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ウェブ履修システムにみる大学IT思想の違い
SFCでも今週から秋学期の授業がスタートした。授業の初日は雨が降っていて、キャンパス最寄りの駅の1つである湘南台駅のバス停では長蛇の列になっていた。「ショッピングウィーク」と呼ばれている、履修を決める1〜2週間は、学校には普段よりも多くの人が来ている。晴れていれば駅周辺から学校まで自転車で通うという学生もいるが、雨だとバスを利用するし、交通事情もやや渋滞しがちだ。そんな事情が重なってバス停の前には2ブロック近くも列が続く。すでにキャンパスに通って6年目にもなるのに、僕も20〜30分ほど並んでやっとバスに乗ることになった。恥ずかしながら、経験が全く生きてないということになる。そして、その列に紛れ込むと当然授業には間に合わない。
学校にたどり着いたとしても、今度は教室で混乱が起きている。ショッピングウィーク中、学生は教室を転々としながら、授業資料をもらったり、先生が説明する授業の方針を聞いたりして、そのコマに何を履修するかを選ぶことになる。学生の出たり入ったりが続くために普段の授業よりは多少落ち着きのない様子になっているのだが、混乱の原因はそこではない。後輩の学生に話を聞くと「履修制限というものがかかり、学生が授業を自由に履修できないことが多くなってきた」というのだ。
僕が学部生だった2〜3年前より以前は履修制限などなく、自由に授業を履修することができていたが、最近では多くの授業に定員が設けられ、それを超える学生が集まった場合は紙に学籍番号と名前を書き、抽選が行われる。そして履修許可、つまり当選した学生のみが履修をすることができる。ある学生によると「同じ学期に5回連続で抽選に落選した」という人もおり、運が悪いとしか言えないが、運が悪いからその科目の単位が取れないというのもおかしな話だ。そしてデジタルキャンパスであるはずのSFCで、その抽選が紙ベースで行われているのもまたおかしな話だと思ってしまう。
SFCでは3〜4年ほど前からだろうか、併用期間を経て履修申告をウェブサイトから行うようになっている。ショッピングウィークを経過して後の履修登録期間にウェブサイトから履修登録を行うことが可能になっているため、学校にいなくても履修登録を行うことが可能だし、該当する時間のプルダウンメニューから選ぶだけで、履修申告用紙に登録番号を間違わずに転記するよりはるかに良い。さらに期間中なら登録した科目を変更することも簡単だ。ところがせっかくのウェブ履修登録システムも、学生から見た場合、履修制限と履修登録の仕組みが連携していないし、なぜ自分が抽選から外れたか、という理由も示されないため、学生の多くが不満を持っているようだ。
さてアメリカのUniversity of California, San Diego(UCSD)に留学している友人によると、同じようにウェブによる履修登録ができるようになっているが、もう少し納得のいくシステムが組まれているそうだ。UCSDでは授業開始以前から予めウェブで履修の登録ができ、その際に残席数(定員までの残り人数)が表示される。授業には定員が設けられているので早い者勝ちではあるが、登録開始から締め切りまである程度期間があるため、誰かがキャンセルして残席が増えた場合に登録したり、事前に担当の先生に交渉しに行ったりすることで、どうしても取りたい科目を履修することができるそうだ。
これに似ているシステムは、実はSFCでも体育の授業の予約で採用されている。SFCの体育の授業はテニス、ゴルフ、サッカー、バスケットボールなどのほとんどの球技や、水泳、気功、スポーツマッサージなどまで種目別に開講されていて定員が決まっている。学生は授業が行われる2週間前から当日の朝までにウェブ上で予約をする、という仕組みになっている。そのため予約ができるようなる直後の2週間前と、キャンセルの期限である授業前日や当日の朝早くに予約が取りやすく、学生はそこを狙ってシステムにアクセスしている。UCSDの授業履修でも、履修可能直後にアクセスが殺到し締め切りが近くなるとまたアクセスがのびる、というネット上での学生の動きがあるのだろう。UCSDの履修システムもSFCの体育予約システムも、早い者勝ちという点では同じことで「遅かったのだからしかたない」という諦め方になる。抽選という運任せよりは良いかもしれないが、要領が悪かったり都合で予約開始日に手続きできなかったりすると授業が取れないということになり、勉強したい意欲が反映された結果ではないかもしれない。
University of Michiganに留学していた別の友人によると、意欲が反映される履修システムがあるそうだ。University of Michiganでは、履修申告の時に各学生に1000ポイントが与えられ、その授業を取りたい意欲によってポイントを配分していく。例えば授業Aは絶対取りたいと思っていたら、授業Aに500ポイントを振り分けて、その次に取りたい授業Bには100ポイント、そのほかの授業には50ポイントずつを振り分けるといった重み付けをすることができるそうだ。学生が授業の椅子を入札で競り落とすような面白い仕組みになっているが、その学生のやる気が数字になって反映されるという点で好感が持てる。ただ抽選で落とされてしまうよりはオープンな仕組みではないだろうか。
ところで、僕は今学期も研究室の先生の授業でアシスタントを務めることになっているが、その授業でも教室があふれた。はじめは定員50人の教室が指定されていたが、定員380人の大教室に変更となった。それでも人があふれてしまい、結局抽選をやることになってしまった。そして400人まで絞られることになる。絞られたとしても400人だ。座学ではなく企画を考える授業科目だったので、どのように400人の学生に授業参加をしてもらうか、これから頭をひねることになる。
キャンパスがデジタル化したとはいえ、履修する際、履修した学生が授業に参加する際など、運用する側が既存の仕組みを持ち続けていると、デジタル化を最大限に生かすことはできないし、現状ではデジタル化したキャンパスに運用側がまだまだ追いついていないという印象がある。以前から紹介してきている通り、キャンパスの存在意義を再考してみたり、Blogを活用した遠隔授業の実験から教室の授業での意見収集に生かしてみたり、更に様々な試行錯誤が必要そうだ。
ではこのSFCというデジタルキャンパスが設計された段階では、どのような運用が見込まれ、予想され、また期待されていたのだろうか。次回からSFCのキャンパス環境が創られていった課程にフォーカスを当ててお伝えしようと思う。
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