々の重大発表が行われる場であり、新しい家庭用ゲーム機のお披露目であろうと、人気シリーズの最新作の発表であろうと、サプライズに事欠くことはなかった。しかし中には、発表されたきり日の目を見なかったものからお粗末な戦略的判断のために消えていったものなど、「不発弾」も数多く存在した。この特集では、2008年までのE3を彩った名場面(と迷場面)を紹介し、ゲーム業界の変遷を振り返る。

E3 1995--家庭用ゲーム機戦争:次世代機

セガサターン、および「バーチャファイター」をはじめとするタイトル数本を前倒しで発売し、セガは世間を驚かせた。 セガサターン、および「バーチャファイター」をはじめとするタイトル数本を前倒しで発売し、セガは世間を驚かせた。

 セガは米国時間1995年3月9日、「メガドライブ(北米版名称「Sega Genesis」)」の正式な後継機である「セガサターン」(「スーパー32X」は後継機とはなれなかった)を、「Saturnday(サターンデー)」とされた1995年9月2日に発売すると発表した。しかしセガが安心していられたのも、猛追するライバル、ソニーが北米で「PlayStation」を発売するという発表を耳にするまでであった。しかも発売はセガサターンの翌週、価格は300ドルとセガサターンの発売価格より100ドル安かったのである。ソニーとの真っ向勝負を恐れたらしく(サターンデーは陽動作戦だったという見方もあるが)、Sega of Americaの社長兼最高経営責任者(CEO)であるTom Kalinske氏は、初開催となるE3の基調講演の中で、セガサターンといくつかのタイトルはすぐに発売を開始し、年末までに60万台は売れると発表した。今から振り返ればその予測は誤っていたが、その結果はともかく、この時のセガのサプライズ発表は「E3での重大発表」の先駆けとなった。

バーチャルボーイは見る者の興味を誘ったが、そのコンセプトを理解できるものは少なかった。 バーチャルボーイは見る者の興味を誘ったが、そのコンセプトを理解できるものは少なかった。

 また、E3 1995で来場者を驚かせた新しいハードウェアはセガサターンだけではなかった。任天堂はこの時、「Ultra 64」と命名されていた新ハードウェアについてはチップセット完成の発表のみだったため、代わりに「バーチャルボーイ」(「ゲーム&ウォッチ」や「ゲームボーイ」の生みの親である横井軍平氏の開発)を前面に出してきた。バーチャルボーイは立体画面を表示する巨大なヘッドセットから成り、2Dゲームをあたかも3D映像のように表現するものであった。任天堂は「マリオズテニス」「テレロボクサー」「ギャラクティックピンボール」など5タイトルを展示し、マリオブランドのタイトルはかなりの関心を集めたかに見えた。だが全体的には、携帯ゲームとして明白にうたわれたわけではないにもかかわらず、その武骨なデザインと携帯性の低さに当惑した者が大半であった。

 一方、ソニーにとっては、PlayStationの9月発売を大いに喧伝し、ラインアップの多くを披露する好機となった。来場者は、「リッジレーサー」を初めとする日本で発売中のタイトルをプレイし、「WARHAWK」や「Twisted Metal」など、北米でのローンチと同時期に発売予定のタイトルの詳細を目にすることができた。

E3最優秀コメント:
 「われわれのゲーム業界への参入は、良い知らせでもあり悪い知らせでもあろう。いまだかつてない本物と見まがうようなリアルなゲーム、『足のようなものが付いた茶色い塊』にではなく、本物の恐竜に襲われるようなゲームに興味がある人々にとっては、良い知らせだ。ほかのハードウェアを販売する者にとっては、PlayStationの登場は悪い知らせとなろう」
-Sony Computer Entertainment America社長(当時)のSteve Race氏

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